ダンクもできる異色のPG佐々木隆成 大野HCの導きで脇役からB1三遠の「エース」へ

大島和人

キープレーヤーの自覚

川崎の強力なPG陣にも引けを取らないプレーを見せていた 【(C)B.LEAGUE】

 佐々木は守備力が高く、シューターとしても水準以上だ。だからロールプレーヤーとして生きる道もあり得るだろう。ただ大野HCはその彼に「主役」の可能性を見出した。強豪クラブのメインPGとしてプレーするなら、勝負どころの責任を負うリーダーの覚悟が大切になる。指揮官はそれを要求し続け、実際に引き出している。

 7日の川崎戦を見ると、佐々木が第4クォーターのクロージングを完全に担っていた。大野HCはこう語っていた。

「去年までの彼だとゲームの中盤まではボールを持つけど、エンド・オブ・ゲームの勝負がかかったときにボールから離してしまう傾向があった。そこは去年、本当にきつく彼にも伝えました。その自覚が本当に出てきてくれた。チームのキープレーヤーとしてしっかり認識して、プレーをしてくれていると思います」

「自分がやる」という気持ちに

 佐々木は大野HCとの出会いをこう説明する。

「気持ちの部分で、本当に意識を上げてくれたなと感じています。B2から去年来て『お前はやれるぞ』というようなことを、ずっと言葉でも伝えてくれていました。自分がやるという気持ちにさせてくれたところが、今考えると一番大きかったと思っています」

 能力が高いアスリートはともすると自信過剰な、自負の強すぎるタイプが多い。その場合は献身、謙虚さの重要性を伝えて、セルフィッシュな姿勢を抑える必要がある。ただ佐々木はそれと逆のタイプなのだろう。

 大野HCも千葉ジェッツ時代から試合後にあまり選手を褒めるタイプの指揮官ではないが、佐々木についてはこんなコメントを残してくれた。

「日本人のPGはタレント揃いなんですけど、ぜひメディアの皆さんにも佐々木隆成を取り上げていただけたらなと思っています」

 もっと注目されていい。何ならパリ五輪も目指してほしい――。佐々木はもう若手とは言えない年齢だが、特大の「可能性」を感じるPGだ。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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