部活動としては日本初の“トークン”発行 仙台大サッカー部が新たな資金調達法に挑戦する理由

平野貴也

新たな資金調達に挑戦する、3つの理由

仙台大は、トークン発行型クラウドファンディングで3つの環境改善を目指す 【写真提供:全日本大学サッカー連盟/飯嶋玲子】

 不安を抱えながらも新たな挑戦に踏み切ったのには、3つの理由がある。

 1つ目の理由は、純粋なチームの強化、選手の育成だ。仙台大は、練習場に固定式AIカメラを導入済み。ボールを自動追尾し、2台の映像を合成してピッチ一面を映せるもので、選手の走行距離やパス成功数などの個人データをAIで分析もできる。トップチームを筆頭に6カテゴリーのチームを有しているが、春と夏には紅白戦を行い、各選手のデータを評価の一つの指標としている。選手は、これまでは受けにくかった個別のフィードバックをデータで受けられ、課題の認識に役立てている。今回のトークン型クラウドファンディングで購入する移動式AIカメラは、その機能を外に持ち出すことが可能。遠征やプロクラブとの練習試合で、相手も含めてデータを抽出して比較できるようになる。仙台大は、今夏の総理大臣杯にも出場した全国大会の常連。MF粟野健翔(4年)のJ3福島来季加入が内定済みで、12年連続でプロ選手を輩出中。そんなチームの各個人が目指すべき基準を、データで知ることができる。

 2つ目の理由は、学生の負担を減らすことだ。吉井総監督は「学業と部活の両立は大変です。特に、チームの主力となる上級生は就職活動や教育実習などで忙しい。また、生活費を稼ぐためにアルバイトをしている学生もいるので、チームで活動資金を確保し、少しでもサポートできればと考えています」と話した。AIカメラの導入は、試合映像の撮影や映像分析を行っていた学生の負担を減らす意味合いも含まれている。

 3つ目の理由は、新しい時代に対応できるチーム、学生であること。吉井総監督は「トークンについては、やりながら学んでいければという部分もあります。Web3と呼ばれる時代を迎える中、スポーツ界としてどのような貢献ができるのかを知るきっかけにしたい思いもあります。体育大学なので、スポーツマネジメントを学ぶコースもありますし、選手としても、学生としても、部活動を通して、次の時代の流れを体験しながら学んでいくことが大事だと思っています」と話した。第3弾で予定する、中学校の部活動の地域移行化への貢献は、日本のスポーツ界が抱える次世代の社会問題だ。

財源確保は難化傾向、チーム運営に求められる自立

 日本のスポーツチームは、多くがアマチュア組織だ。自治体や法人などの所属者で構成される実業団等のチームを筆頭に、活動資金は企業スポンサードや公金を財源としている場合が多い。しかし、長引く不景気により、その財源確保も難しくなってきている。吉井総監督は「多くの指導者と同じように、教え子たちが、次世代で良いサッカーとの付き合い方、生活ができればと考えていますが、それには、社会や地域から求められる存在になることが大事だと思います」と話した。新たな時代に、新たな技術を活用して、これまでは可視化されていなかった個々の支援者とのつながりを形にして、支える価値のあるチームとして成長していく。仙台大サッカー部の挑戦には、そんな視点が含まれている。

吉井秀邦(よしい・ひでくに)

1973年生まれ、福岡県出身。暁星中・高でプレー。全国高校サッカー選手権では1年生から活躍。慶応義塾大卒業後、大手商社に就職。チリへ留学後、退社して順天堂大大学院に進み、2003年から仙台育英高で指導者へ。10年から仙台大で監督。現在は、チームの総監督のほか、仙台大のIR部長を務めている。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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