もうひとつのプロ野球日本一決定戦!「日本独立リーググランドチャンピオンシップ2023」の戦いが熱い!

金沢慧

開幕試合は地元・愛媛に初出場の石狩が挑む

 29日の開幕戦で地元・愛媛と対戦するのは初出場の石狩だ。

 石狩は昨年もHFLでレギュラーシーズンは1位だったが、シーズン2位だった士別サムライブレイズとのプレーオフで最終戦までもつれて敗退。今季は悲願の優勝を果たしている。

 チームの軸は川上智也で、IPBLでも数少ない本格的な投打の二刀流だ。投げては12試合に登板し防御率3.90の成績、打っては打率.412を残している。リーグに4割打者が複数出るなどHFLは投手のレベルが他リーグに比べて劣るが、その中では川上は球速があり、愛媛戦での好投を期待したい。

【筆者作成】

 石狩を率いるのは日本ハムなど活躍した坪井智哉監督だ。上の表のように今回のGCS出場チームの監督はすべて元NPBの選手で、往年の野球ファンにとって懐かしい顔ぶれとなっている。

 IPBLの各リーグには茨城アストロプラネッツの伊藤悠一監督、香川オリーブガイナーズの近藤智勝監督のように他業種から転身した人材や元独立リーガーなどNPB経験者以外の監督もいるが、HFLでは石狩の他にも士別が中村勝監督、美唄ブラックダイヤモンズは金子洋平監督と日本ハムOBの名前が並ぶ。先程紹介した川上を含め、HFL各球団のスタッフや監督からそれぞれ一押し選手のプレー動画とコメントがあるので、下記のリンクで確認してほしい。

愛媛は地元で「若さ」を力にできるか

 開幕戦で地元に石狩を迎える愛媛は最速150キロ超をマークした投手が4人おり、先発もチーム唯一の100イニング以上を投げた左腕の田島和礼、常時140キロ台の速球を投げる右腕の玉置隼翔、山田空暉、ピダーソン和紀と豊富だ。ただ、ほぼ全ての選手が25歳以下と若いチームで、能力の割には大きく崩れる場面も見られる。優勝のためには3日間で3連勝が必要だが、次の試合を意識しすぎると足元を救われる可能性がある。

 石狩を破った場合の準決勝の相手となる火の国は、逆にスタメンの半数以上が25歳以上と経験豊富なチーム。愛媛は目の前の戦いにどれだけ集中できるかがポイントとなるだろう。

富山はダークホース。少ない得点を投手陣が守りきりたい。

 NLBを制した富山は好投手が多く、今大会のダークホースとなる存在だ。徳島戦の先発は速球とスライダーを低めに集めてゴロを打たせる林悠太が予想される。遊撃手の今釘勝と二塁手の松重恒輝の守備も安定しており、チームのディフェンス力は高い。林の後は最速157キロの大谷輝龍を筆頭に、元ヤクルトの山川晃司ら150キロ超を投げる投手が複数控えている。

NLBは石川と富山の2チームで3つの期間に区切り試合をしていたが、8月22日からの期間(ターム3)は富山が石川に対して10戦10勝で終えている。9月19日の西武3軍との試合でも8人の継投により1-0で勝利するなど、ここ1ヶ月以上負け知らずの状態だ。

 写真のようにリーグ優勝後には紙テープが舞うなど熱心なファンに支えられているチームで、今回のGCSで勝ち進み、地元・富山に大きな存在感を示してほしい。

最優秀防御率を分け合った藤田淳平、池戸昇太の活躍が見られるか

「トリドール杯 チャンピオンシップ」でIBLJ年間総合優勝を決めた徳島 【9月22日にIBLJ事務局が撮影】

 150キロを超えるドラフト候補を数多く揃える徳島だが、今年のIBLJ年間総合優勝の原動力となったのは最優秀防御率のタイトルを分け合った藤田淳平、池戸昇太の両左腕だろう。2人とも150キロに届く速球はないが、ストレートの奪空振り率が高く球質が良い。白川恵翔を含めた3投手をどのように先発で起用するか注目だ。

 また、準々決勝では富山の髙野光海と徳島投手陣の対戦も見もの。髙野は徳島の池田高校出身の1年目で、甘い球をスタンドへ軽々と運ぶ力がある。地元のチームと四国の地で対戦し、ドラフト候補から一発を打てば注目度が一気に上がるだろう。

スポナビでGCS全試合を無料中継!

 以上、今週末に行われるGCSの見どころを紹介した。ぜひ松山に足を運んでほしいが、今大会はスポナビでも試合中継を行う予定なのでどこでも試合を見ることができる。自分も現地で試合中継のサポートをするので、坊っちゃんスタジアムまで来られない方でもスポナビで観戦し、どのようなチームが日本全国にあるのかを知っていただきたい。

なお、中継では各試合で両チームをよく知るゲスト解説を迎える予定で、メンバーは下記の通りだ。

【中継配信ゲスト解説メンバー】
■準々決勝1
愛媛:河原純一氏(前監督)vs.石狩:中村勝氏(士別監督)
■準々決勝2
徳島:野副星児氏(IBLJ事務局長)vs.富山:多賀亘氏(富山球団職員)
■準決勝1
火の国:岡本恵一氏(リーグ審判部長)vs.未定
■準決勝2
埼玉:角晃多氏(球団社長・前監督)vs.未定

 独立リーグには競技を楽しむ場としてだけでなく、スポーツの持つ様々な地域、文化をつなぐ場としてのパワーがある。今回のGCSをきっかけに独立リーグに興味を持ってもらえることが、個人的にも一番嬉しいことだ。

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著者プロフィール

1984年生まれ、福島県出身。学習院大学在学中の2005年夏の甲子園で阪神園芸での整備員アルバイトを経験するなど、基本的には高校野球マニア。 筑波大学大学院体育研究科を修了後、2009年にデータスタジアム株式会社に入社し野球のアナリストとして活動を始めた。NHK-BSで放送されている「球辞苑」には2015年から出演している。2018年からは本所属を株式会社リクルートテクノロジーズ(現・株式会社リクルート)のデータ利活用の部署に移し、主にHRメディアでのデータ分析環境の整備や機械学習を用いたアプリケーション開発のPMOとして従事した。 2022年10月に独立し、現在は四国アイランドリーグplusのアナリティクスディレクターなどプロスポーツリーグ等でのHR領域のデータ活用推進を行っている。また、スポーツアナリティクスジャパン(SAJ)2022ではプロジェクトマネージャーを担うなど、スポーツをきっかけとした文化交流のカンファレンスやイベントの企画、運営にも携わっている。

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