【ジャパンカップ】「ドウデュースには感銘を受けた」世界の伯楽も絶賛、ラスト有馬へ武豊騎手「勝って締めくくりたい」

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再び秋の府中で豪脚がさく裂! 日本の総大将ドウデュースと武豊騎手がジャパンカップを勝利 【photo by Kazuhiro Kuramoto】

 世界の強豪を日本のトップホースが迎え撃つ秋の大一番、第44回GIジャパンカップが11月24日(日)に東京競馬場2400m芝を舞台に行われ、武豊騎手が騎乗した1番人気ドウデュース(牡5=栗東・友道厩舎、父ハーツクライ)が優勝。道中最後方から直線大外一気の豪脚で差し切り、天皇賞・秋に続きGI連勝、通算5つ目のGIタイトルを手にした。良馬場の勝ちタイムは2分25秒5。

 ドウデュースは今回の勝利で通算16戦8勝、重賞は2021年朝日杯フューチュリティステークス、22年日本ダービー、23年京都記念、有馬記念、24年天皇賞・秋に続き6勝目。武豊騎手は1999年スペシャルウィーク、2006年ディープインパクト、10年ローズキングダム、16年キタサンブラックに続き、JC史上最多の5勝目。管理する友道康夫調教師は17年シュヴァルグラン以来の同レース2勝目となった。

ドウデュースは天皇賞・秋からGI連勝、通算5勝目となった 【photo by Kazuhiro Kuramoto】

 なお、クビ差の2着には坂井瑠星騎手騎乗の8番人気シンエンペラー(牡3=栗東・矢作厩舎)、ウィリアム・ビュイック騎手騎乗の7番人気ドゥレッツァ(牡4=美浦・尾関厩舎)が同着で入線。また、海外から参戦した6番人気ゴリアット(セン4=仏・F.グラファール厩舎)は6着、4番人気オーギュストロダン(牡4=愛・A.オブライエン厩舎)は8着、ファンタスティックムーン(牡4=独・S.シュタインベルク厩舎)は11着に敗れた。

「予定通り」の最後方、だが超スローで折り合いに苦労

逃げ馬不在の中、シンエンペラー(右)がレースを引っ張るも前半1000mが62秒2という超スローペースとなった 【photo by Kazuhiro Kuramoto】

 秋の府中で再びドウデュースが躍動した。2024年の東京競馬、最後のレースを締めくくるのにこれ以上はないというパフォーマンス。日本の総大将がその強さを世界に見せつけたのだ。

「ホッとしています。期待を背負っていたので、それに応えたい気持ちが強かったですから」

 武豊騎手が第一声でそう答えた。好スタートからこの日もあえてポジションを下げて、道中は天皇賞・秋よりも1つ後ろの最後方。

「ポジションはある程度と言いますか、予定通りでした。ただ、想定はしていたのですがペースがかなり遅かったので折り合い、抑えるのに苦労しましたね」

 ジョッキーが振り返った通り、これといった逃げ馬がいない中でまずはシンエンペラーがハナに立ち、前半の1000mはなんと62秒2。ここを過ぎたあたりから中団に控えていたドゥレッツァが先頭に立って後続を引っ張ったものの、それでも1ハロンのラップは12秒半ばとペースは一向に上がらない。そんな遅い流れの中でさすがの武豊騎手も行く気にあふれたドウデュースを抑えるのに苦労した。

「ハーフマイル(残り800m)からペースが上がればもっと待とうと思っていたのですが、なかなかペースが上がりませんでした。なので、少しずつ前との距離を詰める感じと言いますか、抑えている手綱を少し緩めるくらいで行きました」

4コーナーで加速「普通の馬なら最後はバテる」

4コーナーから直線入り口にかけてドウデュースは一気に加速、「一瞬にして先頭に立った」と武豊騎手 【photo by Kazuhiro Kuramoto】

 その「少し緩めた手綱」でドウデュースはジワジワと進出。そしてこのレースで最も凄みを感じた瞬間が、すぐ隣の内側にいたオーギュストロダンをはじめ大外から全馬を一飲みにした4コーナーから直線入り口にかけての加速だ。

「最後のコーナーを回る時の脚がすごかったですからね。一瞬にして先頭に立ちました。普通の馬だったら最後はバテてしまうのですが、この馬なら何とか持つんじゃないか、持ってくれと思って追っていました」

 そう、まさに一瞬の出来事。4コーナーに差し掛かる時にはまだほぼ最後方だったのにも関わらず、最後の直線残り400mを過ぎたあたりではもう先頭に立とうとしていた。この一連のシーンについて、自軍の最強馬オーギュストロダンが負かされたにも関わらずエイダン・オブライエン調教師は次のようにドウデュース、そして武豊騎手の手腕を絶賛している。

「オーギュストロダンの後ろから並んできた時、ドウデュースの走りにはすごく感銘を受けました。ユタカ騎手も素晴らしかったですね。スローペースでもリラックスして走っていましたし、非常にリズム良くコーナーを回ってオーギュストロダンを追い抜いて行きました。そこはユタカ騎手がすごく上手く乗っていたと思います。残念ながらオーギュストロダンはそこで追いつけませんでした。勝ち馬は本当に素晴らしかったですね」

今度は32秒7!「すごく強さが出たレース」

スタンドからの「ユタカ」コールに笑顔で答える武豊騎手 【photo by Kazuhiro Kuramoto】

 早めに動いた分、粘り腰を見せたシンエンペラー、ドゥレッツァと脚色が最後は同じになり、着差はタイム差なしのクビ。直線入り口の勢いを考えればちょっと物足りないかもしれない。それでもドウデュースがマークしたラスト3ハロンは天皇賞・秋の32秒5には及ばなかったものの、またしてもただ1頭、33秒台の壁を突破する32秒7の豪脚。何より武豊騎手がこの日の内容をひと言、「強い」と明言しているのだ。

「今日は2着の馬と着差こそ少なかったですけど、かなり中身は濃いレースでしたね。内容的にはすごく強さが出たレースだと思います」

 外国メディアが「武豊騎手のJC5勝の中でランクをつけるなら?」という質問にも「今日のところは今回のレースが1番と言いたいですね(笑)」と笑顔。陣営が繰り返し口にしている『叩き良化型』を改めて裏付けるように、極限とも思えた天皇賞・秋の激走を経てダメージを受けるどころか、ここに来てますます競走馬としての強さを身につけたのではないだろうか。

さあラスト有馬、勝てば史上3頭目の秋三冠

有終の美を目指して、最後の一戦となる年末グランプリ有馬記念へ 【photo by Kazuhiro Kuramoto】

「昨年の秋3戦も最後の有馬記念で勝ったように、この馬は使いつつ良くなってくる馬です。それで今年の天皇賞・秋は結構良い状態で出走できたので、まあ、これ以上の出来はないかなと見ていました。ですが、天皇賞後も馬がより一層良くなった感じで、天皇賞よりも良い状態でジャパンカップに臨むことができたと思います」

 そう明かしたのは友道調教師。デビューからここまでの3年、つぶさに状態を見てきたトレーナーの想像の上を行く進化をドウデュースは見せた。ラスト3戦、最後の集大成を生涯最高の姿で――まるでドウデュース自身がそれを分かっているようでもある。

 さあ、このまま無事であれば泣いても笑っても有終の一戦。1カ月後の年末グランプリ、有馬記念だ。今年秋シーズンの3戦で引退、そう伝えられた時から武豊騎手は「3つとも勝ちたい」と強い気持ちを持ち続けているという。

「有馬記念で終わりとなるのはとても寂しいですけど、1戦、1戦をすごく大切にしなきゃなと思って、噛みしめるように乗っています。でも、一番は勝つこと。有馬記念でまた勝って締めくくりたいなという気持ちは物凄く強いですね」

 天皇賞・秋、ジャパンカップ、有馬記念の秋三冠を達成なら2000年テイエムオペラオー、04年ゼンノロブロイに続く史上3頭目の快挙。千両役者の人馬が魅せる最後の花道はどのようなドラマが待っているのか。まずは今年も無事に中山2500m芝の舞台に帰ってくるその日を楽しみに待ちたい。

オーギュストロダン8着、A.オブライエン師「また挑戦したい」

オーギュストロダンの引退セレモニー、欧州生まれのディープインパクト最高傑作に多くのファンが別れを惜しんだ 【photo by Kazuhiro Kuramoto】

 結果は8着。期待されたレースの主役とはなれなかった。だが、2024年のジャパンカップを総括した時、ドウデュースと並ぶもう1頭の主役は間違いなくアイルランドからやってきたディープインパクト産駒、オーギュストロダンであったことで異論はないはずだ。

 英愛ダービー、米ブリーダーズカップ・ターフなど3カ国でGIを6勝。世界全体でも10数頭しかいないというディープインパクトのラストクロップの中から最高傑作と呼ばれる逸材が誕生したことがすでに奇跡。そんなオーギュストロダンの参戦はジャパンカップを、そして日本の競馬ファンを大いに熱くさせた

「やはりオーギュストロダンにとってはペースがスローでした。もう少し速いレースの方が良かったですね」

 世界トップの名トレーナーであるエイダン・オブライエン調教師は極端なスローペースとなってしまった展開を敗因に挙げた。印象的だったのは検量室前の枠場に引き上げてきたドウデュースと武豊騎手の様子をじっと見つめていたこと。その表情には笑みもたたえており、勝者に対するリスペクトであふれているようにも見えた。そうした思いが前述したドウデュースと武豊騎手への賛辞にもつながったのだろう。

A.オブライエン調教師は「またジャパンカップに挑戦したい」と語った 【photo by Kazuhiro Kuramoto】

「私にとっても、オーギュストロダンにとっても夢でした」という、父の故郷・日本でのラストランを終え、チーム・オーギュストロダンの戦いは終わった。だが、A.オブライエン陣営の世界を股にかけた挑戦はまだまだ終わらない。

「もちろん、またぜひジャパンカップに挑戦したいと思います。日本のレースは今、非常に素晴らしい状況ですし、馬も、トレーニングの方法も素晴らしい。そうした中でまた日本の馬たちと一緒に走りたいですね。また挑戦したいと思っています」

 レース後の日が暮れた17時半、海外馬では初となる引退セレモニーが実施され、約1万5000人ものファンがオーギュストロダンを見送った。その様子をスタンドから眺めつつ思ったのは、もしA.オブライエン陣営がオーギュストロダン産駒で父をも超えるスーパーホースでリベンジに来たのなら……そんな未来が待ち遠しい。(取材・文:森永淳洋)
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