連載:22年J1・J2「補強・戦力」を徹底分析!

本命は降格組の横浜FC、対抗は長崎か 番記者によるJ2展望座談会【前編】

飯尾篤史

水戸は攻撃陣をほぼ総とっかえ

昨季から16人ものメンバーが入れ替わった水戸。とりわけ大きく陣容が変化した攻撃陣で、J3宮崎から加入の梅田魁人ら新戦力が結果を残せるか 【(C)J.LEAGUE】

──ここからはBクラスに移りますが、その前に、ただひとり郡司さんがAクラスに挙げているアルビレックス新潟(昨季6位)について触れておきましょう。

●Bクラス予想(※並びは順位予想順)
海江田:町田、東京V、徳島、甲府、新潟、水戸、秋田、琉球

郡司:岡山、水戸、徳島、大分、東京V、甲府、琉球、大宮

佐藤:山形、新潟、徳島、甲府、大宮、水戸、東京V、秋田


郡司 先発11人の戦力値は、J2でもトップクラスです。昨シーズンまでのアルベル・プッチ・オルトネダ監督(現FC東京)の新潟は再現性に欠ける、ピッチに立った選手たちの化学反応次第のチームでしたが、そこから育成畑を歩んできた印象が強い松橋力蔵監督にバトンタッチして、どんな変化が起こるのか注目しています。「決め切る」という部分さえクリアできれば、そこそこいけるんじゃないかと。ただ、プレーオフ出場圏内のボーダーラインという意味でのAクラスですが。

佐藤 でも、やっぱりストライカーで目立った補強がなかったのは気になるところ。さっきも言いましたが、J2って相手の良さを潰しにくるチームが多いので、ボール回しが上手い新潟に対しては、どこも無理に奪いに行かず、ゴール前をしっかりと固めてくるんです。本間至恩をはじめ、2列目の人材は豊富なだけに、フィニッシャーの補強に力を入れれば、もっと面白いチームになるんですけどね。わざわざ水戸から中盤の伊藤涼太郎を獲らなくてもいいのになって(笑)。

海江田 メンバーを見ると、真ん中より上にいても不思議じゃないんですけどね。最大の懸念は、22チームの監督の中で松橋さんだけが、唯一トップチームの監督を務めた経験がないこと。横浜FMや昨シーズンの新潟でコーチの仕事はしてきたけど、コーチと監督はまったく違うので、あんまり強くは推せないんですよね。

郡司 確かにそこが気になるんですよねぇ。

──Bクラスを見ると、佐藤さんが担当チームの水戸(昨季10位)を真ん中より下に置いていますね。

佐藤 今シーズンの水戸は、はっきり言って未知数です(笑)。16人もメンバーが入れ替わるって相当だし、とくに攻撃陣はほぼ総とっかえですからね。ただ、DFの主力は大半が残ったので、例年とは違ってまずは守備を安定させた上で、攻撃をフィットさせていく流れになるのかなと思っています。タイプの異なる選手が揃っているので、あの手この手を使いながら、ちょっとずつでも勝ち点を積み上げていってほしいですね。

海江田 佐藤さんが注目している新戦力は?

佐藤 驚きを提供できるんじゃないかと思うのは、J3のテゲバジャーロ宮崎から来たボランチの前田椋介。あとはスペイン(レクレアティボ)で成長した山口瑠伊もスーパーなGKなので、ぜひチェックしてみてください。

──逆に郡司さんが水戸を推す理由は?

郡司 松崎快(浦和)を筆頭に重要なメンバーがかなり抜けたとはいえ、横浜FMからのレンタルでドリブラーの椿直起を獲得するなど、個性的な人材を積極的に補強していますからね。夏の引き抜きリスクもあるので強烈には推せませんが、状況に応じて戦い方を柔軟に変えられる秋葉忠宏監督のやりくり次第では、プレーオフ出場権にも手が届くかもしれません。

海江田 秋葉さんの攻撃サッカーはすごく魅力がありますよ。ただ、昨シーズンの松本もメンバーの半数を入れ替えた結果、チームとして体をなさなくなってJ3に落ちてしまった。その恐怖を目の当たりにしたのに、これほどシャッフルする必要があったかなと。リスクは小さくないですよ。

佐藤 選手を残さなかったんじゃなくて、残せなかったんです(苦笑)。まあ、これくらいの入れ替えは、水戸としてはそんなに珍しいことではないんですが、ただボランチのところが心配ですね。ハイプレスをかけた時に、前の選手との連動性が欠けると、後ろがスカスカになってしまうので。

──そんななか、みなさんが揃ってBクラスの上位に推しているのが、降格組の徳島(昨季はJ1の17位)です。

郡司 ここもボランチの主力が4人も抜けているんですよね。岩尾憲(浦和)、鈴木徳真(C大阪)、小西雄大(山形)、藤田譲瑠チマ(横浜FM)。チームの心臓とも言えるボランチが刷新されると、チームを根本から作り直さなきゃいけなくなる。加えて、大分と同じくルヴァンカップ参戦の足枷もありますからね。ただ、いざ低迷となれば夏の補強で巻き返し、少なくともBクラスは確保するんじゃないかと。U-15ナイジェリア代表候補にも選出されたストライカーのオリオラ・サンデー(福知山成美高から)にも、密かに期待しています。

佐藤 岩尾の後釜として鈴木を育てていたと思っていたのですが、そこまで抜かれたのは誤算だったでしょうね。あと、ダニエル・ポヤトス監督が家族の問題で頻繁に帰国していますけど、あれもチームマネジメント的にはどうなんでしょう? それでも戦力的にはJ2の中位から上位なので、なんとかなりそうな感じはありますね。

海江田 降格4チームの中で、僕が一番評価を下げたのが徳島。岩尾って、そんじょそこらの核じゃないんですよ。後釜がそう簡単に見つかるとは思えないし、ダメージはかなり大きいと思いますね。

海江田哲朗(かいえだ・てつろう)

【YOJI-GEN】

1972年、福岡県生まれ。獨協大学卒業後、フリーライターとして活動。東京ヴェルディを中心に、日本サッカーの現在を追う。主な寄稿先に『フットボール批評』、『Number Web』、『サッカーダイジェスト』など。著書に、東京ヴェルディの育成組織にフォーカスしたノンフィクション『異端者たちのセンターサークル』(白夜書房)がある。2016年初春に始動した『スタンド・バイ・グリーン ライター海江田哲朗のWEBマガジン』で、東京Vのマッチレポートやコラムを届けている。

郡司聡(ぐんじ・さとし)

【YOJI-GEN】

編集者・ライター。広告代理店、編集プロダクション、エルゴラッソ編集部を経て、フリーに。定点観測チームである浦和レッズとFC町田ゼルビアを中心に取材し、『EL GOLAZO』や『サッカーダイジェスト』などに寄稿。町田を中心としたWebマガジン『ゼルビアTimes』の編集長も務める。著書に『不屈のゼルビア』(スクワッド)。

佐藤拓也(さとう・たくや)

【YOJI-GEN】

1977年生まれ。2003年、日本ジャーナリスト専門学校卒業とともに横浜FCのオフィシャルライターに就任。04年秋、サッカー専門新聞『EL GOLAZO』創刊に携わり、フリーライターへ転身。その後、サッカー専門誌を中心に寄稿。04年から水戸ホーリーホックを追い続け、12年有料webサイト『デイリーホーリーホック』を立ち上げてからはホームのみならず、アウェーにも足を運んでリーグ戦を全試合取材している。

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著者プロフィール

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

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