連載:井上尚弥、さらなる高みへ 4団体王座統一戦編

【独占インタビュー】ポール・バトラーが井上戦への想いを告白「彼こそが最大のビッグネーム」

杉浦大介

井上はすべての面で優れたボクサー

11月23日、リモートでの単独取材に応じてくれたバトラー 【杉浦大介】

――ここで井上対策を披露してもらうのは難しいとは思いますが、可能な限りでどのようなファイトプランを考えているかを話していただけますか?

PB 厳しい試合になることはわかっています。自分がこう戦い、これをやれば勝てる、という試合ではないことも認識しています。アウトボクシングに徹したとしても、井上は勢いをつけて襲いかかってくるでしょう。まずは第1ラウンドにしっかりとしたスタートを切ることが必須になります。その後、どのような展開になったとしても、しっかりと適応することが重要になると思っています。

――井上選手もバトラー選手には相応の敬意を払っており、早期決着ではなく、「長いラウンドを意識している」と話していることはご存知ですか?

PB そのことは知りませんでした。井上への敬意はもちろん私も変わりません。井上がこの階級のすべての王者たちにKOで勝ちたいと考えているのはわかっていますし、私が最後の1人です。彼にはまだやらなければいけない仕事が残っている、とだけは言っておきます。

――あなたはトップレベルで長いキャリアを積み重ねてきましたが、自身の能力の中で最も自信を持っているのはどの部分でしょうか?

PB 私はリング上で考えながら戦い、必要な適応を施すことができます。WBOのエリミネーター(2021年6月のウィリバルド・ガルシア(メキシコ)戦)では足を止めて打ち合い、WBOタイトルを奪ったジョナス・サルタン(フィリピン)戦では足を使ってアウトボクシングをしました。相手に応じて戦術を組み立てることができ、もともとしっかりとしたアマチュアキャリアがあるからこそそれが可能になっているのでしょう。また、トレーナーの指示通りに戦えることも長所だと思います。

――一方、井上のすごさはどこにあると考えていますか?

PB 誰もが知っている通り、パンチングパワーは飛び抜けています。とはいってもパワーに依存した選手ではなく、目立った欠点は存在せず、すべての面で優れたボクサーですね。いいフットワークを持っており、ハンドスピードに恵まれ、非常に賢明で、上下の打ち分けもうまい。だからこそ彼は3階級を制することができたのであり、その実力はスーパーバンタム級でも通用するでしょう。

――それほどの力を持った井上選手に対し、リング上でどれだけフラストレーションを感じさせるかが鍵になるのでしょうか?

PB これまでも多くの選手が井上を空回りさせようとしてきたはずですが、成功した選手はいません。ジェイミー・マクドネル(英国)は足を使おうとしましたが、すぐに倒されてしまいました。エマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)も初回はいい戦いをしましたが、2回には井上に適応され、KOされました。これまでの井上のキャリアの中で注目すべき試合があるとすれば、やはりドネアとの第1戦でしょう。

――同じプロベラム傘下のドネアから直接、井上対策のアドバイスを受けたのでしょうか?

PB いえ、ノニトとはもうしばらく話はしていません。ただ、彼が井上と対戦した2試合の映像にはしっかりと目を通しています。もちろんジェイソン・マロニー(オーストラリア)戦も見ていますし、多くの試合をチェックするようにしています。井上は様々な戦い方ができる選手ですから、なるべく複数の映像を見て、どんな形でも適応できるようにしておきたいのです。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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