F1 2022年シーズン日本GP特集

フェルスタッペンの首位独走で迎えるF1日本GP 世界王者4名の鈴鹿を占う

柴田久仁夫(auto sport)

フェルナンド・アロンソ 鈴鹿での経験と読みが光る

アロンソが鈴鹿をF1で走るのは今年で18回目。他のドライバーとは違う、アロンソ独自の走行ラインでオーバーテイクを仕かけるテクニックが見られるか!? 【Alpine】

 ハミルトンとは対照的に、アロンソは鈴鹿で1回しか勝てていない。ルノー時代の2006年、ミハエル・シューマッハとの激烈なタイトル争いを制した、貴重な1勝だった。
 その後のアロンソはなぜか鈴鹿での勝ち運に見放され、フェラーリ時代の二度の表彰台はまだしも、マクラーレンでの4年間は入賞すらできていない。

 日本のF1ファンに悪い意味で強烈な印象を残したのが、ハミルトンが逆転勝ちしたのと同じ2015年の日本GPだった。アロンソはストレートで次々に抜かれて行くあまりの遅さに、「GP2! GP2エンジンだ!」と無線で叫んだのだ。

 確かに当時のホンダ製パワーユニットは、ICE(エンジン本体)のパワーはまだしも、エネルギー回生性能はからきしで、ストレートですぐにデプロイ切れを起こした。しかしマクラーレンの空力効率も、お世辞にも良いとは言えなかった。ストレートで遅いのは車体のドラッグが大きいことも一因で、ルノーと組んだ2018年の鈴鹿でも、アロンソは14位が精一杯だった。

 当時のマクラーレンはエリック・ブーリエ以下、ホンダを批判することで保身に走る上層部が多く、アロンソの歯に衣着せぬ物言いが、彼らに利用された面もあった。アロンソ自身、「あれは言うべきではなかった」と、最近コメントしている。

 2019年から2年間F1から離れていたアロンソにとって、今年の鈴鹿は4年ぶりとなる。41歳になったアロンソの、たとえばオランダGPで見せたタイヤ性能の深読みは、若手ドライバーにはとても真似のできないものだ。鈴鹿でもきっと、いぶし銀の走りを見せてくれるに違いない。

セバスチャン・ベッテル 大好きな鈴鹿でラストラン

2019年はPPから2位表彰台と、鈴鹿への印象も相性もいいベッテル。F1での走り納めとなる今年、どんな表情を見せてくれるだろうか 【ASTON MARTIN】

 今季限りのF1現役引退を表明したベッテルにとって、これが最後の鈴鹿となる。これまで多くのF1ドライバーたちが、鈴鹿サーキットを称賛してきた。しかし「神の作りしコース」とまで讃えたのは、ベッテルだけだった。

 独特の8の字レイアウト、高速S字やデグナー、スプーン、130Rなど、ほとんどのコーナーがとびきりの難易度の高さを誇り、そこに予測不能の天候が加わる。そんな鈴鹿を、ベッテルはこよなく愛した。F1マシンで疾走するだけでなく、ベッテルは日没後のコースをランニングすることも大好きだった。僕も一度いっしょになったことがあるが、じつに楽しそうに、そして愛おしそうに走っていた。

 ベッテルの鈴鹿の勝利は、2009、2010、2012、2013年と、すべてレッドブル時代のものだ。そのうち2009年はブラウンGPが大躍進したシーズンで、チャンピオン候補だったキミ・ライコネン、ルイス・ハミルトンらが苦戦するなか、ベッテルだけはジェンソン・バトンと張り合い、とくに終盤の日本GPでは鈴鹿初出走ながら、ポール・トゥ・ウインの圧巻の初勝利を飾ったのだった。

 今季のベッテルはアストンマーチンの戦闘力のなさもあって、苦しい戦いが続いている。夏休み直前に引退発表してからは、燃え尽きてしまったかのように覇気が感じられない。しかしあれほど愛した鈴鹿の、多くのベッテルファンの前でなら、往年の走りを復活させてくれることだろう。もし鈴鹿に行けない人は、DAZNを通じてでも、ぜひベッテルの“最後の鈴鹿”を見届けてほしい。

(構成:オートスポーツ編集部)

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