大谷とメキシコ・サンドバルとの奇妙な縁 準決勝で同僚対決、その初球は?

丹羽政善

メキシコ代表の左腕サンドバル。「大谷の同僚」が準決勝で侍ジャパンの前に立ちはだかる 【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】

 メキシコ代表で日本との準決勝に先発するパトリック・サンドバル(エンゼルス)はときどき、5本指ソックスを履いている。「最初は、うまく指を通せなかった」というものの、いまでは手慣れたもの。器用に一度で、すっと履けるようになった。

「ちょっとしたコツがある。うまく説明できないけど、指を広げすぎても、閉じすぎてもだめ」

 すっかり気に入ったようで、「理にかなっている」とさえ話す。「指が別れている方が、しっかり地面をつかみ、下半身の力を上半身に伝えられるような気がする」。砂浜は、裸足で歩いたほうが歩きやすいのと同じ理屈だそう。「靴下だと、バランスが安定しないだろ?」。

 さて、その5本指ソックスを誰からもらったのか? それは愚問で、改めて名前を出すまでもない。

いろいろなことを翔平から学んだ

試合後にハイタッチする大谷とサンドバル。エンゼルスの同僚として両者の親交は深い 【Duane Burleson/Getty Images】

 20日(日本時間21日午前8時)の準決勝で対戦するサンドバルと大谷翔平は、エンゼルスでも距離が近く、最近は一番長く同じ時間を過ごしているかもしれない。

 きっかけは、21年のオフ。メジャーリーグはロックアウトに入ったため、普段ならキャンプが始まる2月、選手らは契約している練習施設で、そのままトレーニングをすることを迫られた。結果的に大谷とサンドバルは、アリゾナにあるドライブライン・ベースボール(以下、ドライブライン)で3月半ばまで同じ時間を過ごすことになった。

 そのときのことをサンドバルは、「シアトルと違ってアリゾナのドライブラインは狭いから(現在は同州内の別の場所に移転し、少し広くなった)、混み合わないよう施設を使える時間帯を分けていた」と振り返る。「そのとき、翔平と同じ午前中に練習することが多かった」。

 そうするうちに、自然と「いろんなことを翔平から学び、自分の意識が変わっていった」のだという。「初めてドライブラインへ行ったのは2021年12月。でも、遅かった。翔平から、『動作解析をするなら、シーズン終わってすぐのタイミングで行くべき』とアドバイスされた。シーズン中に近い体の動きが出来るときのほうが、課題が見つけやすいとのことだった」。

 ドライブラインでは動作解析を行った後、選手個々の体の使い方を評価し、その改善のためのトレーニングメニューを提供していく。一度体を休めてしまうと、体の動きが変わる。12月に動作解析をするなら、10月に行った後でトレーニングメニューを受け取り、修正の進捗状況を知るためのものであるべき。そのことの重要性を、大谷を通して学んだサンドバルは昨年、オークランドでシーズンの最終戦を迎えると、そのままドライブラインがあるシアトルへ飛んだ。

 やや話が脱線したが、そんな経緯があって昨年来、大谷とサンドバルがダグアウトでも一緒にいることが多くなった。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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