昇降格と「Bプレミア」でより難しくなったB2 新シーズンの「台風の目」はどこになる?

大島和人

越谷にはLJピーク(左)と井上宗一郎が加わった 【(C)B.LEAGUE】

 今季のB2は3シーズンぶりにB1から2チームが『降りて』きた。Bリーグは2019-20シーズンから、コロナ禍の特例もあり昇格のみの運用だった。つまりB1からB2、B2からB3に降格するチームがなかった。しかし今季は滋賀レイクス、新潟アルビレックスBBがB1からB2に落ちている。

 新カテゴリー「Bプレミア」誕生も見越した、アリーナ建設や経営拡大といったオフコートの戦いもある。B2はまだ未来への展望をはっきり描けていないクラブが多い。そんな中で昇格、降格を巡る争いに向かうのだから大変だ。

越谷にB1優勝HC、日本代表が加わる

 越谷アルファーズは筆者の知る限り、Bプレミア仕様のアリーナを用意するメドがまだ立っていない。B1経験を持たない、発展途上のクラブでもある。ただ彼らが2023-24シーズンの台風の目で、B1昇格の有力候補なのは間違いない。昨季はクォーターファイナル第3戦で西宮ストークス(現神戸ストークス)に敗れ、B2昇格を逃した。しかし今季は戦力の大きな上積みに成功している。

 まず楽しみなのは安齋竜三ヘッドコーチ(HC)の就任だ。宇都宮ブレックスを2021−22シーズンのB1制覇に導いた直後に越谷へ移り、昨季はアドバイザーとしてチームに関わっていた。42歳とは思えない風格、包容力を兼ね備えた指揮官で、不思議な安心感を与えるキャラクターでもある。

 井上宗一郎の加入は大きなサプライズだった。先日のFIBAバスケットボールワールドカップ2023(W杯)に出場した24歳。201センチ・105キロのパワーフォワード(PF)で、3ポイントシュートを強みにしている。W杯本番こそプレータイムをほとんど得られなかったが、アジア予選では主力の働きを見せていた。

 安齋HCは井上の加入についてこう説明する。

「日本人のビックマンは何年か前だとかなり重宝されていたのですが、今は帰化選手やアジア枠の選手が入ってくる中で、なかなかプレータイムを得られていません。そこは本人も気にしていた部分だと思います。日本代表でかなりいいパフォーマンスをしているにもかかわらず、リーグ戦はなかなか力を発揮できていない状況を一緒に打開したい――。そういう思いがあって、声を掛けさせていただきました」

 Bリーグは外国籍選手を1試合に3名登録できて、2名が同時にコートへ立てる。さらに帰化選手、もしくはアジア枠の選手をそれと別枠で登録・起用できる。外国出身選手はセンター(C)、パワーフォワード(PF)といったインサイドに集中していて、日本人選手は代表レベルでもなかなかコートに立てない現実がある。

 とはいえ、外国籍とのポジション争いは越谷も同じだ。井上自身は加入の理由をこう語っていた。

「僕のポジションは外国籍とのマッチアップが多いですけど、B2の外国籍選手が劣っているわけではないし、自分も出場機会が約束されているわけではないと思っています。他にB1からのオファーもありました。ただその中でもアルファーズは『B1に昇格する』という明確な目標があるので惹かれました」

外国籍選手も強力

 インサイドは昨季の主力2選手が残留している。アイザック・バッツはB2のリバウンド王を2度獲得した208センチ・134キロのビッグセンターで、今季が来日10シーズン目となる34歳だ。機動力や3ポイントシュートには期待できないが、ゴール下の支配力はB2最高レベルだ。

 ジャスティン・ハーパーはNBA経験も持つ34歳で、「ストレッチ4」タイプ。昨季はチーム最多の1試合平均17.3得点を記録しているPFだ。インサイドについてはバッツ、ハーパー、井上の3選手がローテーションで起用されることになるだろう。

 越谷は井上の加入により、外国籍の1枠をウイングに割けるようになった。そんな補強がLJ・ピークだ。196センチ・97キロのスモールフォワード(SF)で、27歳とまだ若く、パワーとキレを兼ね備えたドライブはB1でもなかなか見ないレベルだ。2020-21シーズンは宇都宮で活躍し、2021-22シーズンは熊本ヴォルターズでB2得点王に輝いている。ただし昨季はB1からB3まで計3クラブを渡り歩く、やや不安定な1年を過ごした。宇都宮時代に比べると明らかにオーバーウエイトで、プレーも強引になっている様子だった。

 ただ安齋HCは宇都宮時代にピークをしっかり「操縦」していた指揮官だ。

「LJは一緒にやらせてもらいましたし、人間性も分かっています。プラス井上選手には責任を持ってポジションを全うしてもらおうという意思表示もあって、LJに入団してもらいました」(安齋HC)

笹倉怜寿は越谷の正PG候補だ 【(C)B.LEAGUE】

 他にも笹倉怜寿、喜多川修平が新たに越谷へ加わっている。笹倉は26歳で、187センチの長身ポイントガード(PG)だ。過去2季こそA東京でなかなか出番を得られなかったが、2021−22シーズンは主力として仙台89ERS(当時B2)の主力として活躍を見せている。相手の大型選手につける、リバウンドに絡めるという部分も頼もしい。シュート力の高い松山駿と笹倉の2ガード起用もあり得る。

 喜多川はアイシン(現シーホース三河)、琉球ゴールデンキングス、宇都宮ブレックスと強豪を渡り歩いてきた38歳のベテランシューター。ハーパー、井上とともに「守備を広げる」「LJピークのインサイドアタックを引き出す」貢献に期待できそうだ。越谷はPGの二ノ宮康平(35歳)、SF菊地祥平(39歳)と「若手のお手本になるベテラン」を既に擁していたが、そこに人望の厚い喜多川も加わった。高齢化は気になるものの井上と笹倉の加入で若手が確保され、チームとして組み合わせやすそうな、バランスのいい補強が実現している。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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