ヤクルト識者が開幕投手に推したい「あの男」 新シーズンは先発投手陣の奮起に期待
2023シーズンは「背番号19番に託したい」
長谷川さんが2023の開幕投手に指名したのは石川雅規 【写真:共同通信社】
長谷川 先発投手陣をいかに厚くできるかだと思いますね。ここはもう2年間課題が明確で、尚且つクリアされていない。であれば2023シーズンは球団史上初のリーグ3連覇がかかっていますから、そのためには先発を厚くするしかないですよね。
逆に菊地さんに聞きたかったんですけど、1位の社会人投手も含めてですけど2022年のドラフトをどう見ていますか? 先発投手陣、厚みを増せそうな感じですか?
菊地 完全にドラフト1位の吉村貢司郎投手(東芝)にかかっていると思うんですけど、ここをどう評価するかですよね。1年目からいきなり二桁勝利できるかはちょっと分からないですけど、先発投手陣に割って入って、年間20試合くらい先発して7、8勝してくれれば、というくらいの期待値を持ってもらうのがいいんじゃないかなと思います。
長谷川 なるほど。僕の期待値も大体そんな感じですよ。来年43歳のシーズンを迎える石川雅規を中6日で1年間というのはちょっと現実的に難しいんじゃないかと、そう考えたときに1、2年目の若手と石川を交互のローテーションで年間20試合ずつくらい投げて7、8勝。これが現実的に起こり得るんじゃないかなという期待はしています。
菊地 先発投手が補強ポイントでしたけど、ドラフトでは吉村投手1人しか獲れていないんですよね。トレードやFAでは今のところそこまで動きもないですしね。
長谷川 そこは2022年にあまり投げなかった金久保優斗あたりが出てこないかなぁ、って思いますよね。あとは高橋奎二もコロナで離脱してそこからなかなか本調子に戻らなかったですけど、彼が年間を通じてフルに活躍する素地はもうできていると思うので、ヤクルトの豪腕左腕、かつての石井一久のような存在になってくれないかなと。
あとは最初に話に戻りますけど、奥川恭伸がどこまで間に合うのか、間に合わないのか。報道では手術ではなくて保存療法を選択したようですしね。それが果たしてどう出るのか。
菊地 山下輝投手なんかも出てくればというところではありますけども。
長谷川 日本シリーズで投げて経験を積んだということは、高津監督の中でも2023年以降を見据えた起用だと思うんですよね。是非ものにしてほしいですし、プロ一年目で初勝利を挙げていますからニ年目以降の飛躍に期待をしたいですよね。
菊地 若手選手の名前が出てきていますけど、その中でも特に飛躍を期待したいのは?
長谷川 若手に期待はもちろんあるんですけども、中堅どころの原樹理、高梨裕稔あたりは本来には日本シリーズで先発していないといけなかったはずなのに、中継ぎ登板すらないというこの事態を、やっぱりお尻に火がついて2023シーズンを迎えていていると思うので、彼等の奮起に期待ですね。若手で期待したいのは、個人的には金久保投手ですね。
菊地 なるほど。ちょっと気が早いのですが、ここで2023シーズンの順位予想をお願いいたします。
長谷川 すごいですね、まだどの球団も戦力が何も揃っていないのにね(笑)。
菊地 まだキャンプも始まっていないんですけどね(笑)。
長谷川 分かりました。ではまったくノープランで、思いつきでいきます。1位はヤクルト、球団史上初の3連覇達成です。歓喜のビールをまたたっぷり飲もうと思っています。
2位はジャイアンツにします。移籍してきた松田宣浩選手、すごい楽しみなんですよ。実績を残してきたベテランが移籍先でなかなか結果が出ないなかで、あの“熱男”のキャラのままでいられるのかどうか?それが上手く溶け込むことができたら、復帰してくる長野久義選手共々、良い相乗効果でジャイアンツが来るかなと思っています。
3位はベイスターズです。左の投手陣の厚みと、足は使えないけどバッター陣は強力ですし、オースティン、ソトも残りますしね。個人的にもハマスタでのベイスターズ戦は、いつも打たれそうな感じで嫌なんですよ。
4位は阪神。岡田阪神が僕は強くなると思っているんですけど、ただ就任一年目でいきなり花が開くかなと考えると、ちょっとまだ疑問符というか。岡田彰布新監督がやりたいことが浸透するのはまだ時間がかかるんじゃないかなということを考えて4位にしました。でも阪神はピッチャーがいいですからね、そう考えると安定して強いのかなという気もするけど.......。
5位、6位はどっちかな......。5位中日、6位広島にします。中日がどうこうより、広島の新井 貴浩新監督が監督としてやっぱり未知数じゃないですか? 日本ハムの新庄剛志監督が1年目に色々と手探りをしていましたけど、それがカープでも行われるんじゃないか、それを踏まえて就任二年目以降があるんじゃないかということを考えると、6位がカープ、必然的に5位がドラゴンズかなと。
ドラゴンズは内野陣がガラッと入れ替わる感覚は、どうなのかなとは思いますけど。ポジションを空けて待つのであれば、若手の選手は絶対にポジションを獲らないとダメですよね。
菊地 では最後になりますが、2023シーズンの開幕投手を勝手に指名してください。
長谷川 迷いなく石川雅規ですよ。
菊地 おぉー。いいですねぇ!
長谷川 2023年からは球界最年長選手になるんですけど、200勝まであと17勝で、ここ数年の石川投手の成績を考えると、もう無理なんじゃないかという否定的な意見も多々あるのも本人もよく知っているんです。でも、そこをいかに見返すかというのが彼の今のモチベーションになっているんです。さらに彼は球界最年長とか、最高齢とか、そういうことを背負いたいと仰ってるんですよ。それは団塊ジュニアというか、1979、80年生まれの何十万、何百万といた野球少年たちのなかで、リトルからシニアへ行く、名門高校へ行く、大学に行く、社会人に行く、プロに行く、そういうふうにどんどん淘汰されていって、今NPBでは自分しかいないと。あの当時のかつての同級生たち、野球少年たちの思いを背負って自分は投げたいということを今年のシーズンオフに仰っていたんです。その思いを背負っているのであれば、もう開幕を託そうじゃないかと、高津監督に直談判したいくらいです。
石川雅規のその心意気、見せてもらおうじゃないかと。128キロのストレートで吉田正尚(オリックス→レッドソックス)をゲッツーに取れる男なんですよ。そのストレートをぜひ開幕で見せてほしい。2023シーズンは背番号19番に託したい。
菊地 ちなみに長谷川さんは石川投手のことを描いた本を出されたそうですね。
長谷川 2022年の12月5日に発売になりました『基本は、真っ直ぐ―― 石川雅規42歳の肖像 』という本なんですけども、2021年、2022年、毎月石川さんに定期的に取材をしていたんです。ヤクルトが2連覇した2年間の石川雅規を描いた本になっています。
菊地 長時間に渡りまして、長谷川さん、ありがとうございました!