全員プロの“革命チーム”がV1の舞台へ ヴォレアス北海道が4度目の挑戦で悲願達成

田中夕子

チャレンジマッチの厳しさを知るチームだからこその「エール」

これまで在籍したメンバーの功績もあり、誰が出ても勝てるチームとなった 【©V.LEAGUE】

 チャレンジマッチは残酷で、勝者と敗者の差をこれ以上ないほどに色濃く打ち出す。喜ぶヴォレアス北海道の選手たちを、大分の選手たちは呆然と見つめる。

 昇格の喜びを求められる中、コートインタビューでクラインHCはこうも言った。

「負けた今の気持ちは、私たちは痛いほどわかっています。なぜなら何度も、その経験をして、乗り越えてきたからです。だから大分三好の皆さんも、必ずまた戻ってきて、次はV1で一緒に戦いましょう」
 GO!GO!ヴォレアス、と後押しするだけでなく、GO!GO!大分と試合後には相手に向けてエールを送るサポーターと共に。諦めずに「昇格」という目指す夢へと続く、大きな壁を乗り越えた。そしてその背景には、これまで積み重ねてきた幾多もの苦い経験がある。

 主将の佐々木が言った。

「このメンバーでコートに立ってプレーしたのは今シーズン初めて。それでもすべてにおいて上回ることができて、誰が出ていても勝つことができた。2年、3年前のメンバーの功績があったからこそ、今年のヴォレアスが成り立っているんだと思います。チャレンジマッチって、ここで勝たなきゃ今までのリーグで優勝した分も無駄になってしまう戦いじゃないですか。そこで勝ち切れるためにやってきたし、毎年勝ちたいと思ってきた。もしかしたら去年勝てたかもしれないけれど、勝てなくて、ここまでの経験があったからこその、今だと思います」

群を抜くヴォアレスの試合環境

 積み重ねた経験をさらにスケールアップさせ、いざV1へ。V1男女、それぞれにチームカラーや特色がありホームゲームの演出もさまざまだ。どれもすべてそれぞれ工夫が凝らされているが、これまで足を運んだホームゲームの中でヴォレアス北海道のホームゲームは圧倒的だった。

 ただきらびやかなだけでなく理念が根底にあるからこそ為される演出や会場の雰囲気、飲食やグッズを含めた会場販売や詰めかける観客層。メディア対応や会場内の誘導に至るまで、すべてが群を抜いていた。昇格をかけたチャレンジマッチにも北海道からテレビ、新聞など多くのメディアが足を運び、昇格を心底喜びながら取材し、当日や翌日の番組、誌面で広く伝えられる。ホームタウンのみならず、北海道知事から寄せられた昇格を祝うコメントも、Vリーグが掲げる地域密着そのものであり、どちらも地道に積み上げてきた成果であるのは言うまでもない。

 これまでの観点で見れば間違いなく規格外の“革命者”が来季はV1で戦う。そこからどんな未来へつながっていくだろう。想像するだけで楽しみは広がる。
 悲願の昇格が、バレーボール界の明るい未来にもきっとつながっていくはずだ。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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