人気解説者が語る全米オープンの見どころ 松山英樹向きのコース。優勝候補の1人だ
今回のコースは松山英樹のプレースタイルとマッチするとタケ小山氏は言う。優勝の可能性は十分ある 【Photo by Ross Kinnaird/Getty Images】
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34年ぶりに開催の超名門コースの雰囲気を楽しんでほしい
今回のコースはアメリカ北東部マサチューセッツ州のブルックリンにある『ザ・カントリー・クラブ』です。140年の歴史を誇る全米で最も古いカントリー・クラブの1つ。超がつく名門コースです。
以前、全米オープンは名門コースでしか開催されていませんでしたが、ここ10数年で様変わりしました。というのは、主催するUSGA(全米ゴルフ協会)が一般の方がプレーできるパブリックコースやリゾートコースを開催コースのローテーションに組み込んだからです。そこには万人にゴルフを知ってもらいたい、ゴルフの底辺を広げたいという意図があるのですが、今回は久しぶりに伝統と格式のアッパークラスなコースでの開催になります。
狭いフェアウェイ、厄介なラフ、トリッキーなグリーンといった全米オープンらしい姿がそこにあリます。みなさんにはアメリカの名門コースとはどんなものなのか、ぜひその雰囲気を観て楽しんでいただきたいですね。
――全米オープンがザ・カントリー・クラブで開催されるのは34年ぶりになります。
ええ、1988年にカーティス・ストレンジが大会初優勝を飾って以来の開催です。ストレンジは翌年連覇を達成し、アメリカンヒーローになったのですが、その足がかりとなったのがここでの優勝だったのです。
そのあと99年に欧米チーム対抗戦ライダーカップが行われ、2013年には全米アマチュア選手権が開催されていますが、ここではなぜか勝敗がもつれることが多いんです。ストレンジが勝った88年もプレーオフでの決着でしたし、さかのぼって1913年もプレーオフ。63年は3人によるプレーオフでした。
鍵になるのは終盤の17番ホール。リードしている選手が突然崩れプレーオフにもつれ込んだりするのです。17番はこれといって難しくないパー4。2打目はショートアイアンで狙えます。それなのになぜか想定外のことが起きるのです。いずれにせよ、優勝スコアが2桁アンダーになるような展開ではなく、接戦になることは確かでしょうし、今回もここ(17番)で何かドラマが起こるかもしれません。
パワーより正確性が鍵。モリカワやスピースなどが有利か
コリン・モリカワは有力な優勝候補。20年の全米プロ、昨年の全英オープンに続く3度目のメジャー制覇はなるか 【Photo by Rob Carr/Getty Images】
今回は全長7263ヤード、パー70の設定で今時の選手にとっては決して長くありません。その分ラフを伸ばし、全米オープンらしい厳しいセッティングに仕上げるはずです。グリーンも改造を経て以前より少し大きくなりましたが、それでも比較的小さい。
ここ2年、全米オープンではブライソン・デシャンボーやジョン・ラームといった圧倒的な飛距離が武器のパワーゲームを得意とする選手がタイトルを獲得してきました。2020年のデシャンボーは力でコース(ニューヨーク州のウィングドフット・ゴルフクラブ)をねじ伏せ、「ゴルフが違うゲームになってしまった」と評されたものです。
しかし今回は、パワーより正確性が勝負の鍵を握ります。そういった意味では、ショットの精度が高く安定感のあるコリン・モリカワやジョーダン・スピースなんかが有利ではないでしょうか。13年にここで開催された全米アマで優勝しているマシュー・フィッツパトリックにもチャンスがあるかもしれません。彼はイングランドの選手でまだPGAツアーでの優勝はありませんが、実力的にはいつ勝ってもおかしくありません。
スコアの伸ばし合いではなく僅差の勝負になるので、メンタルをどうコントロールするかも重要です。とはいっても、パワーと小技の両方を併せ持つラームの連覇もないわけではありません。
――ここのところメジャーで毎回優勝争いをしているウィル・ザラトリスはどうでしょう?
いいかもしれませんね。デビュー2年目ですが、これまでに出場した8回のメジャーでトップ10入りが5回。昨年のマスターズで松山英樹選手に1打差の2位に入っていますが、今年もマスターズ6位、全米プロで2位と優勝まであと一歩と迫っています。2つのメジャーで連続トップ10入りは、ローリー・マキロイ(マスターズ2位、全米プロ8位)、ジャスティン・トーマス(マスターズ8位、全米プロ優勝)と彼の3人だけ。今回もリーダーボードを賑わすかもしれません。