黒田剛監督が選ぶ「青森山田ベストマッチ」

黒田剛監督が選ぶ青森山田ベストマッチ①・後編 逆境を乗り越えて勝ち取った16年度の初優勝

吉田太郎
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黒田監督がベストマッチの1つに選んだのは、16年度大会決勝の前橋育英戦。5-0の大差で勝利を収め、青森県勢初となる選手権優勝を成し遂げた 【AFLO】

 J2・FC町田ゼルビアの監督就任が決まり、28年間率いた青森山田を今年度限りで去る黒田剛監督。すでに監督の座を退き、第101回全国高校サッカー選手権には総監督の立場で臨む。1995年に監督に就任し、同校を全国随一の強豪に成長させた名将は、過去に出場した26回の選手権で76試合の指揮を執った。その中から黒田監督本人に「ベストマッチ」と言える3試合を挙げていただいた。今回はその1試合目、悲願の初優勝を果たした2016年度大会決勝・前橋育英戦の後編だ。

黒田監督も存在の大きさを認めたGK廣末

キャプテンの住永とともにリーダーシップを発揮した廣末。その存在の大きさに黒田監督も一目置いていたGKは、プレー面でもチームを引っ張り初優勝の原動力に 【AFLO】

 黒田剛監督は「強い時はチーム内に必ず、監督やコーチがいる。今回(2021年度大会)の松木(玖生)や(宇野)禅斗もそう。2度目の時(2018年度大会優勝時)も檀崎(竜孔)、飯田(雅浩)、天笠(泰輝)と澤田(貴史)、(三國)ケネディ(エブス)がいた。監督やコーチといえる選手がいた時は強かった」と分析する。

 2016年度の初優勝時は、黒田監督に「住永翔がいるかどうかで全然違う」と言わしめた“心臓”であり、リーダーの住永がいた。味方に対して強い口調で遠慮なく怒号を飛ばし、鼓舞し、チームを引き締める一方で、気持ちの優しい選手には励ましの言葉で後押ししていた。そして、的確な指示。まるでピッチの中に監督がいるかのようだった。その住永は、他校の指導者たちも認めるリーダーシップによって、青森山田を悲願の選手権初Vへ導くリーダーとなった。

 加えて、大きかったのが廣末陸の存在だ。「(得点王を獲得するなど攻守両面で大活躍した)鳴海(彰人)が結構“暴れ馬”だったから。鳴海に言い聞かせるのは廣末でしたね。廣末もやんちゃなんだけど、アイツは勝ち気。自分には甘いんだけど(微笑)、人には相当厳しいから、鳴海も廣末の言うことは聞いていました」(黒田監督)。

 廣末はこの2016年度大会で圧倒的なパフォーマンス。勝負を左右するようなシュートストップを連発し、ビルドアップの起点となり、パントキック一発で相手の背後を取ることから“戦術・廣末”とまで評されていた。

 FC東京入団が内定していたこともあり、注目度、存在感も絶大。黒田監督はその廣末を入学直後のプレミアリーグEAST第2節から先発起用している。

 彼と接するなかで黒田監督が実感したのは1年生らしからぬ図太さ。ある試合の前半、廣末は相手のミドルシュートを後逸する形で失点した。だが、ハーフタイムに先輩たちへ向けて「もっとこうやれよ、こうだろ」と厳しい口調で意見。堪らず先輩がミスについて指摘すると、「それはさっき、『ごめん』って言ったじゃん」と返したのだという。

 黒田監督は廣末の言動に苦笑するようなこともあったというが、「(彼の存在は)大きかったね。堂々としているから。見ていてあやかりたいところもあるし、ああいうパワーがなければ勝っていけない。お利口さんの、イエスマンばかりのチームだと勝てないですから」

 廣末はそのメンタリティー、リーダーシップを最後の選手権でも発揮。GKでは、1993年度大会で清水市立商業(静岡)を日本一へ導いた川口能活以来と言えるような大活躍で“大会の顔”となった。
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