19日開幕、アジア大会に挑む日本B代表 主将・柳田将洋が語るチームと自身の現在地

田中夕子

感じる日本代表の「すごくいい流れ」

柳田にとっては9年ぶりのアジア大会となる(写真は2014年の仁川大会) 【写真:アフロスポーツ】

――今の柳田選手にとって、このアジア大会はどんな位置づけですか?

 1つは前回、14年に同じアジア大会へ出た時の自分と照らし合わせる、というのは今じゃないと得られないことだと思います。もちろん経験はだいぶ違いますが、それでも同じ大会に出て何が変わったかというのは比較しやすい。日常生活、1つ1つの行動もそうですし、プレーの面でも今の自分だったら何ができるか。もっとこんな行動もできる、と発見につながるいい機会だと思っています。そしてもう1つは、やはり日の丸を背負って戦うことです。日の丸を背負って戦う以上は、その大会に向けて照準を合わせるのは当然なので、結果を出したいです。

――ご自身のコンディション、パフォーマンス面で現状をどのように評価していますか?

 ベースはできている感覚がありつつも、クラブシーズンが終わってから日本代表で活動する、このサイクルが久しぶりなので、思ったより上がってきていないと感じることもあります。でも、これまでの経験と照らし合わせれば、例えば去年の今頃と重ねてもまだまだここから上がっていく、という具体的なイメージがあるので、焦りはないですね。むしろ意外と身体が弱いので(笑)、まずは体調を崩さず、アジア大会に臨む、というのが最初のゴールでもあります。

 理想は、バレーボールのボール練習と、リフティングで筋肉に刺激を入れる。両方を交互にやりながらコンディションを上げていきたいのですが、海外遠征の場所によってはリフティングの施設が万全ではないこともあるので現実的にできることをやるしかない。そこでいかに落とさず維持するか、というのが一番の課題であり難題ですね。今の状態が1だとしたら、いかに0.9にせず、1.1にできるか。そこをいきなり1.5まで上げようとすると体調を崩しがちなので、無理なものは無理だと主張しながら、僕だけでなく選手全員、各々が大会にフォーカスしてコンディションを上げていくのが必要だと感じています。学生もいるのでテスト明けだったり、見ていると大変だな、と思いますから。

――ここまで行くと無理、でもここまではやらないと、という匙加減がわかるのも、これ以上は危険と感じられるのもキャリアを重ねた人の強みでもあります

 そのコントロールをしないと壊れちゃいますからね。僕の場合は本当に顕著なので、扁桃腺とか、危ないと感じたらすぐに休みます。いい意味で7~8割をキープして、重ねていく中でその量を前回の7~8割よりもちょっと広げて、同じ7~8割でもその幅は少しずつ広げていくというのが一番自分には合っているのかな、と。僕、今まではケガをしない、体調を崩さないタイプだと思っていたんですけど、意外とそうではないみたいで、今までこれだけタフにやれていたのが奇跡だと、周りの人からも言われるようになりました(笑)。

――ご自身のコンディションを整えつつ、チームも固めていく。なおかつ状態も上げていく。アジア大会まで限られた中ではありますが、手ごたえを感じる部分はありますか?

 メンバーが入れ替わるのが大変だと最初に言いましたが、でも裏を返せば今まではガチッと固まっていたのが、選手を入れ替えても活躍できるというのは、それだけ日本男子バレーの層が厚くなっているということですよね。特にアウトサイドヒッターは層が厚くなっていると思います。正直なところ、自分がA代表でやっていた頃、B代表から来た選手が合流しても「準備していないじゃん」と思うこともあったんです。でも今はパッと行っても高いパフォーマンスを発揮する。すごいですよね。意識なのか、環境なのか、はたまたレベルそのものが上がっているのかはわからないですけど、それができている結果だけを見れば、日本も海外の強豪国と同じように層が厚くなってきているということでもある。

 例えばですけど、今年はアジア大会があるからB代表があるけれど、来年も同じようにA代表だけでなくB代表、C代表、わからないですけど、日本代表としてカテゴライズされていけば、選手の準備や意識の質も変わる。そこはJVAとVリーグが一体になってできるといいな、と思いますし、何より今は多くの選手が日本代表の戦いぶりや取り組みを見ています。大会に出場する14人、登録されている30数名だけでなく、今はまだ登録されていない若い選手でも(髙橋)藍の活躍や、麻野が呼ばれる姿を見て「自分も代表に行けるかもしれない」「自分も代表へ行ったらこんなことがしたい」と描いているはずですよね。それは間違いなく前とは違う。みんながみんな、他人事ではなく自分事として日本代表を見ていると思うし、すごくいい流れだと僕は感じますね。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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