連載: イビチャ・オシムが伝えたかったこと

巻誠一郎がオシムさんに聞きたかったこと「いまも僕らは宿題を解き続けている」

塩畑大輔
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ドイツW杯終了後、日本代表監督に就任したオシムさんの下でも重用された巻氏。ピッチ上でオシム・イズムを体現する1人だった 【写真は共同】

 元日本代表FWの巻誠一郎氏が語る、イビチャ・オシムさんとの思い出。インタビュー後編のテーマは、現役時代に学んだオシムさんの教えが、引退後の人生にどのような影響を与えているか。当時の練習内容を書き留めたノートを、「オシムさんが残してくれた問題集」と話す巻氏。天に召されてもなお、「考え続けろ」と投げかける恩師に、彼が1つだけ答えを聞きたかったこととは――。
 5月、元日本代表監督のイビチャ・オシムさんが亡くなられた。

 選手、OB、サッカー関係者、そしてファン。多くの人々がオシムさんとの別れを悲しみ、ジェフユナイテッド千葉や日本代表の監督を務めていた当時のことを懐かしんだ。

 そんな中でも、巻誠一郎さんは足を止めることなく、普段通りの活動を続けている。

 九州での情報番組へのレギュラー出演。サッカー協会の要職。地元熊本でのスクール事業。全国放送のバラエティ番組へのゲスト出演……。悲しみを感じさせないほど、いつも以上に精力的に日本中を飛び回っている。

「どんな時でも考えろ。走れ。オシムさんなら、そうおっしゃるでしょうから」

 ビジネスバックにはいつも、ジェフ時代の練習内容を書き留めたノートが入っている。それも頼りに、当時のことを紐解きながら、巻さんが「オシムの教え」について語ってくれた。

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プレーするうえでの指標となった言葉

――2006年ドイツ・ワールドカップ(W杯)のメンバーに巻さんが選出された際、オシムさんが「巻には言うことはない。巻は(ジネディーヌ・)ジダンになれないが、ジダンにはないものを持っている」と発言しました。どう思いました?

 当時の日本代表には華麗な選手がたくさんいて、僕だけ異質だったというか。全然次元が違ったので。代表に入って自分なりにキレイに、丁寧にプレーしようという思いがあったんですけど、あのひと言で「自分は自分でいいんだな」と。ジェフで培ってきたものを表現すればいいんだな、という覚悟が決まりました。あの言葉は引退するまで、僕のプレーする上での指標、勇気になりましたね。オシムさんの言葉はもちろん僕に対してもメッセージになりましたし、周りの人たちにも、です。僕を守るという意味もあったのかな、と感じています。

――ドイツW杯終了後、そのオシムさんが日本代表監督に就任しました。

 本当は毎日練習をしてもらいたいわけですよ(笑)。なんて言うんですかね、あの時は「もっと成長できる」と思っていましたし、もっとたくさんのことを学びたいと思っていました。代表にいながら自分に全然満足できていなかったんです、ずっと。代表に入ってからも、たぶん誰より怒られていましたし(笑)。なので、もっとたくさん学びたかったというのが正直なところですね。ジェフでは実質、試合に出始めてから1年半しかオシムさんから学んでいないので。よりサッカーを深く学びたかったですね。
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