町田がJ2頂上決戦を制して首位浮上 負傷者が相次ぐチームを救う2トップ「荒木&エリキ」のプレー

大島和人

荒木&エリキの連携が強みに

ベンチに駆け寄る町田の2トップ 【(C)FCMZ】

 町田は“アラキ&エリキ”の2トップが守備で効いていた。荒木は169センチ・64キロ、エリキは170センチ・65キロと小柄だが、いわゆる“アジリティ”が強烈。つまり動きが俊敏で、なおかつバランスが良く、前後左右の動き直しが鋭いタイプだ。守備ならば相手がこまめにボールを動かして方向を変えても、連続して食いついていける。そういった個人のクオリティーがあり、しかも大分戦は二人の息が合っていた。

 荒木は言う。

「練習中からエリキがずっと自分に声かけてくれたりして、自分から『こうやりたい』と伝えることもできています。磐田戦よりも今日の方が合ってました」

 エリキも荒木を高く評価する。

「荒木の素晴らしいタレント性は、町田に来た初日から感じていました。荒木とデュークの特徴は違いますけど、自分にとって特に問題はありません。一番考えなければいけないのは、相手によって自分たちの守備を調整することです」

 MFも含めた関係性については、稲葉がこのように説明する。

「FWがプレッシャーかけるタイミング(の良さ)はもちろんありますし、あと平河選手と高橋選手がものすごくいい距離感でけん制といいますか、僕たちが“GO”を掛けるタイミングを計ってくれています。それをボランチのところから指示して、『行けるのか』『行けないのか』はしっかり皆で話し合いながらやってました」

 荒木は長崎総科大高、駒沢大学とハードワークを仕込まれ、自らの強みとして真っ先に「ハードワーク」を挙げる選手だ。ただエリキはブラジルの名門クラブや横浜F・マリノスを渡り歩いてきたアタッカーで、そもそもJ2にいることが不思議な実力者。そんな大物が献身的に動き、周囲と連動しながらパスコースを切る仕事をしている。攻撃も含めて誰がパートナーでも短期間で“活かし活かされる関係”を構築している。

チームを勇気づけるエリキ

エリキは身体を張った守備も見せる 【(C)FCMZ】

 稲葉は言う。

「磐田戦後のロッカールームでは、エリキが『このチームでやれることを誇りに思う』と僕らに話してくれました。彼がチームを引っ張ってくれています。チームのコンセプトに対してエリキが100%、120%を出してくれているので、本当に勇気づけられています」

 エリキはこう口にする。

「自分は色々なクラブでプレーをしてきましたが、それぞれのクラブで要求されるものは違います。町田では黒田監督が求める戦術、メンタリティをしっかり理解して、リスペクトして、それをチームに還元することに努めてます。我々は今、素晴らしい、強いチームを形成できていると思います」

 黒田監督は言わずとしれた高校サッカーの名将だが、プロの監督としては新人だ。そんな指揮官と大物外国籍選手との関係は、チームを損ないかねない“リスク因子”でもあった。ただシーズンが始まってみればエリキがチーム戦術に順応し、先頭に立ってハードワークを見せている。攻撃でも必要以上のエゴを出さず、チームメイトとしっかり関係を築いている。10試合で4得点という“数字以上”の貢献で、エリキは首位・町田を支えている。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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