F1 2022年シーズン日本GP特集

フェルスタッペンの首位独走で迎えるF1日本GP 世界王者4名の鈴鹿を占う

柴田久仁夫(auto sport)

2019年に鈴鹿で行なわれたF1日本GPは、1位バルテリ・ボッタス、2位セバスチャン・ベッテル、3位ルイス・ハミルトンという結果だった 【Red Bull Content Pool】

 10年に一度と言われる、大きな車体規約変更が行なわれた今季のF1。オフシーズンテストからずば抜けた戦闘力を発揮したこともあって、ついにフェラーリが悲願のタイトル奪還かと思われた。

 実際シーズン序盤は、シャルル・ルクレールが開幕3戦で2勝2位1回と、昨年の新チャンピオン、マックス・フェルスタッペンを大きくリードした。しかしその後は相次ぐマシントラブル、ドライバーのミス、そして何より不可解なチーム戦略で、徐々に勝ち星から見放されていった。

 一方、2014年から8連覇を果たしていた絶対王者メルセデスは、高速走行時の激しい縦揺れ現象に手こずり、レッドブル、フェラーリの2強から大きく引き離されていった。それでもシーズン中盤以降はダブル表彰台を獲得するなど、今季初勝利まであとひと息というところまで復調している。

 そんななかレッドブルとフェルスタッペンは、盤石の強さを発揮。とくにシーズン後半はイタリアGPまでに5連勝を挙げ、2位ルクレールに116ポイント差をつけて、連覇秒読みの段階だ。

 そんな状況で、10月にいよいよ3年ぶりの日本GPが開催される。今回は4人の現役世界チャンピオンに焦点を当てて、鈴鹿でのこれまでの活躍、そして今年はどんな戦いが繰り広げられるのか、展望してみた。

マックス・フェルスタッペン 6度目の鈴鹿で初勝利を狙う

2019年の決勝ではスタートで順位を3番手まで上げたものの、接触のダメージにより悔しいリタイアとなった 【Red Bull Content Pool】

 実はフェルスタッペンの記念すべきF1デビューは、鈴鹿サーキットだった。レッドブルジュニアチーム時代の2014年、日本GPのフリー走行1回目にトロロッソから出走したのだ。フェルスタッペンはその3日前に、17歳になったばかり。史上最年少でのF1デビューだった。エンジントラブルに見舞われるまで22周を走り、チームメイトのダニール・クビアトからコンマ4秒落ちの12番手につけた。

 セッション後、僕は父親のヨスに息子の様子を聞いてみた。鈴鹿はかなり難易度が高い。そこでのF1デビューは、難しかったのではないかと。しかしマックスは、まったく緊張した様子ではなかったという。

「いつもとまったく変わらなかった。タイム的にも充分満足できるものだったが、本人は『全然攻めてなかった』と言っていたね。我が子ながら、たいしたものだ」。

 翌年以降のフェルスタッペンの大活躍は、ご存じのとおりだ。日本GPもこれまで5戦出場し、スタート直後のシャルル・ルクレールとの接触事故でリタイアした2019年以外は全戦入賞。レッドブル移籍後の2016年から2位、2位、3位とコンスタントに表彰台に上がっている。ただしここまで未勝利。ホンダと組んでいたこの2年は開催中止だったこともあって、鈴鹿を制したいという思いはことさら強いはず。RB18のパッケージは、鈴鹿でも充分な速さを発揮することだろう。

ルイス・ハミルトン 想定外に強い、鈴鹿4勝の実力

ハミルトンは2014年以降、鈴鹿の表彰台に乗り続けており、19年は鈴鹿の地で自身とチームのWタイトル獲得を成し遂げている 【MERCEDES】

 ハミルトンはこれまで鈴鹿で4勝を挙げており、現役ドライバーではセバスチャン・ベッテルと並ぶ最多勝者だ(歴代1位はミハエル・シューマッハの6勝)。なかでも本人にとって最も思い出深いのは、敬愛するアイルトン・セナに並ぶキャリア41勝目を挙げた、2015年の勝利ではないだろうか。

 予選では0.076秒の僅差でポールポジションをニコ・ロズベルグに譲ったものの、スタート加速で1コーナーのインに並び、2コーナー立ち上がりで抜き去ると、独走でチェッカーを受けたのだった。

 では3年ぶりの鈴鹿で、ハミルトンは5回目の勝利を果たすことはできるだろうか。常識的に考えればW13のパッケージは、高速パワーサーキットの鈴鹿では苦戦することになりそうだ。ただし日本GPは比較的、波乱の展開となることも少なくない。

 これまで何度も台風に見舞われたし、パワーユニット由来のトラブルも少なくない。タイヤへの負荷も高いことから、ピット戦略での逆転という展開もあった。たとえレッドブルに実力では勝てなくても、彼らに何かあった時に幸運を拾えるだけの実力を、ハミルトンが備えていることは間違いない。

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