ヤクルト識者が開幕投手に推したい「あの男」 新シーズンは先発投手陣の奮起に期待
ターニングポイントになった横浜との3連戦
大事な場面で一発を放つ勝負強さを見せた2年目の内山壮真 【写真:共同通信社】
長谷川 どれか1つではなくて、2つ挙げたいんですけど、1つは交流戦の初戦。5月24日の神宮球場での日本ハム戦。(1点を追う8回に代打の)内山選手のプロ第1号で1-1の同点に追いついて、延長10回には「田口の20球」と言われる、ノーアウト満塁のピンチを田口が抑えて、11回に村上選手が14号サヨナラ2ランホームラン。劇的すぎるというか、僕も神宮で見ていたんですけど、これは今年を象徴する試合になるぞ、ターニングポイントになる試合だと、リアルタイムで思ったので、まずはこの試合を挙げたいですね。
もう一つは、8月26日の横浜スタジアムでのベイスターズ戦ですね。ヤクルトはコロナで選手が大量離脱して、メンバーがフルで入れ替わるような状況にあるなかで、7月、8月とかなり苦しい戦いを強いられていたんです。監督もコロナでいなくなって松元ユウイチ監督代行が指揮を執っている状態で。
首位ヤクルトと2位ベイスターズとの差が、圧倒的なリードがあったにもかかわらず4.0ゲーム差まで縮められていて、尚且つベイスターズは当時、横浜スタジアムで13連勝か14連勝くらいしていた。そういう状況でヤクルトが横浜スタジアムに乗り込みました。
でもこの3連戦をヤクルトはスイープするんですね。ここぞという時の強さがヤクルトにはあるなって強く感じることができたのが、この3連戦でした。特に最初の試合、村上が通算150号(を含む2本のホームランを)打ったんですけど、そういう大事な試合で彼は打つんですよね。やっぱり、勝つべくして勝った試合だなという思いがここではすごいあったし、次の日は結果が出ていなかったキブレハンが3連発を打つという。
菊地 キブレハン(笑) ありましたね。
長谷川 優勝する年って、必ずこういう試合があるんですよね。思わぬ伏兵の思わぬ大活躍で、結果的にトータルで見たらあの試合でしか活躍してなかったみたいなことがよくあるんです。そういう意味でこの3連戦はターニングポイントだったかなと。でも高津臣吾監督とか伊藤智仁コーチに聞くと、そこまで切羽詰まっていた感じはあの当時のチームにはなかったと仰っていたんですけど、僕は勝手にビクビクしていたんですよね。
菊地 キブレハンの名前がでましたけどでも、ヤクルトって外国人選手が後半にこういう仕事をするっていうイメージがありますよね。パリデスとか。
長谷川 そうそう。まさに言おうと思っていたんですけど、92年に14年ぶりにリーグ優勝した年もパリデスが途中加入でしたもんね。最初は「さっパリデス」とか言われていたんですよ。
菊地 (笑)
長谷川 でも日本シリーズでも活躍してラッキーボーイになって、西武に傾いていた流れをヤクルトにひっくり返したこともありましたからね。
キブレハンもなんか「ひょっこりハン」みたいなイメージもあって「さっパリデス」と相通ずるものがあるというか、100%の全幅の信頼を寄せきれないところがあるんですけど、あの時の3連発はすごかったし、その試合で内山も2号ソロを打っているんですよ。交流戦初戦で第1号、大事な首位決戦で第2号、日本シリーズで代打スリーラン、大事なところで打つ、あの勝負強さは二十歳の選手じゃないなと思いましたね。
菊地 内山は数字以上のインパクトを残しましたよね。これはキブレハンにもパリデスにも言えるかもしれませんが。
長谷川 シーズン中に内山選手にもインタビューしたんですけど、「僕は勝負強いと思います」ってはっきりと自分でも言っていました。その後に日本シリーズでのあのホームランだったので、言葉通り、有言実行の男だなと惚れ直しました。
大西広樹にあげたい「投」のMVP
長谷川さんが投手のMVPに選んだ大西広樹 【写真:共同通信社】
長谷川 これは村上を選ばないと......リアルMVPじゃないですか、2年連続で。ここで塩見泰隆とかって言いたいんですけど、記者投票で村上に投票しなかった人が物議を醸しているじゃないですか。なのでやっぱり村上を外すわけにはいかないですから、野手では村上宗隆をダントツのMVPにしたいですね。
菊地 もう仕方ないですね。むしろ投手のMVPが気になります。
長谷川 これはすごく悩むんです。ずっと考えていたんですけど、勝ち星という面では木澤、サイスニードが9勝。この二人はどっちもすごく頑張ってくれたので甲乙つけがたいんです。でもねぇ、(2022シーズンは)中継ぎ陣なんです。チーム防御率がよくないなかで、先発投手がローテーションをきっちり守れていなかったり、2年連続二桁投手がいないとか、それでもちゃんと優勝しているというのは高津監督が何度も仰っていますけど、少ない点数を先発投手がなんとか少しでも長いイニングを投げて、中継ぎ陣がどう凌ぎきるか、なんですよね。8回清水昇、9回スコット・マクガフというのは盤石ではあるんですけど、僕は7回を投げた投手たちをすごく評価したいというか。
例えば田口麗斗投手が投げることもあれば今野龍太投手が投げることもあるし、シーズン中盤以降から出てきた久保拓眞も。この3人は甲乙つけがたいので三本の矢的なことでこの3人にMVPをあげたいかなぁ。
あとは大西広樹。ビハインドの場面で粘り強く投げてチームが逆転して勝ちをもたらす、でも自分にはホールドも白星もつかないことも多々あるなかで......大西広樹もいいかなぁ。大西広樹にしようかな、43試合(登板)は結構すごいと思いますよ。
菊地 結構、汚れ仕事をしてくれたみたいな感じですよね。
長谷川 そうそうそう。日本シリーズでも彼はちゃんと試合を作ってくれましたからね。なので投手のMVPは大西にします!村上の背番号55と大西の44でゾロ目同士ですし。