村田諒太『折れない自分をつくる 闘う心』

22年ぶりの日本人ミドル級王者、村田諒太の誕生の裏で… 打倒ゴロフキンを目指す旅の始まり

村田諒太
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2017年10月、エンダムとの再戦を制してWBA世界ミドル級王者となった村田。客席から「ゴロフキン」の声が飛んだ 【Photo by Takashi Aoyama/Getty Images】

村田諒太 プロボクサー引退後、初の著書

「強さとは何か」を追い求めてきたボクサー村田諒太の『世紀の一戦』までの半年間を綴ったドキュメンタリー。
コロナ禍で 7 度の中止・延期という紆余曲折を経て、最強王者ゴロフキンとの対戦に至るまでの心の葛藤、スポーツ心理学者の田中ウルヴェ京さんと半年間にわたって続けてきたメンタルトレーニングの記録、虚栄や装飾のないありのままの村田諒太を綴った一冊から一部を抜粋して公開します。

「あの瞬間に始まったといっていい」

 ビッグベアレイクでのキャンプ参加から3年後、キャリアを重ねた僕は17年10月22日、プロ14戦目でアッサン・エンダム(フランス)との再戦を7回終了TKOで制してWBA世界ミドル級新王者になった。

 5カ月前の空位の王座決定戦では第4ラウンドにダウンを奪い、終始ダメージブローで上回りながらも1-2の判定負け。WBAのヒルベルト・メンドサ会長が試合翌日に謝罪の言葉を発表するなど、採点が物議を醸し、ダイレクト再戦が認められた末の戴冠だった。

 日本では五輪金メダリストがプロで世界王者になるのは初めてで、ミドル級の王者誕生は22年ぶりのことだった。第1戦の経緯もあって、試合に対する世間の注目度は極めて高かった。この試合を放送したフジテレビの視聴率は20%を超え、この年の同局の年間視聴率1位になっている。

 第8ラウンド開始前、エンダムが赤コーナーから出てこようとせず、レフェリーが試合終了を告げた瞬間、僕はすぐに泣き顔になった。それだけ重圧は大きかったのだが、感動も覚めやらぬ中、腰に黒いWBAベルトを巻いた僕はリング上のインタビューでこう言った。

「本当にボクシングが大好きな人たちは知っているように、僕より強いミドル級はまだいます」

 すかさず客席から「ゴロフキンだ!」と声が飛ぶ。「そう、そこを目指して頑張ります」と応じると、客席から大きな歓声を浴びた。今も鮮明に覚えている。

 ゴロフキンとの対戦を目指す旅は、あの瞬間に始まったといっていい。
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