Bリーグ2022-23開幕特集

「格差」の縮まった混戦のB2 “黒船”長崎ヴェルカと昨季のプレーオフ進出チームが昇格争いの軸に

大島和人

長崎を迎え撃つ佐賀はファイパブ月瑠(左)、ガルシア(中央)らが健在だ 【©B.LEAGUE】

 何が起こるか分からない混戦を楽しみたければ、2022-23シーズンのB2はオススメだ。過去6シーズンと比較しても、明らかに勢力図が変わっているからだ。

 今まではB1に向けた“本気の用意”ができているクラブが限られていて、順当な昇格が多かった。しかしコロナ禍のB1が降格を停止して24チームに拡大した経緯もあり、“超B2級”の猛者たちは一足早く上のカテゴリーに落ち着いている。

 また直近の2シーズンはコロナ禍と降格の停止により人件費を抑制したクラブが多く、強豪と「無理をしないチーム」の二極分化が起こっていた。降格の脅威がある今季は、改めて強化に本腰を入れはじめたクラブが目につく。加えて新たにB2へ参入した長崎、A千葉も優勝争いに絡む地力がある。つまり上下の「格差」が縮まった。

 今季は東西7チームずつの、14チームで行われる。両地区のトップ3と、ワイルドカード2チームの計8チームがプレーオフに進出。B1ライセンスの交付という前提はあるが、上位2クラブがB1へ昇格する。
■東地区
青森ワッツ
山形ワイヴァンズ
福島ファイヤーボンズ
越谷アルファーズ
アルティーリ千葉
アースフレンズ東京Z
西宮ストークス

■西地区
バンビシャス奈良
香川ファイブアローズ
愛媛オレンジバイキングス
ライジングゼファー福岡
佐賀バルーナーズ
長崎ヴェルカ
熊本ヴォルターズ

 東西の振り分けは「都道府県コード」に準じて行われている。これにより西宮(兵庫県)が東、奈良が西という“ねじれ”が発生した。

 昨シーズンのB2プレーオフを経験しているクラブは福島、越谷、西宮、香川、佐賀、熊本の6つ。いずれも2022-23シーズンのクラブライセンスは「B1」で、昇格候補に入る。

東地区の優勝候補は…

B1広島から福島に移籍したエチェニケ。圧倒的なゴール下の強さを見せつけるか 【©B.LEAGUE】

 新たに佐野公俊ヘッドコーチ(HC)が就任した福島は、特に強烈な補強を見せた。グレゴリー・エチェニケは島根で1季、広島で3季プレーしたベネズエラ出身のセンター。208センチ・120キロの体格を生かしたパワフルなプレーがおなじみだ。現代バスケでは珍しい純インサイドだが、ゴール下の強さはB1でも3本指に入るレベル。2019-20シーズンにはB2 MVPも獲得している。

 ジョシュ・ハレルソンは元NBAプレーヤーだが、6シーズンB1に在籍していた33歳。B1のブロック王、リバウンド王に輝いた実績を持つ大物だ。彼も208センチ・125キロの巨体で、加えて3ポイントシュートが得意。典型的な“ストレッチ4”タイプで、味方にスクリーンをかけた後に外へ開く「ポップ」のプレーがいい。

 二人の強みを生かすためには、時間をかけてじっくり攻めるスタイルが有効だろう。「スモール」「ポジションレス」に舵(かじ)を切るチームが多い中で、その逆をいく福島の編成は興味深い。

 加えてアジア特別枠で韓国人PGのチョン・ギボムも加わった。マーフィー兄弟の弟アレックスはレバンガ北海道に移籍をしたものの、エリック・マーフィーも含めた外国籍選手の陣容はB2でもトップだ。混戦は大前提で、シーズン中には浮き沈みもあるはずだが、東地区の優勝候補を強いて1つ選べと言われたら福島だ。

 越谷は昨シーズンまでの主力を残しつつ、プラスαの補強をしている。青森で大活躍を見せていた188センチの24歳の大型PG駒沢颯は特に楽しみな人材だ。またSF菊地祥平は強豪を渡り歩いてきた38歳の大ベテランで、周囲のお手本になれる貴重な存在。いい意味で「相手から嫌がられる」プレーができるタイプでもある。

 「コート外」の充実ぶりも越谷の特徴だ。日本バスケのレジェンドである桜木ジェイアールがスーパーバイジングコーチとして指揮を執り、今季は宇都宮をB1制覇に導いた安齋竜三氏がアドバイザーとして加わった。

 西宮は本来ならば昨シーズンのうちに昇格を勝ち取らなければいけなかったクラブ。日本最高レベルの新アリーナ計画が進行する中で、肝心のチームが“B2の強豪”という立ち位置を脱しきれていない。

 今季は川村卓也、今野翔太の両ベテランがチームを去ったものの、高齢化傾向は続いている。クラブを草創期から支えて2018-19シーズンのB1も経験した松崎賢人、谷直樹、道原紀晃の「兵庫出身トリオ」や、日本人ビッグマンの中西良太はいずれも33〜34歳。外国籍選手の適応と綱井勇介、川島聖那といった新加入の若手のステップアップがないと、昨季以上の結果は難しい。

 ただ森山知広・新HCは福島で素晴らしい手腕を見せていた指揮官。プレシーズンの取材時には「いい意味でピック&ロールにあまり頼らないスタイルで、その前にズレをどう作れるのか(にこだわって)、温故知新みたいな形で発想を持ってきたい」とチームの方向性を語っていた。試行錯誤はあるはずだが、ユニークな答えを出してくれるだろう。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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