連載:村田諒太vs.ゴロフキンの行方

村田諒太のゴロフキン攻略なるか? 両者を知る名参謀3人が挙げるカギ

船橋真二郎
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元世界3団体(WBA、WBC、IBF)統一ミドル級王者ゴロフキンとの決戦が間近に迫ってきた村田(左) 【写真:西村尚己/アフロスポーツ】

 いよいよ日本ボクシング史上最大級とも評される決戦の時が迫ってきた。2012年ロンドン五輪ミドル級金メダリストで、WBA世界ミドル級スーパー王者の村田諒太(帝拳)が4月9日、激戦区のミドル級に一時代を築いたレジェンドをさいたまスーパーアリーナのリングに迎える。現・IBF世界ミドル級王者で、元世界3団体(WBA、WBC、IBF)統一ミドル級王者のゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)と双方のベルトを懸けて激突する。

 この大勝負に村田はどう挑み、いかに勝機を見いだすべきなのか。いずれも経験豊富な腕利きの指導者3人に話を聞いた。

 ひとりは八王子中屋ジム・先代会長の中屋廣隆チーフトレーナー(67歳)。2012年5月、愛弟子・淵上誠とウクライナでゴロフキンに挑んだ。元東洋太平洋、日本ミドル級王者の淵上を始め、元日本ミドル級王者の鈴木悟、1階級下のスーパーウェルター級で東洋太平洋、日本王座を制したチャールズ・ベラミーなど、中重量級のチャンピオンを数多く手がけたベテランである。

 もうひとりはロサンゼルス在住で、当地で長く指導経験を積む岡辺大介トレーナー(45歳)。2013年3月、モナコでゴロフキンに挑戦した元WBA世界スーパーウェルター級暫定王者・石田順裕に戦略を授けた。村田vs.ゴロフキンと同じリングに登場するWBO世界フライ級王者の中谷潤人(M.T)、元WBO世界スーパーフェザー級王者の伊藤雅雪(横浜光)に携わる。

 最後のひとりは2006年、プロ8戦目で名城信男をWBA世界スーパーフライ級王者に導き、史上最年少32歳で栄えあるエディ・タウンゼント賞を受賞した藤原俊志トレーナー(47歳)。現役時代は南京都高校、日本大学でトップアマチュアとして活躍。村田の高校の先輩にあたる。昨年、志成ジムの世界4階級制覇王者・井岡一翔のチームに加わり、同ジムで手腕を振るう。

 まずは、ともに当時30歳のゴロフキンと向き合った2人から。プロ転向から約4年でWBA王座に就いた破格の強打者は、淵上との4度目の防衛戦から4ヵ月後、念願だったアメリカ進出を果たすなど、世界的スターへの階段を上り始めたところだった。

「トップクラスの肉体で“前に”」(中屋トレーナー)

八王子中屋ジム・先代会長の中屋廣隆チーフトレーナー。2012年5月、愛弟子・淵上誠とウクライナでゴロフキンに挑んだ 【写真:船橋真二郎】

 ケタ違いのフィジカルストレングスと技術に加え、「これから未知の世界へ飛んでいくような勢いと強い意志を感じた」と中屋トレーナーは振り返る。「ジャブひとつ取っても、淵上が『石で殴られるような』という表現を使っていたけど、一つひとつすべてのレベルが違い過ぎた」と脱帽するしかなかった。

 厳しい条件は覚悟の上の挑戦だった。正式発表が試合の10日前。ほとんど準備期間はなく、慌ただしく戦いの舞台へ飛び立った。淵上はサウスポーの変則タイプ。特長を前面に出し、前半は独特のリズムでかわして、さばいて、中盤以降に勝負の機会をうかがう作戦だった。
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著者プロフィール

1973年生まれ。東京都出身。『ボクシング・ビート』(フィットネススポーツ)、『ボクシング・マガジン』(ベースボールマガジン社=2022年7月休刊)など、ボクシングを取材し、執筆。文藝春秋Number第13回スポーツノンフィクション新人賞最終候補(2005年)。東日本ボクシング協会が選出する月間賞の選考委員も務める。

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