球団担当者が語る限定ユニフォーム制作の裏側 西武初のストライプ柄はどのように決まったのか?

三和直樹

今年の「ライオンズフェスティバルズ」は青にストライプを用いた『蒼空ユニフォーム』が着用される 【(C)SEIBU Lions】

 日本プロ野球において、「限定ユニフォーム」のイベントはすっかり夏の風物詩となっている。その中で、埼玉西武ライオンズでは2016年から、コロナ禍で中止となった2020年を除いて『ライオンズフェスティバルズ』を開催。毎夏、約1カ月という長期間に渡って本拠地球場では様々なイベントが催され、選手たちは「限定ユニフォーム」に身を包んで戦いに挑んでいる。

 他球団に比べても夏イベントの規模が大きい西武だが、今年はすでにデザインが発表されている『蒼空ユニフォーム』が、例年以上にファンから大きな反響を呼んでいる。イベント開幕が待ちきれない中、西武球団の後藤広樹事業部部長に、限定ユニフォーム制作の“裏側”を聞いた。

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「夏」開催に込められた思い

――後藤さんは球団の事業部部長とのことですが、普段はどのような仕事、役割を担っているのでしょうか?

 広くは球団のイベントやグッズをみているのですが、その中の一つとして「チームユニフォーム」を担当しています。私が入社したのは2016年で、その翌年からユニフォーム担当を続けています。イベント全体という部分では『ライオンズフェスティバルズ』が始まった最初の時から携わっています。

――そもそも『ライオンズフェスティバルズ』はどのような経緯で開催されるようになったのでしょうか?

 最初は、夏の期間というものに焦点を当てて、球場だけでなくて地元の商店街や自治体、西武鉄道沿線と、地域を巻き込んだ球団と地域が一体となったイベントを作りたいというところから始まりました。従来のライオンズファンだけではなくて、これまで球場に来たことがない方も楽しめるようなボールパークを作りたいということが大きな目的です。

――そういう意図があるからこそ、時期としては「夏」がいい、と?

 そうですね。「ファミリー層の方に来てもらいたい。そう考えると、時期としてはやっぱり夏休み。夏休みに家族で出かける行楽先の一つに、ベルーナドームを選んでもらいたい」そう願っての「夏」ですね。

――(今年の)イベント自体は8月1日から始まりますが、どのぐらい前から準備を進めるのでしょうか?

 今はもう夏の定番イベントになっているので、その夏が終わったらすぐに検証を行って、次年度の設計に入っています。すぐに細かいところまでは詰められないので、まずは次の年のテーマを決めるところからですね。そういう流れが定着しています。ですが、最初は苦労しました。約1カ月に渡って行うイベントになるのですが、それだけの長期間、規模感というのが、球団としてはおそらく初めてに近かったです。グッズにしろ、飲食にしろ、いろいろと試行錯誤しながらでしたから大変でしたね。

――テーマも毎年、ユニークなものになっていますが、どのようにして決めるのでしょうか?

 その年の結果を受けて、「次はどうしようか」とテーマを決めていく形です。最初の3年間は「球団歌『地平を駈ける獅子を見た』の歌詞にある色をベースにする」ということが決まっていましたが、あとはその年ごとに違います。例えば2019年の時は、うちの前身の西鉄クリッパーズが誕生してから球団創設70周年という節目の年だったので、そこをメインに球団の象徴であるライオンをテーマにしようとイベント全体のコンセプトを決めました。そこから今度はユニフォームのデザインに入って行く形です。

初年度となった2016年は球場の周りの自然を表現した「エメラルドユニフォーム」を着用 【(C)SEIBU Lions】

2017年は歌詞にある「炎の色の獅子を見た」をイメージした「炎獅子(えんじし)ユニフォーム」を着用 【(C)SEIBU Lions】

2018年は三部作の集大成として「空青く、風白く」から青を基調とした「獅子風流(ししぶる)ユニフォーム」を着用 【(C)SEIBU Lions】

デザイン決定までの流れ、選手からの意見は?

2019年のユニフォームは新元号になったことを受けて「令王(レオ)ユニフォーム」と命名された 【(C)SEIBU Lions】

――毎年、いろいろなカラー、デザインの夏限定ユニフォームが発表されていますが、どのように決めているでしょうか?

 最初にイベント全体のテーマを決めて、そこからユニフォームデザインに着手します。『ライオンズフェスティバルズ』全体のコンセプトを、どのような形でユニフォームに落とし込んで行くのか。そこはデザイン担当会社と連携、協力して進めています。

――すんなり決まるものでもないと思いますが、デザイン決定までの流れは?

 毎年、かなり多くのデザイン案を出してもらって、そこから絞り込んで、ブラッシュアップして行くという流れです。その中で社内確認も入るのですが、うちは選手たちがユニフォームのデザイン性に対して高い意識を持っているので、ある程度、デザインが絞り込まれた段階でチームにも確認してもらっています。具体的には、監督と選手会を代表して5人とか。そこで新たに意見を聞いて、最終的に仕上げて行っています。

――ユニフォームのネーミングも決めています。

 はい。それはデザインが決まった後ですね。2019年だと、その年がちょうどど平成から令和になった年だったので、新しい令和の時代でも王者になれるようにという願いを込めて、令和の「令」と王者の「王」を掛け合わせた「令王(レオ)ユニフォーム」という名前になりました。

――今まで選手たちの意見でデザインが変わったことはあったのでしょうか?

 それは結構、ありましたね。最近だと2022年の「ワイルドワイルドユニフォーム」ですね。それまではユニフォームの上とキャップは新しく作っても、下のパンツは同じものを使っていたんですけど、選手会との打ち合わせの中で「全身を格好よく見せたいからパンツのデザインも変えてもらいたい」という意見があって、そこから全身をコーディネートすることになりました。

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著者プロフィール

1979年1月1日生まれ。大阪府出身。学生時代からサッカー&近鉄ファン一筋。大学卒業後、スポーツ紙記者として、野球、サッカーを中心に、ラグビー、マラソンなど様々な競技を取材。野球専門誌『Baseball Times』の編集兼ライターを経て、現在はフリーランスとして、プロ野球、高校野球、サッカーなど幅広く執筆している。

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