中国の強さは「基礎」に裏打ちされたラリー力 日本の対抗策はコピーではなく個性

月刊『卓球王国』

東京・羽佳卓球倶楽部で指導にあたる羽佳純子さん 【卓球王国】

 中国・成都で開催中の世界選手権団体戦。日本は男女ともグループリーグ全勝で首位通過を決めたが、優勝戦線の先頭にいるのは中国だ。世界トップランカーの欠場が目立つ中、ベストメンバーを揃え、地元開催の世界選手権で男子は10連覇、女子は5連覇を狙う。

 長らく卓球界の頂点に君臨し、卓球愛好家でなくとも「中国=卓球強豪国」という認識は強いはず。では、なぜ中国は強いのか。他国の選手とは何が違うのか。中国出身で、現在は日本でジュニア選手の指導にあたる羽佳純子さん(中国名・李雋)に日本との比較を交えながら、中国の育成システムの観点から強さの秘訣を語ってもらった。

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卓球の本質は「連続して打球するスポーツ」

 この夏、小学生団体戦日本一を決定するロート製薬杯全国ホープス卓球大会・男子で優勝を果たした羽佳卓球倶楽部。このチームを指導するのが羽佳純子さんだ。中国・北京市出身で中国代表として1989・1991年世界選手権に出場。女子ダブルスで2大会連続3位入賞を果たした。1992年に来日し、日本リーグでプレー。その後、日本へ帰化し2001年には日本代表としても世界選手権に出場。女子団体で18年ぶりとなる銅メダル獲得に貢献した。

 現役引退後は指導者となり、多くのジュニア選手を指導。かつては日本女子ジュニアナショナルチームのコーチも担当した。中国仕込みの技術指導をベースにしたコーチングは高く評価されており、全国大会で上位入賞者を輩出し続けている。中国と日本で選手としてプレーし、日本で指導者として活動する羽佳さんだが、中国におけるジュニア選手の指導の特徴として挙げたのは徹底した「基礎強化」。そこに中国が勝ち続けられる土台があるという。
 「日本と中国のジュニアの指導で一番違うのは、どれだけ基礎をやり込むかだと思います。基礎というのは、フットワークや強いボールを打つ、ミスが少ないといった部分。卓球というのは連続して打球するスポーツであって、最後はラリーで打ち勝てないと試合にも勝てない。勝負を分けるのは連続してミスなく、どれだけ強いボールを打ち続けられるかだと思います。そのためには基礎が必要であって、中国ではそれをジュニア時代に徹底して強化します。
 サービス・レシーブや3球目攻撃など、ラリーになる前の展開も大事ですが、レベルが上がって、何度も対戦すれば研究もされるので、結局最後はラリー勝負になる。その時のお互いの調子次第では日本や海外の選手が中国選手に勝つことはあっても、彼ら、彼女らに何大会も連続して勝ち続ける選手はほぼいません。それがラリーでの強さの差であり、中国と他国の選手の差ではないでしょうか。よりラリーが続きやすくなるように、ボールの素材が変わるなど様々なルール変更が行われたことで、その重要度はより高まっています」

サービス・レシーブ重視の背景にある日本の強化システム

 その中で、日本ではジュニア、特に小学生の段階では基礎よりもサービス・レシーブを重視する傾向にあるという。そこには日本の強化システムも関係している。日本卓球界のトップチームとして存在するのがナショナルチームだが、その下に高校生年代までのジュニアナショナルチーム、さらに小学生年代のホープスナショナルチームがあり、各カテゴリーでナショナルチームとして強化を行っている。ホープスナショナルチームはその中でもU12、U10、U8と年代ごとに細分化され、そのメンバーは大会の成績によって選ばれる。

 日本の場合、トップを目指すには小学生から結果が求められ、大会で結果を残せばホープスナショナルチームに選ばれて、次のステップに進むチャンスを手にする。逆に言えば、小学生のうちにチャンスをつかめないと、トップを目指すことは難しくなってくる。

 「小さい頃から結果が求められるので、日本では年齢が低いうちからサービス・レシーブからのシステム練習(戦い方)のような、実戦的な部分を優先する必要がある。やっぱり、どれだけ基礎をやってもサービス・レシーブができないと勝てませんから。サービス・レシーブは感覚的な部分も大きくて、日本は小さい頃から卓球を始める選手も多いですし、試合もたくさんあって、いろいろな選手のボールを受けるから、器用というか感覚的な部分が優れている選手は多いですね。
 中国だと結果だけでなく、指導者が才能があると見込んだ選手にチャンスを与えることもあるので、そこは日本とは違っていますね。日本のシステムが悪いということではなくて、どの選手にも平等にチャンスがあって、結果によってチャンスが与えられるというのはフェアだし、スポーツとして良いシステムだと思っています」

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