昇降格と「Bプレミア」でより難しくなったB2 新シーズンの「台風の目」はどこになる?

大島和人

滋賀は「B1級」の戦力を維持

川真田絋也(左)はW杯でブレイクを果たした 【(C)B.LEAGUE】

 滋賀はクラブ創設史上初の2部を経験することになった。テーブス海、狩野祐介、杉浦佑成がB1クラブに移籍し、外国籍選手も入れ替えがある。一方で短期間で急速な成長を遂げ、W杯では日本代表として活躍したセンター川真田絋也が残留を選択した。フィリピンの国民的英雄でW杯にも出場したPGキーファー・ラベナもロースターに残っている。B2ながら直近のW杯に出場した代表選手を二人擁することになった。

 加えて高卒2年目で194センチの大型PG湧川颯斗も、日本の未来を担う逸材だ。テーブスが抜けたとはいえラベナ、湧川、野本大智、柏倉哲平と揃う滋賀のガード陣はB2最高レベルだ。さらに新加入のビッグマン3人も“超B2級”の顔ぶれ。ブロック・モータムはB1レバンガ北海道からの移籍で、2014年のW杯、16年のリオデジャネイロ五輪にオーストラリア代表として出場している32歳。208センチのPFで、昨季の3ポイントシュート成功率は42.3%を記録している。ストレッチ4としてはB2最高レベルの実力者だろう。

 ジャスティン・バーレルは日本で通算11シーズンのキャリアを持つ大ベテラン。3ポイントシュートとは無縁だが「純インサイド」としてゴール下を安心して任される選手だ。ライアン・クリーナーは愛媛からの移籍で、昨季は60試合すべてに先発し、得点・リバウンドのいずれも高レベルのスタッツを残している。昨シーズンの途中から指揮を取るダビー・ゴメスHCがこの人材をどう生かし、チームをどう熟成させるかにB1復帰は懸かっている。

A千葉は強力補強で有力昇格候補に

 新潟もB1からの降格チームだが、滋賀に比べると主力の離脱が多い。外国籍選手が全て入れ替わり、PG澁田怜音、SG杉本天昇といった主力級日本人もB1クラブへ移籍している。新潟県出身者を揃えたロースターは興味深く、カイル・ハント、帰化選手のファイパブ月瑠など実績のあるインサイドもいるが、昇格の有力候補とは言い難い陣容だ。

 アルティーリ千葉はB2昇格2シーズン目の新興クラブだが、こちらは間違いなく有力な昇格候補だ。昨季はセミファイナル(準決勝)で長崎ヴェルカに敗れてあと一歩届かなかったが、「昇格寸前」に到達していた。ブランドン・アシュリー、レオ・ライオンズ、杉本慶、大塚裕土、木田貴明といった既存の主力を残しつつ、信州から前田怜緒、川崎から熊谷尚也とB1レベルの大型ウイングを獲得している。ベースを維持しつつ、着実に上積みをしている。

神戸、熊本は悲願を果たせるか?

神戸は2017-18シーズン以来のB1復帰を目指す 【(C)B.LEAGUE】

 B1昇格への「思い」が強いクラブは神戸ストークスと熊本ヴォルターズだろう。神戸は2016-17シーズンのB2プレーオフを勝ち上がり、B1を1シーズン経験しているが、2018-19以降はB2に沈んでいる。2024-25シーズン終盤に三宮の新アリーナが完成する予定で、新シーズンは何としてもB1で迎えたいはずだ。

 昨季のストークスをB2の3位に導いた森山知広HCが残留し、日本人選手の主力もほぼ全員が契約を更新。B2ブロック王のトレイ・ポーターも残留し、さらに東山高時代にウインターカップで大活躍を見せたカロンジ磯山パトリックが帰化選手として新たに加わっている。松崎賢人、道原紀晃、谷直樹の「兵庫トリオ」はクラブ創設当時からの主力だが、もう35歳。「彼らとともにB1へ」というファンの思いもあるはず。

 熊本もあまり大きな入れ替えがなく、遠山向人HCが引き続いて指揮を取る。ただし昨季はエースのテレンス・ウッドベリーが左膝の負傷で長期間の欠場。今季もプレシーズンに磯野寛晃が負傷している。これまでのシーズンは選手のコンディションが昇格の障害になっていて、ケガなくリーグ戦に臨めれば「ひとつ上」の結果を見込める。山本翔太、本村亮輔、駒沢颯と楽しみな若手が揃っているだけに、一足先に昇格した九州の佐賀バルーナーズ、長崎ヴェルカに続きたい。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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