小学生時代は控えだった14歳が“プレミア”で活躍 清水ユース関口航汰は「バリバリのFW」

大島和人

関口航汰は14歳ながら清水エスパルスユースで出番を得ている 【大島和人】

ユース静岡ダービーで同点弾

 IAI日本平スタジアムで開催された静岡ダービーのロスタイム――。94分に劇的な同点弾をたたき込んだのは中学3年生だった。

 舞台はU-18年代の最高峰に位置する「高円宮杯プレミアリーグWEST」。背番号34の関口航汰は77分に投入されると、ゴール前の小さなスペースを生かしてパスを引き出し、ブロックを受けつつ左足シュートを力強くたたき込んで見せた。

 11月5日に開催された静岡ダービーのジュビロ磐田U-18戦も含めて、リーグ戦の残りは5試合。コロナ禍で試合数に差があるとはいえ、清水エスパルスユースは12チーム中10位と残留争いの渦中にいる。勝ち点3を必要としていた中で3-3の引き分けは悔しい結果だが、とはいえ勝ち点1をもぎ取り、宿敵からホームを守った意味は大きい。

 清水ユースの澤登正朗監督は試合後にこう述べていた。

「我々(の狙い)は勝ち点3しかないので、そこが取れなかったことはもちろん残念ですけれど、ダービーという部分を考えればまず負けなかったこと、このアイスタで戦う重みを選手たちも感じながら最後まで粘り強くやって同点に追いついたところは、よく戦えた部分かなと思います」

神奈川から静岡に転校

 同点ゴールを挙げた関口は、181センチ・69キロのストライカー。11月13日生まれのため、試合の時点ではまだ14歳だった。チームに合流して2カ月ほどと間もなく、夏までは神奈川の東急Sレイエスでプレーしていた。高校進学を待たず静岡市内の公立中に転校し、今はチームの寮に入っている。

 関口はこう語っていた。

「プレミア初ゴールだったので、めちゃくちゃ嬉しかったです。要求したところにいいボールが来て、(ゴールの)右に流し込もうというイメージの通りでした」

 澤登監督は関口の起用についてこう説明する。

「一つはラスト15分という時間帯に、我々はセットプレーがちょっとウィーク(弱点)だったので、まずその高さを付け加える狙いです。あと彼の動き出しのタイミングはすごく良かったので、それをうまく得点につなげてくれればなという思いでした」

 運動量や守備といった課題を指摘しつつ、新加入の逸材をこう評価する。

「中学3年生ですから、プレミアの中で取ってくれたことはすごく大きい」

「使いながら成長させていく」

 指揮官はその特徴についてはこう述べていた。

「彼はポストプレーというより、スペースを突くタイプですね、抜け出しがうまいし、シュートもうまい。足が速いし、アジリティ能力も結構高いです」

 使って伸ばすことがチームの方針だ。

「彼を『使いながら成長させていく』のはクラブとしての目標でもあります。まずこういうところでしっかりと出ながら、プレーだけでなく人間性も含めて成長していければ、十分に上でやれる可能性は持っています」

 プレミア初登場は10月8日のサガン鳥栖戦だった。85分に投入された彼は1点ビハインドの後半ロスタイムにPKを獲得し、同点に追いつくきっかけを作った。その後もサンフレッチェ広島戦、ヴィッセル神戸戦、そして磐田戦と終盤の途中起用で出番を得ている。

 関口は自ら「バリバリのFW」と口にするストライカータイプだ。鳥栖戦のPKは結局エースの斉藤柚樹に譲ったが、自分が蹴ろうと名乗り出たという。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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