小学生時代は控えだった14歳が“プレミア”で活躍 清水ユース関口航汰は「バリバリのFW」
U-12は控えで、U-15も全国と縁なし
久保建英は高1で既にJ3の主力だった 【(C)J.LEAGUE】
ただ関口は街クラブからJユースへの移籍で、しかも卒業を待たずに合流した珍しい例だ。U-15日本代表には招集されていたものの、中学生時代は全国大会と無縁だった。彼が所属していた東急SレイエスはJクラブや高体連の強豪に人材を輩出する有力街クラブだが、この夏の関東クラブユース選手権は3回戦(ラウンド32)で敗退している。
U-15年代の全国大会は8月中旬の開催だが、関口は既に次のステップに向かっていた。彼は進路を巡る決断をこう振り返る。
「決断は夏休みのはじめくらいで、急に決まった感じです。すごくいいチームだったので、すぐにでも行きたかった。(清水入りの)話は結構前からもらえていましたが、クラブユースに出られていたらまだ来てなかったかもしれません」
「1次試験」から街クラブ入り
「横浜バディーが全国優勝をした代ですけど、自分は出ていなかった。どこからも声がかからず行き先がなくて、東急レイエスは1次試験から一般で受けて3次まで行って、やっと受かりました。レイエスがめちゃくちゃ合っていたかもしれないですね。身長はずっと大きかったですけど個人戦術、技術のところが中学に入って付いてきました」
一般論としてトップ・オブ・トップの子はセレクションなど受けなくてもスカウトで進路が決まる。その次のレベルの子は1次や2次の選考が免除になるし、逆に「1次試験だけ」で決まる子もいる。そう考えると“一般受験で街クラブ”から“飛び級でJユース”に駆け上がった関口の出世スピードは異例だ。
関口に話を聞くと、コメントの端々から“ストライカーらしさ”が伝わってきて楽しかった。清水が「いいチーム」と思う理由を尋ねると、こんな答えが帰ってきた。
「まずは自分を出してくれるところです。それがないと、その先もないので」
緊張とも無縁なタイプだ。
「緊張は全然しないです。『何かしらできるんじゃないかな』と思っちゃって、実際できない試合もありますけど、大体は点を決められるんじゃない?と思います」
本格派ストライカー誕生に期待
「まずエスパルスで活躍できる選手になりたいですね。エスパルスで一番の点取り屋になって、そのまま海外でも評価される選手になっていきたいです。試合前とかにはギャレス・ベイルとロナウド、最近はハーランドの動き出しとかゴールシーンを見るようにしていて、その3選手はちょっと異次元だなと思いつつ、目標にしています」
W杯に選ばれた26名の顔ぶれを見ると、改めてこの国のサッカー界には「生粋のストライカー」「大型FW」が乏しいことに気づく。また日本代表のセンターバックにはJのアカデミー出身者がそろう一方で、FWは高体連出身者が多い。育成のルートがエリートになるほど、オールラウンドで穴のないタイプが増え、「俺が獲ってやる」という突出した点取り屋は生まれにくい傾向がある。
関口航汰はエリートコースに乗ったものの、いい意味で高体連的な“牙”を保った逸材だ。もちろん本人の努力は不可欠だし、挫折なくキャリアを終える選手などいない。しかし彼には「今の日本サッカーにはいないタイプの本格派ストライカー」なってくれるのではないか?というワクワク感がある。