レシーブ改善に暗中模索の桃田賢斗 復活のきっかけつかめるか

平野貴也

男子シングルスに変化、攻撃スタイルが主流へ

オンライン会見では「覚悟」をテーマに掲げた桃田 【写真提供:テレビ朝日】

 果たして、桃田が得意のレシーブを生かす試合ができない原因は、動体視力なのか、身体の操作方法なのか。当然ながら、桃田は自身のプレーの改善に努めているわけだが、外的要因の可能性もあるのが、厄介だ。東京五輪以降、男子シングルスは明らかに攻撃スタイルの波が押し寄せている。日本代表の朴ヘッドコーチは、海外選手の戦術の変化と、桃田のプレースタイルについて、以下のように話している。

「変わりましたね。五輪後は(活躍する選手の多くが)パワー、スピード系。桃田選手は、スピードでフォローができない。桃田選手は、オールラウンドプレーヤーだから、ラリーができないとダメ。後半勝負のスタイル。でも、後半までいかない」

 以前の攻撃的スタイルと言えば、高い位置からパワーショットを打ち込んで、甘い返球に対して距離を詰めていくものだったが、現在は、後ろに下がらず、シャトルが低い位置に落ちる前に素早く返球し、相手の準備時間を奪うスタイルで相手を崩してから強打でフィニッシュという形も増えている。前に落とせばスピード勝負、後ろに上げればパワー勝負。展開力で勝負する、桃田のようなレシーブ主体の選手は、主導権を奪いにくくなっている。

「まだ、できると思っている」

 言われるまでもなく、桃田も世界のスタイルが変わってきていることには、気付いている。レシーブができれば、それだけで勝てるようになるかは、分からない。しかし、これで対抗できる、勝負ができるという感覚がなければ、立ち向かうこともままならない。今はとにかく頼れる武器がほしい一心なのだろう。大会直前の日本代表合宿を前にして8月6日に行われたオンラインインタビューに応えた桃田の言葉には、復活のきっかけをつかもうと苦心している様子がにじみ出ていた。

「世界バドミントンというピンポイントで変われるかは分からないですけど、少しでも早く、皆さんが期待してくれる結果を出したいと思って、毎日、練習に取り組んでいるつもりです。自分でもまだできると思っているので、その気持ちは折れないように頑張っていきたいと思います」

 世界選手権は、第2シード。解決の糸口が見えない不安を抱えているにも関わらず、自国開催で優勝が期待されるプレッシャーを背負わなければならない。苦しい展開になれば、まだ復活は遠いのかという悲観も生まれるだろう。しかし、一本でも多く食らいつき、自信を持てるプレーを取り戻すきっかけをつかむことが何よりも大事だ。これまで東京五輪をはじめ国内での試合は無観客が多く、世界選手権は、桃田にとって2019年12月のS/Jリーグ最終戦以来、約2年8カ月ぶりの国内有観客公式戦となる。暗中模索を続ける日本のエースは、復活を後押しするファンの前で、立ちはだかる扉の鍵をつかみに行く。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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