終盤に強度を上げて相手を圧倒するJ2町田 黒田監督と選手が語る“勝利の方程式”

大島和人

声がプレスの質を上げる

稲葉修土は「プレスの司令塔」として機能している 【(C)FCMZ】

 連携が機能している一つの理由は“声”だ。

 稲葉も荒木、沼田とともに途中起用で持ち味を出している29歳だが、ポジションはボランチ。ボールを奪う、セカンドを拾う、スペースを締めるといった役割を期待されている。何よりプレスの司令塔として、声で前線を動かしている。彼はこう口にする。

「今日一緒に入った荒木選手や沼田選手は前への勢いがあります。彼らが良さを最大限に出せるように後から指示するのは、僕の役目だと思っています。そこら辺は彼らの良さを出してあげながら(金沢戦の74分以降に)できていた。プレスのハメどころは僕が入ってからイメージ通りにいい形でできていた」

 荒木は述べる。

「後ろが『止まれ』だったり『ゴー』だったり、的確に指示を出してくれています。自分もプレスに行きやすいし、後ろの声はすごく大事にしています。練習中もイナくん(稲葉)とやることが多いのですが、やっぱりイナくんの声かけはすごく助かっていて、あとはヒジ(翁長聖)ですね。(この2人は)すごくやりやすいです」

2点リード後に見えた葛藤

 もっとも金沢戦は91分に2-0とリードを広げたあと、98分に今季初失点を喫している。アウェイでの勝ち点3は充分な結果だが、反省や分析、戦術的な整理はなお必要だ。

 黒田監督はこう振り返っていた。

「2-0で勝ち切ること、またシュートを打たせない、クロスを上げさせない守備に関して言うと、最後に油断や甘さが出た。ここまでは3戦無敗で来ているので、課題を抽出し、ポジティブに捉えながら、次の1週間をしっかりと取り組んでいきたい」

 稲葉はこう分析する。

「2対0になっても、3点目をみんなが欲しい状態でした。僕もそうですけどもっと試合に出たいし、変わった選手のアピールしたいという欲が少し出てしまった」

 荒木もこう振り返る。

「最後に1点決められたときも、前がプレスはできていたんですけど、自分達3人(荒木、沼田、黒川淳史)が、少し攻撃に専念しすぎて疲れていた部分があります。あそこでしっかり前が(前に踏み込まず縦のコースを消して)ブロックを作ってやっていれば、アンカーを使われず、失点もなかったと思う。そこをしっかり考えてやれれば、今日も失点ゼロでいけたのかなと思っていて、課題に残る試合になりました」

解決するべき課題はあるが

 もちろんリードしているからと言って「ひたすら自陣に下がればいい」というものではない。激しくプレスをかけて、前に出ようとする相手をしつこく牽制することも、立派なリスク管理となる。得点を挙げて評価を上げたいという積極的なマインドも、チームを活性化させる大切な要素だ。さらにいえばフレッシュな選手がタイムアップまでに“出し切る”こともプロの責任だろう。

 しかし6分と提示されていたロスタイムが結果的に98分まで続いたなかで、町田に軽い緩みが生まれてしまった。それはチームが受け止めて、解決するべき課題になる。大枠を変える必要はないし、開幕直後だから当然のことだが、ディテールの詰めは必要だ。

 ただ、終盤が得点の生まれやすい時間帯とはいえ、大物外国人選手がピッチにいない状況で、町田は得点の期待値をむしろ高める試合運びができている。そこを切り取れば、間違いなくポジティブな状況だ。それに単純に90分を過ぎてもイケイケのプレスを繰り出す試合運びは見ていて面白い。ベンチメンバーのレギュラーを“食ってやろう”という欲もチームづくりに活かすべき大切な熱だ。

 フレッシュなベンチメンバーが強烈なプレスをかけて、相手の追い上げを阻止しつつ、しっかりトドメを刺すーー。それが黒田新監督率いる町田が打ち立てつつある勝利の方程式だ。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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