連載:井上尚弥、さらなる高みへ 4団体王座統一戦編

【独占インタビュー】ポール・バトラーが井上戦への想いを告白「彼こそが最大のビッグネーム」

杉浦大介

今年4月のサルタン戦に勝利しWBO世界バンタム級王座を獲得、実に8年ぶりの世界王座奪還を果たしたポール・バトラー 【Getty Images】

 2022年4月22日、ジョナス・サルタン(フィリピン)との世界WBOバンタム級暫定王座決定戦に勝利し、実に8年ぶりの世界王座奪還を果たしたポール・バトラー(イギリス)。12月13日に迫った井上尚弥(大橋)との試合では、世界バンタム級4団体王座統一を懸けて対戦する。

 今回は、最大のビッグファイトが間近に迫った、WBO王者が単独インタビューに応じ、井上戦に向けた想いを語ってくれた。(取材は11月23日、リモートにて実施)

井上戦こそが私の目標

――ボクシングキャリアで最大のビッグファイトが間近に迫っていますが、調整はいががでしょうか?

ポール・バトラー(以下、PB) 準備は万全です。トレーニングは順調に進んでおり、試合にはいい状態で臨めそうです。12月13日の試合を本当に楽しみにしていますよ。

――来日はいつになるのでしょう?

PB 12月4日に英国を経ち、5日に日本に到着します。日本で8、9日を過ごすので、時差にも適切な形で対応できるはずです。私の体内時計も試合までにはしっかりと動くようになるでしょう。(実際には、予定していた便が遅延したことにより1日遅れの来日となった。)

――あなたはバンタム級のみならず、全階級を通じても最強の1人と目される王者である井上尚弥との統一戦をすぐに承諾したことですでにファンからのリスペクトを勝ち得ました。なぜここで井上との対戦を受けたのですか?

PB 彼こそが私が戦う階級で最大のビッグネームだったからです。自分自身にチャレンジし、自身の限界を知りたかったのです。“ナオヤ・イノウエ”という巨大な相手と対戦するからこそ、厳しいトレーニングにも耐えられるし、普段より10%は余計に厳しい練習もこなせます。井上は私の中のベストの姿を引き出してくれると信じています。

――4月にWBO暫定王座を獲得し、正規王者に昇格したあと、まず1、2度防衛戦をこなすこともできたはずです。地元凱旋試合などを行えば大金も稼げたと思いますが、その方向性は考えなかったのでしょうか?

PB その可能性も考えました。ただ、井上陣営は年内の対戦を希望したのです。12月に4団体統一戦を行うのだとすれば、たとえば10月ごろに別の防衛戦をはさむことはできませんでした。そこでたとえば拳の故障など負ってしまったら、その後のビッグファイトに影響しますからね。やはり井上戦こそが私の目標だったので、彼らの希望通りの日程を承諾したというわけです。

――井上は6月に行われたノニト・ドネア(フィリピン)との再戦で2回KO勝ちを収めました。因縁のリマッチにあれほど早く決着がついたことには驚かされましたか?

PB 少し驚いたことを否定しません。今回は井上がKO勝ちを飾るというのが私の予想ではありました。彼らの第1戦は素晴らしい試合でしたが、ドネアの加齢が影響し、様々なことが井上に優位に運ぶと考えたからです。とはいえ、2ラウンドで決着がつくとは思いませんでした。井上の素晴らしいパフォーマンスだったと思います。

――第1戦を思い返し、井上はリマッチでどのようなアジャストメントを施したと思いますか?

PB 使用するグローブを変えたことが大きかったんでしょう(笑)。実際にこれまでは日本製のウィニングを使っていたのに、あの試合ではパンチャーズグローブとして知られるレイジェス製を使用したのは非常に興味深い変化でした。試合内容としては、ドネアが早い段階から仕掛けていったことがあのような結果につながったという認識です。第1ラウンド終盤の強烈な右で事実上、勝負は決まりました。

――グローブの話をしておくと、井上戦ではあなたはどのグローブを使用するつもりでしょう?

PB リングサイド社が私のスポンサーになってくれているので、日本でもリングサイドのグローブで戦いますよ。柔らかく、使いやすいグローブです。性質としてはレイジェス製によく似ていると思います。

1/3ページ

著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント