レシーブ改善に暗中模索の桃田賢斗 復活のきっかけつかめるか

平野貴也

復活を期す桃田。以前のような強さを取り戻せるか 【Photo by Wong Fok Loy/SOPA Images/LightRocket via Getty Images】

 日本のエースは、暗闇の中で復活の兆しを探している。8月22日から東京体育館で行われるバドミントン世界選手権に出場する男子シングルスの桃田賢斗(NTT東日本)は「コンディションは、感覚的にも上がってきている。東京で開催される世界バドミントンは、すごくチャンスだと思うので、結果をしっかり求めてプレーしていきたい」と意気込みを語った。2019年に主要国際大会で11勝を挙げてギネス記録に認定されるなど、3年以上も世界ランク1位に君臨して圧倒的な強さを見せていた桃田だが、20年1月にマレーシアで交通事故に遭って以降、以前のような強さを見せられず苦しんでいる。上位まで進めない大会や、試合の流れをつかめない完敗が増えており、今年は、まだ優勝がない。

以前との明らかな違い、得意のレシーブ通じずノータッチ

 以前との大きな違いは、レシーブ場面だ。日本代表を率いる朴柱奉ヘッドコーチは「ノータッチのディフェンスが多い。昔は、ディフェンスができていた。相手は昔よりレベルアップしているが、桃田選手は逆に事故の後は(以前の力を)キープしているというより下がりました。だから、差があります」と事故後、急激に成績が落ちた状況に対する見解を述べた。

 レシーブは、桃田の大きな武器だった。相手に打たせた強打をレシーブでコントロール。ネット前へ低く落とし、シャトルを下から拾わせる。そうしてラリーの主導権を握ることで、相手はうかつに強打を打てず、ラリー勝負で精度に優って優位に立つのが、19年頃の展開だった。ところが、復帰後の桃田は「本当にスマッシュを決められる回数が増えたなと感じていた」と認めるように、カウンターレシーブを狙うどころか、相手の強打をほとんど返せていない。

目の再検査を要望、ビジョントレーニングを開始

 問題は、レシーブ不調の原因が明確ではないことだ。桃田は、練習や試合の中でシャトルとの距離感やタイミングが合わないと感じ、東南アジアでの3連戦を控えていた6月の日本代表合宿中、自らの要望で右目の再検査を行ったが、異常は見つからなかった。以降は、動体視力を向上させるため、動画の中で目標物を目で追い続けたり、自分の指を動かしながら視線を合わせて眼球を動かすビジョントレーニングを開始。「続ければ、少しずつ良くなるから地道に続けてくださいと(病院で)言われた」という新たな試みに取り組んでいる。

トレーナーを変更、「動きのロスが多いと感じていた」

 また、最近になって新しいトレーナーを招へいし、身体の動かし方を変えていることも明かした。桃田は「身体をうまく使えていないという感覚もあった。すべての動作、球に対する動き方のロスが多いなとすごく感じていた。(手術やブランクなどの要素の)どれの影響かは分からないですけど、動きの無駄を感じていた」と話した。

 ただし、こちらもまだ明確な手ごたえがあるわけではない。感覚や身体の反応については、言い訳にしないためか、1カ月ほど前から改善の手応えがあり「今は、もうまったく、そういう不安要素がない」と言い切った場面があったが、一方で「まだ、本番の試合は、そこ(の動かし方)からできていないので、それが正解かは分からない」とも話した。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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