J2最下位の大宮、繰り返す監督交代の先に未来はあるか?

平野貴也

3年連続でシーズン途中の監督交代に踏み切った大宮。原崎監督(右)はチームをJ3降格の危機から救えるか(左は原フットボール本部長) 【平野貴也】

 大宮アルディージャが、また監督を交代した。昨季、2年連続のJ2残留争いをしのいだチームは、今季序盤こそ4勝4敗。ホーム全勝とまずまずの勝点を稼いでいた。しかし、その後は6連敗と大きく崩れた。引き分けで連敗を止めたが、J2第16節は、J3から昇格したいわきとの下位直接対決に敗れて最下位へ転落。2日後の5月19日、相馬直樹監督の退任と、原崎政人ヘッドコーチの新監督就任が発表された。

 監督交代は、カンフル剤としての効果を期待されるが、冷ややかな視線も向けられている。シーズンの折り返しも迎えていない5月の段階での監督交代を、このクラブは3年連続で行っている。21年は16位、昨季は19位と成績は下降。急場しのぎで根本的な解決には至らないとも見られる状況だからだ。

 監督交代の繰り返しは、体制の不安定さを印象付ける。今後の戦力調整などを考えても、大きなマイナスだ。24日にクラブハウスで行われた新監督就任会見に同席した原博実フットボール本部長は「(シーズン中の監督交代は)決して良いことではないし、できればしたくないのが当然ですけど(交代の)決断をしたからには(今後は)そうならないようにしていくべき。相馬監督にも4勝7敗になった後、僕なりの意見はかなり言いました。でも改善しなかった。そこからまた3連敗。今回は原崎監督に代えて、どうやって選手に自信を持たせるかをやってもらいたい」と前体制継続の断念に至った経緯を話した。

不明瞭な目標の中、苦渋の決断を下す基準や目的は?

 苦渋の決断であることはうかがえたが、クラブは今季開幕時に明確な順位や勝点の目標値を示していない。しかし、会見と同日に佐野秀彦社長の名義で発表されたクラブの声明文では「一つひとつ勝利を積み上げ降格圏脱出、そしてプレーオフを目指し必ず這い上がります」と、開幕時には表明していなかったプレーオフ進出(3~6位)への意欲が記されていた。スポンサーやファンへの配慮から前向きな目標を伝えたい、あるいは監督交代を起爆剤に反転攻勢へ出たい気持ちなのかもしれないが、6位との勝点差が2倍近く(6位の磐田が27、22位の大宮は14)に開き、本来なら目標を下方修正すべきタイミングで違和感は拭えない。

 今季最初にJ2残留を目標として打ち出していれば、会見時点での成績(4勝2分11敗)でも、残留ラインの20位との勝点差は1。監督交代の効果に頼らず、昨季途中からの積み上げを続けられる。プレーオフ進出(3~6位)やJ1昇格(2位以上)の可能性が見えたら目標を上方修正する形の方が良かったのではないだろうか。

繰り返すシーズン中の監督交代、継続性欠如のデメリット

 クラブを長く見ている人ほど、監督交代に「またか」の思いは、強い。過去にも、我慢しきれずに踏み切った監督交代劇が多い。初めてJ1で優勝争いをした2013年、5連敗を喫したベルデニック監督を4位の時点で解任し、その後の体制で3勝11敗と急失速して14位に終わったのは象徴的だ。17年にはJ1で最下位に沈む中、渋谷洋樹監督を解任。伊藤彰ヘッドコーチを昇格させたが、まだ残留の可能性がある残り3試合の段階で解任。石井正忠監督を招へいしたが、J2へ降格した。そして、直近3年連続の5月交代……。その時々でクラブ内に抱えていた問題の解決を図った監督交代ではあるが、その度に目指すサッカースタイルが変わるなど継続性を失うデメリットも生じている。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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