岡田武史×島田慎二 Bリーグ構造改革のカギは「岡田さんしかいない」

ミムラユウスケ

島田慎二チェアマンとBリーグの理事に就任した岡田武史理事の対談が実現した 【スポーツナビ】

 5月2日に『最強のスポーツクラブ経営バイブル』(集英社)を上梓したBリーグの島田慎二チェアマン。この本は、あらゆるスポーツクラブにかかわる経営者、スポンサー、ファンがスポーツクラブのあり方についての教科書ともいえる一冊だ。具体的な事例の多くは、現在のBリーグのクラブが対象となっており、バスケファンにとっても魅力のあるエピソードが満載だ。

 出版のタイミングで貴重な対談が実現した。島田チェアマンたっての希望で、昨年にBリーグの理事に就任した岡田武史理事を招き、お二人にスポーツクラブの持つポテンシャルと可能性、Bリーグの未来について語ってもらった。

“2026年”へ向けBリーグ理事に就任した岡田

ーーまず、日本サッカー史を語る上で欠かせない存在である岡田さんが、Bリーグの理事を引き受けようと思った理由をうかがえますか?

岡田 大きかったのは、島田さんから直接電話をいただき、その熱意に触れたことです。その上で引き受けさせてもらった理由の一つが、FC今治(*岡田氏が代表取締役社長を務めるJ3のクラブ)で僕らが目指しているのは、サッカーだけではなく、様々なスポーツを通じて社会を変えていくことだからです。

 もう一つの理由は、Jリーグも30年目を迎えて、マンネリ化している部分や設立当初の想いとは異なる方向に進んでいる面があるから。新たな段階へ進もうとしているBリーグに関わらせてもらうことで、われわれにとっても勉強になると考えました。

ーー島田チェアマンはなぜ、岡田さんの理事入りを熱望したのでしょうか?

島田 Bリーグは2026年に大きく構造を変える予定です。中期経営計画を立て、それを実現していく組織を組成したいと考え、真っ先に思いついたのが岡田さんでした。

ーーなぜでしょう?

島田 クラブの事業規模を大きくするだけではなく、日本代表を強くし、Bリーグの競技性を高めていくこと。そして、ユースなどの育成を強化していく必要もあります。全ての面で助言をいただけるのは、岡田さんしかいないなと。

 まず、岡田さんは競技面では、サッカーの日本代表の監督を務めた名将です。育成に関しても、今治で『岡田メソッド』を作り上げた実績があり、今治ではクラブの経営もされているので、事業においても頼りになりますから。

※※※

 Bリーグは2016年の開幕時から、B1からB2の2部制を採用し、Jリーグ同様に競技成績による昇降格を行ってきた。ところが、2026-27シーズンからは競技成績による昇降格を廃止し、プロ野球のようなエクスパンション型のリーグへと移行する。

 その代わり、クラブの売り上げ12億円以上、平均入場者数4000人以上、最大入場可能数5000人以上でスイートルーム等を設置したホームアリーナを確保することなどを新たなB1への参入条件とする。現在は新B1入りを目指す多くのクラブが、新アリーナ建設にむけて動いている。これがスタンダードになると、B1クラブの平均売上高が20億円を超えることも現実の目標となる。そうなれば、島田氏の著書にあるとおり、BリーグはNBAに次ぐ世界第二位のバスケットボールリーグになれるという。
ーーBリーグが構造改革に踏み切る理由はどこにあるのでしょう?

島田 一番は、Bリーグを通して、地域活性化に貢献していきたいからです。そのために重要なのがアリーナだと考えています。ただ、新アリーナ建設には、大きな投資が必要で。競技の成績次第でB1からB2に降格するというようなリスクがあると、地方自治体などは投資を判断するのが難しいです。昇降格の制度自体を否定しているのではなく、投資判断を鈍らせてしまうのを避けることが最大の理由です。

 あとは、昇降格がある現状で、顕著に見られるのが、チームにばかり投資してしまう傾向です。このままでも選手の待遇は上がるのですが、彼らを支えるスタッフの待遇はなかなかあがりません。そうなると、新しいスタッフが来ては、辞めて……ということを繰り返しかねません。それでは、地域に根付いて活性化させてくれる人材が入れ替わってしまいます。試合に勝ちさえすれば地域活性化ができるわけではないので、地域に長く寄り添える人が出てくる仕組みにしたいというのが2つ目の理由です。

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著者プロフィール

金子達仁氏のホームページで募集されていた、ドイツW杯の開幕前と大会期間中にヨーロッパをキャンピングカーで周る旅の運転手に応募し、合格。帰国後に金子氏・戸塚啓氏・木崎伸也氏が取り組んだ「敗因と」(光文社刊)の制作の手伝いのかたわら、2006年ライターとして活動をスタートした。そして2009年より再びドイツへ。Twitter ID:yusukeMimura

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