もうひとつのプロ野球日本一決定戦!「日本独立リーググランドチャンピオンシップ2023」の戦いが熱い!

金沢慧

昨年の大会では馬原孝浩監督率いる火の国サラマンダーズが初優勝を果たした 【写真は共同】

9月29日〜10月1日の3日間に独立リーグ日本一を決める戦いが行われる

 野球が市民に広く親しまれ、「球都」のひとつに数えられる愛媛県松山市。今年はこの地で独立リーグの日本一決定戦「日本独立リーググランドチャンピオンシップ(GCS)2023」が行われる。試合会場は「坊っちゃんスタジアム」。松山市を舞台とした夏目漱石の小説にちなんで名付けられた球場だ。球場周辺には夏目漱石の親友で野球に情熱を注いだ松山市出身の俳人・正岡子規の句碑や野球歴史資料館があり、日本で野球が普及する黎明期からの熱気を感じられる場所となっている。

 9月30日と10月1日の試合終了後には審判・記録講習会を実施予定。また、10月1日には地元の済美高校出身で、ルートインBCリーグ(BCL)の栃木ゴールデンブレーブスにも在籍するティモンディの高岸宏行氏が来場しトークショーと始球式を行う企画や、愛媛マンダリンパイレーツの選手と一緒に試合観戦&松山市内を散策するイベントもあり、松山の野球文化を全国に発信する良い機会になりそうだ。

 GCSで火花を散らすのは日本独立リーグ野球機構(IPBL)所属の5リーグの優勝チームと開催地・愛媛の合計6チーム。いずれも各地域を拠点として、地元のファンや企業に強く支えられている球団だ。昨年の大会では馬原孝浩監督が率いる熊本の火の国サラマンダーズが初優勝を果たしたが、今年はどこが頂点をつかむか。熱い戦いがまもなく開幕する。

全5試合のトーナメント制で頂点を決める

【筆者作成】

 試合の組み合わせは上の図の通りだ。

 ヤマエグループ九州アジアリーグ(KAL)を制しGCS連覇を狙う火の国と、BCLを初制覇した埼玉武蔵ヒートベアーズは準決勝からの参戦となる。

 9月29日の準々決勝では開催県枠の愛媛が北海道フロンティアリーグ(HFL)を初制覇した石狩レッドフェニックスと、四国アイランドリーグplus(IBLJ)で年間総合優勝を果たした徳島インディゴソックスが日本海リーグ(NLB)優勝の富山GRNサンダーバーズと対戦する。

 前回、前々回のコラムでは独立リーグのドラフト候補を投手、野手に分けて書いたが、今大会にも出場する選手は多く、ぜひ彼らの現在地をチェックしてほしい。今回はGCSの見どころとして、これまでのコラムでピックアップしきれなかった選手や、チームの特徴を中心に紹介する。

火の国と埼玉は元NPBプレーヤーも中心選手として活躍!

公式記録等から筆者作成 【画像作成:金沢慧】

 連覇を狙う火の国と初の日本一を目指す埼玉は元NPBの選手も複数在籍しており注目だ。

 火の国で4番打者を任されているのは元ヤクルトの中山翔太。パワーのある打撃は健在で、シーズン72試合に出場しリーグ3位タイの6本塁打をマークした。元広島の山口翔もリリーフで33試合に登板。GCSでも試合中盤以降の重要な場面でチームを勝利に導く投球が期待される。また、NPB所属歴はないが、今季4本塁打24盗塁のアルバレスや同じく4本塁打のサンチェスという米マイナーリーグでの実績がある外国人選手も所属しており、攻撃力はIPBLで屈指だろう。

 投手陣もリーグ2位の141イニングを投げた宮澤怜士ら昨年のGCSを経験したプレーヤーが残っており、連覇に向けて戦力が充実している。

今季限りでの引退を発表した清田育宏の勇姿が見られるはず

 今季での引退を発表している埼玉の清田は信濃グランセローズとのBCLチャンピオンシップ初戦で8回に同点の本塁打を放つなどGCS出場の原動力となっていた。この試合は延長時のタイブレーク制度がある中で延長15回、6時間25分におよぶ激闘となるなど、埼玉はプレーオフで劇的な試合が多く、その勢いをGCSでも持続したいところだ。

 埼玉投手陣の大黒柱はリーグ最多奪三振の小野寺賢人だが、26日に1イニングを投げ胴上げ投手となったあとにBCL選抜として筑後でのソフトバンク4軍戦に帯同しており、BCLスタッフのX(旧Twitter)によれば28日に登板予定とのこと。チームを率いる西崎幸広監督は、先発を右腕の長尾光、長坂拓夢、左腕の武内風希らに託し、小野寺をリリーフで待機させるという策をとるかもしれない。

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著者プロフィール

1984年生まれ、福島県出身。学習院大学在学中の2005年夏の甲子園で阪神園芸での整備員アルバイトを経験するなど、基本的には高校野球マニア。 筑波大学大学院体育研究科を修了後、2009年にデータスタジアム株式会社に入社し野球のアナリストとして活動を始めた。NHK-BSで放送されている「球辞苑」には2015年から出演している。2018年からは本所属を株式会社リクルートテクノロジーズ(現・株式会社リクルート)のデータ利活用の部署に移し、主にHRメディアでのデータ分析環境の整備や機械学習を用いたアプリケーション開発のPMOとして従事した。 2022年10月に独立し、現在は四国アイランドリーグplusのアナリティクスディレクターなどプロスポーツリーグ等でのHR領域のデータ活用推進を行っている。また、スポーツアナリティクスジャパン(SAJ)2022ではプロジェクトマネージャーを担うなど、スポーツをきっかけとした文化交流のカンファレンスやイベントの企画、運営にも携わっている。

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