世界でも活躍する主将クレクや若手選手が躍動 Vリーグ制覇のWD名古屋に根付く文化

田中夕子

「クレク主将」がチーム全体に及ぼした影響

世界でも活躍する主将クレクの存在は非常に大きかった 【©V.LEAGUE 】

 加えて、昨季からはクレクが主将を務めたこともチームにとって新たな変化と刺激を加えた。

 ポーランド代表の大エースで、世界にその名を轟かすスーパースターであり、得点能力は申し分ない。それだけでなく、日頃から選手たちと接する姿勢は明るく、見せるプレーは献身的でありながらも、練習も試合も同じく高い意識を持って臨み、常に周囲を鼓舞する。

 世界最高峰で戦うプロとして、勝つために何をしなければならないか。どんな姿勢を持たなければならないか自ら体現してきた。だからこそチームメイトへの要求も高く、その姿勢にいつも驚かされ、刺激を受けた、と言うのは山崎だ。

「チャンスサーブなのにAパスで返さなかったりすると『カモーン!』と、もっと行けるだろ、という意味でプッシュされるので練習中から気が抜けない。自分でもわかっているので、もっとちゃんと返さないと、と気が引き締まります。僕のバレーボール人生ではそんな風にプッシュすること自体やってこなかったし、できなかったことなので純粋に尊敬しているし、バルトシュさんと関わって、バレーボールが前よりも好きになりました」

 とはいえ見上げるばかりでなく、世界のスーパースターと言えども、言われっぱなしではなく言うべきことは言い返す。強いチームにあるべきコミュニケーションが取れていることも大きい、と明かすのはリベロの小川だ。

「たとえば(ファイナル4の)サントリー戦ではバルトシュのディフェンスの位置取りが近くてやりづらかったので、もっと外に行って、と言ったら言い返してきたので、決勝では同じことを繰り返さないようにちゃんと話し合って位置取りも完全に決めていました。ただすごいと思うだけじゃなく、話せる存在でありたいし、腹立つこともあるので受け身になるばっかりではなくて自分の意見も言う。いい関係性がつくれていたと思います」

 昨季と今季、1年で監督が替わったことに戸惑うこともあったが、その時もクレクの助言が支えになった。小川はそうも言う。

「『監督がバレーをするわけじゃなく、やるのは選手だ』と。監督が替われば戦術が変わって新しいアイデアがもらえる。そこに順応できない、遂行できないのは選手のせいだから、シンプルに考えれば監督が替わっても、替わらなくてもやることは同じ。難しいことじゃないですよね」

「この難しいリーグで優勝できたことを誇りに思う」

リーグMVPに輝いたクレク。チームメイトからの胴上げに満面の笑み 【©V.LEAGUE 】

 勝利の瞬間コートに突っ伏して歓喜したクレクは、今リーグのMVPにも輝いた。文句なしの受賞を称える選手たちの中心で、満面の笑みを浮かべ、直後は「この喜びをどんな言葉で表現すればいいかわからない」と述べた主将が、勝利の喜びを噛みしめた。

「我々が一生懸命やったこと、何かを犠牲にして頑張ってきたことが評価され、結実する瞬間がチャンピオンシップをとることだと思っています。そしてチャンピオンになることで、もっといいプレーができるはずだ、もっとよくなるはずだと責任も生まれると自覚しています。このVリーグ自体は簡単なリーグではなく、そんなに簡単に優勝できるリーグではありません。何より、これまで優勝したチームに在籍した外国人選手として、誰が名を連ねているか見れば、1人として世界に名前を知られていない選手はいません。その中に名を連ねたことを誇りに思うし、それだけ難しいリーグで優勝したこと。チームメイト、ファンの皆さんにビッグスマイルでありがとうと言いたいです」

 長い時間をかけ、個々と組織としての力を磨き上げた。7年ぶりの頂点に、立つべくして立つ。ウルフドッグス名古屋の強さを証明して見せたシーズンだった。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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