ヤクルト識者が開幕投手に推したい「あの男」 新シーズンは先発投手陣の奮起に期待
村上の活躍はもちろん、中継ぎ陣の奮起と若手の活躍などで見事に2連覇を達成したヤクルト 【写真:共同通信社】
第1回目となる今回は東京ヤクルトスワローズ編。ノンフィクションライター長谷川晶一さんとライター菊地高弘さんの対談をお届けします。
喜びも半減、2022シーズンは80点
“村神様”の活躍はヤクルトの2連覇を語る上で外せない 【写真:共同通信社】
長谷川 これは単純にいえば、得点を取る上手さというか、得点能力の高さというものをチーム全体が共有している部分もあったと思うんです。もちろん“村神様”もですね、ランナーをためてドカンと一発、1安打で3点、4点入るということが普通にあったし、3番の山田哲人も打率ですごく苦しんでいたんですけど、ちゃんとフォアボールをとってランナーとして“村神様”の前に走者として残るということがあった。やっぱり(野球は)点獲りゲームということを考えると、防御率と打率が突出していなくても勝つことができるんだなと、その象徴がやっぱり村上宗隆という令和の三冠王だったなと思います。
菊地 本当に村上のためのシーズンだったんじゃないかというくらいのインパクト、存在感でしたよね。
長谷川 やっぱり今年は風格みたいなものがさらに増していましたね。あれだけフォアボールが多いというのは、あの若さで打ちたい気持ちを抑えて悪いボールに手を出さず、きちんと見極めた上で次の打者につなげるみたいな、その圧倒的な存在感が今年はさらに突出していましたね。
菊地 そんな2022シーズンに長谷川さんが点数をつけるとすると、100点満点で何点になりますか?
長谷川 リーグ優勝を果たした、CSで阪神をスイープした、ここまでは150点くらいはあったんですけど、その後の日本シリーズが2勝1分からの4連敗......。だから2022シーズンに関していうと4連敗で終わっているんですよ。
日本シリーズは全試合球場で観戦したんですけども、4回負けて家に帰っているんですよね。大阪で2回負けてどんよりとしたまま新幹線で東京に帰ってきて「さぁここから心機一転!」と思ったら、神宮で2連敗して、後味が全然良くなくて.....。
かつて、1992年にリーグ優勝をして日本シリーズで西武に敗れたんですけど、そのときのことを古田敦也さんにインタビューしたことがあるんです。古田さんは「日本シリーズで負けるというのは、ペナントの価値が半減するとは言わないけども、でも一年間を負けて終わるというのは確実に後味が良くない」と仰っていたんですね。その発言を真似させて頂くと、半減するとは言わないまでも、まぁ150点あったので、それが半減だと75点だから、80点くらいかな。
菊地 そもそもですが、シーズンが始まる前にリーグ二連覇という予測はできたのでしょうか?
長谷川 割と僕は楽観的な部分もあるんですが連覇の可能性は高いんじゃないかとは思っていました。ただ、開幕直後に奥川恭伸投手がいきなり初戦で離脱してしまって、いわゆる「コンディション不良」という言い方で、ケガが重いのか軽いのか、手術が必要なのかどうなのかがよく分からないまま結局最後まで行ってしまった。直ぐ戻れるのなら何の問題もないと思っていたんですけど、これが長引くとちょっと連覇に黄色信号くらいは灯るかな、いや赤信号かもしれない。
そう思いつつ、4月、5月と戦っていく中で、まだ奥川が全然出てこない、キャッチボールをしたという話も全然聞かない。そんなことを思っていたら、交流戦くらいからヤクルトが突然強くなって、勝って、勝って、勝ちまくったので、奥川ロスを感じる前に結果として白星を重ねていたので、その時点でこれは連覇があるんじゃないかって思いましたね。
菊地 嬉しい誤算というか、新しい力が次から次へと出てきたシーズンだったと思うんですけど、「この選手がでてきたか!」という驚きがあった選手は誰になりますか?
長谷川 ピッチャーでいえば木澤尚文投手ですね。前年は1軍で1イニングも投げていないピッチャーだったんですが、リリーフでチーム最多の55試合に投げて、チームトップタイの9勝を挙げた。投げっぷりの良さもありますが、ヤクルトには数少ない力でグイグイいくパワー系のピッチャーで、これが嬉しい誤算というか大きかったですね。
野手でいえば長岡秀樹。まさかゴールデングラブを獲得するまでになるとは思わなかったですし、あとは内山壮真ですね。
前年日本一のチームにさらに19、20歳の野手の新戦力が台頭したことは、2023年以降にもつながる良いシーズンだったのかなと思います。