Bリーグ月間MVP特集

月間MVP受賞の千葉・富樫勇樹 CS敗退も東地区優勝の原動力に

大島和人

4月・5月の「月間MVP」を受賞した千葉ジェッツの富樫勇樹。得点、アシストでチームに貢献した 【(C)B.LEAGUE】

 Bリーグは月間MVPに相当する「B.LEAGUE Monthly MVP by 日本郵便」を、昨シーズンからファン投票で選んでいる。2021-22シーズンの大詰めとなる4月・5月のMVPには、千葉ジェッツの富樫勇樹選手が選出された。千葉は試合中止の相次ぐコロナ禍の難しいシーズンを35勝10敗で乗り切り、東地区首位でチャンピオンシップ(CS)出場を果たした。4月・5月はCSのホーム開催権を得るためにも負けられない試合が続いた中で、富樫は10勝3敗という好成績に貢献し、個人でも1試合平均13.2得点6.2アシストを記録。ポイントガードとしてしっかりと役割を果たした。
 
 ただし、連覇を懸けて臨んだCSはクォーターファイナルで宇都宮ブレックスに敗れ、彼は例年より早いタイミングでオフに入っている。富樫選手と千葉にとっては達成感と悔しさの相半ばするシーズンとなっただろう。今回はそんな富樫選手が4月・5月の活躍に加えて、コロナ禍のシーズンに関する振り返り、そして「夢のアリーナ」への期待など、率直な考えを語ってくれた。

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MVP受賞に驚き「これって辞退できるの?」

――千葉ジェッツは4月、5月でレギュラーシーズンを合計13試合戦っています。日程の振替もあり、4月20日から5月8日にかけて9試合という強行日程でした。そんな終盤戦を振り返っていかがですか?

 いつ中止になるかわからない状況で、実際に中止になった試合が多かったわけですが、チームはまず東地区1位を目指してやっていました。昨シーズンもそういったスケジュールで連勝してCSに入っていったので、連戦はそこまで気にならなかったです。ただ、疲労度などいろいろなものを含めると大変なスケジュールでした。強豪チームとのアウェー戦も続いて、選手にとって簡単なものではなかったです。

――そういう難しい状況、対戦相手にもかかわらず富樫選手はファン投票で月間MVPに選出されました。その感想はいかがですか?

 正直に言うと、MVPに値するプレーをした記憶はありません。最初に本気半分・冗談半分で「これって辞退できるの?」という話をしたくらいです。他の候補はセバス(セバスチャン・サイズ/アルバルク東京)と(ペリン)ビュフォード(島根スサノオマジック)選手ですよね? その2人は数字的にもインパクト的にも良かったと思います。でも投票してくれたたくさんの方がいての受賞なので、そこは素直にうれしさがあります。

――ポイントガードはチームの結果で評価されますし、富樫選手のスタッツも素晴らしかったと思います。でもご自身としては「満足しているわけではない」という感じですか?
 
 月間MVPの3人のうちの1人に入るのは、自分の中でもシーズンを通して一番いい月だったり、チームが全勝していたり、そういう時なのかな……と思っていました。

――4月、5月の試合で印象に残っているのはどの試合ですか?

 終盤の試合ですね。宇都宮(ブレックス)に勝った試合と、サンロッカーズ渋谷との最終節。SR渋谷戦はどちらが勝ってもおかしくない内容で、SR渋谷もワイルドカードでのCS進出をかけてプレーしていました。2試合を勝ち切れたことが、チームにとってすごい自信にはなっていたと思います。

――東地区1位で臨んだCSは、クォーターファイナルで宇都宮に連敗してしまいました。富樫選手から見て、千葉が力を出しきれなかった理由は何ですか?

 目に見えるのものではないですけど、15試合が中止になって、他のチームとの10試合前後の差が出たことです。そんな悪いCSへの入り方ではないと感じていたんですけれど、その差が出たのかなと思います。

 毎年思うんですけど、開幕の時よりはシーズンが終わる時のほうがいいチーム。特に昨シーズンはCSのあたりで本当に急にチームが成長して大一番に臨めました。中止になった15試合がチーム作りに与えた影響もありますし、濃厚接触などで練習さえできない期間がありました。そもそもの練習時間と試合数で、他チームと差が出た。年間をとおしてこれだけ違ってくると、(シーズン中の成長度も)変わってきます。

夢のアリーナ誕生に期待

シーズンを終え、ファン・ブースターへの感謝を口にした 【バスケットボールキング編集部】

――千葉がクォーターファイナルでシーズンを終えるのは2016-17シーズン以来ですが、オフが早く始まって他のチームを見る感覚はどうですか?

 沖縄では現地で1試合見たり、ファイナルの1戦目を解説として行かせていただいたり、自分がプレーせずに会場でバスケットボールの試合を見るのはまずないことです。新鮮で楽しめています。解説もさせてもらって、どうだったかわからないですけど、難しいですね(笑)

――沖縄アリーナの印象はどうでしたか?

 琉球(ゴールデンキングス)の選手以外では多分、自分が沖縄アリーナで一番試合をしています。日本代表でもプレーしましたから、そこでプレーし慣れているし、居心地のいい部分もあります。

――千葉も新しいアリーナが建設中です。そういう「夢のアリーナ」でプレーできることはモチベーションになりますか?

 それはやっぱり違うと思います。沖縄アリーナの会場に入った瞬間は、試合内容と関係なく、その光景だけでウキウキする気分になります。千葉の新アリーナも楽しみですね。

――ジェッツのファン・ブースターへのメッセージをお願いします。

 この長いシーズンを支えてもらった結果が東地区優勝です。CSはホームで連敗というかなり悔しい結果になってしまいました。2017-18シーズンから3大会連続(※2019-20シーズンは新型コロナウイルス感染拡大のため中止)でファイナルに出場していましたが、今シーズンはシーズンが早く終わってしまい、ファン・ブースターの皆さんの期待に応えられませんでした。でもこのチームでできる最大限のことはできたかなと思っています。ファン・ブースターの皆さんの1年間の変わらないサポートには、本当に感謝しています。

――最後に日本のバスケットボールファンに対して一言お願いします。

 沖縄アリーナの試合を外から観て、プレーしているのと感覚が全く違って、ああいうアリーナが日本にもっと多くできたら、日本の競技レベルも確実に上がるなと思いました。琉球の今シーズンの強さについても、雰囲気を見て納得しました。アリーナ計画はいくつも発表されていますし、今後のバスケット界はすごく楽しみです。皆さんにもっと喜んでもらえる試合ができると感じますし、日本代表も含めて期待してもらえたらなと思います。
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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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