村田諒太氏語るボクサー人生 必要だった引退会見、ミドル級の矜持、未完成も満足の理由
愚直かつ実直に向き合ってきたボクシング
2019年7月、ロブ・ブラントの再戦を2回TKOで制した村田氏。WBAミドル級王者に返り咲いた 【Photo by Buddhika Weerasinghe/Getty Images】
「実は僕、すごく実直なんです。言われたことは200%やります。昔からそう。やりきるからこそ、うまくいかないときには『これでいいのか』と疑問も感じることができる。高校でも大学でも実直に言われたことをやリ続けた結果、『何か違うな』と思うときがありました。だから、完成するまでに時間がかかるし、それゆえに『天才じゃない』と言われるのだと思います。人間関係も同じで、構築するまで時間がかかる。賢いかと言われるとそうではない。むしろ愚直な方かもしれないです」
金メダリストとして大きな期待を集め、ただの一度も負けられないという重圧を感じながらプロキャリアを歩んだ。村田さんにしか分からない難しさもあったのだろう。だからこそなのか、一度王座から陥落した後のボクシングには、吹っ切れたような迫力があった。
「まずは1度やりきるので、『これは違う』と思ったら、思い切って変えることができる。そういう意味ではちゃんとやりきったということが、自分のボクシング人生では大きいと思う。一つのことを真摯にやりきって実直に向き合ったからこそ、それが必要なものか必要でないか切り替えることができた。切り替えるには真剣にやらないといけないので、そこは自分でも褒めてあげていいと思う」
「ボクシング人生全体で見たら満足しています」
「日本ボクシング史上最大の一戦」ゴロフキン戦を終え、村田氏は引退を決断した 【写真:花田裕次郎】
「ゴロフキン戦が実現しただけでも有り難いですが、自分はもっとできたのに、本当の自分はあんなもんじゃないのに、という口惜しさみたいものはあります。ボクシングについても最後まで答えはつかめないままでした。いまだにパンチもこう打てばとか、ああ打てばとか考える自分がいる。僕のボクシングは完成したのか、と聞かれれば答えは『ノー』。反省や後悔もあります」
「でも、これ以上現役を続けることは、もはや僕にとって『挑戦』ではない感じがしました。既に知っている名声と報酬に対する執着が自分の中に生まれているのだとしたら、それは僕がやるべきことじゃない。だから、ボクシング人生全体で見たら満足しています」