連載:22年J1・J2「補強・戦力」を徹底分析!

好補強の浦和と湘南…鹿島も及第点の補強 J1リーグ全18クラブの補強診断【前編】

YOJI-GEN

ルーキー・松木玖生のスタメンの可能性は……

大分からFC東京に加入したエンリケ・トレヴィザンは対人能力に加え、左足のフィードで早くも存在感を発揮している 【YOJI-GEN】

〈FC東京〉
補強診断:C/戦力ランキング:74(10位)
昨シーズン:9位
監督:アルベル・プッチ・オルトネダ(新任)


 渡辺剛とジョアン・オマリが抜けたセンターバックに、エンリケ・トレヴィザンと木本恭生を獲得。ふたりはいずれもビルドアップを得意とするタイプで、ポジショナルプレーを標榜する指揮官のスタイルに合う選手たちだ。

 山下敬大が加わった前線は、ディエゴ・オリヴェイラ、アダイウトン、レアンドロのブラジルアントリオと永井謙佑も健在で、他クラブもうらやむ選手層とクオリティを誇る。中盤に目を向ければ、期待の高卒ルーキー、松木玖生が開幕スタメンを射止めそうな勢いでアピールし、東慶悟、安部柊斗とポジション争いを繰り広げている。

 懸念材料を挙げるなら、ボールを保持するうえで重要なプレーメーカータイプの不在だろう。ビルドアップの逃げ場所になれ、攻撃をコントロールできるタイプがいないため、シーズン前半は昨年までの強みだった速攻を繰り出すシーンが増えそうだ。

【IN】
FW 山下敬大 ←鳥栖(J1)
MF 平川怜 ←松本(J2)
MF 梶浦勇輝 ←FC東京U-18(新人)
MF 安田虎士朗 ←FC東京U-18(新人)
MF 松木玖生 ←青森山田高(新人)
DF 木本恭生 ←名古屋(J1)
DF エンリケ・トレヴィザン ←大分(J1)
DF 岡庭愁人 ←明治大(新人)
GK ヤクブ・スウォビィク ←仙台(J1)

【OUT】
FW 田川亨介 →サンタ・クララ(ポルトガル)
DF ジョアン・オマリ →未定
DF ブルーノ・ウヴィニ →未定
DF 渡辺剛 →コルトレイク(ベルギー)
DF 中村拓海 →横浜FC(J2)
DF 大森理生 →琉球(J2)
GK 阿部伸行 →岩手(J2)
〈川崎フロンターレ〉
補強診断:B/戦力ランキング:93(1位)
昨シーズン:優勝
監督:鬼木達(6年目)


 昨夏に三笘薫と田中碧、今冬に旗手怜央と主力選手が欧州に旅立った一方で、昨年9月にマルシーニョ、今冬に札幌のエースであるチャナティップ、横浜FCのキャプテン瀬古樹を獲得した。大きなプラスとなっていないため、補強面においてはA評価というわけにはいかないが、既存の戦力は依然として充実しており、J1リーグトップクラスだ。

 注目すべきは、5人の新人選手を獲得したことだろう。今オフは未来への投資がコンセプトなのかもしれない。だが、法政大から加入する松井蓮之は「大学ナンバーワンボランチ」との評判で、早期デビューを飾ってもおかしくない。かつて守田英正や田中が背負った25番を託されたことからも、クラブの期待の大きさがわかる。

 死角があるとすれば、最終ラインの選手層が薄いこと。ジェジエウが離脱中のため、即戦力のセンターバックを獲得できれば、磐石だった。

【IN】
FW 五十嵐太陽 ←川崎U-18(新人)
FW 永長鷹虎 ←興國高(新人)
MF チャナティップ ←札幌(J1)
MF 瀬古樹 ←横浜FC(J1)
MF 松井蓮之 ←法政大(新人)
DF 佐々木旭 ←流通経済大(新人)
GK 早坂勇希 ←桐蔭横浜大(新人)

【OUT】
FW 旗手怜央 →セルティック(スコットランド)
MF 長谷川竜也 →横浜FC(J2)
DF イサカ・ゼイン →横浜FC(J2)
DF 神谷凱士 →藤枝(J3)
GK イ・キョンテ →金海市庁FC(韓国)
〈横浜F・マリノス〉
補強診断:B/戦力ランキング:89(2位)
昨シーズン:2位
監督:ケヴィン・マスカット(2年目)


 扇原貴宏、ティーラトン、前田大然と主力が流出したのは痛手だが、広島や札幌での実績があるアンデルソン・ロペスを中国の武漢から獲得。さらに、西村拓真、藤田譲瑠チマ、永戸勝也など、移籍組と同ポジションの後釜を獲得した。

 なかでも、見事だったのが2月の迅速な動きだ。チアゴ・マルチンスに移籍の可能性が生じると、すぐさま鳥栖のエドゥアルドを獲得。そのフットワークの軽さはさすがのひと言だ。ファン・サポーターにとっては青天の霹靂だったが、クラブは常にリサーチし、準備に余念がなかったことを伺わせた。

 ただし、リーグタイトル奪還にはプラスαが必要だろう。19年にリーグMVP&得点王に輝いた仲川輝人の完全復活はもちろん、武者修行に出て経験を積んだ吉尾海夏や樺山諒乃介ら若手のブレイクにも期待したい。

【IN】
FW アンデルソン・ロペス ←武漢足球倶楽部(中国)
FW 西村拓真 ←仙台(J1)
FW ンダウ・ターラ ←町田(J2)
MF 藤田譲瑠チマ ←徳島(J1)
MF 樺山諒乃介 ←山形(J2)
MF 吉尾海夏 ←町田(J2)
MF 山根陸 ←横浜FMユース(新人)
DF 永戸勝也 ←鹿島(J1)
DF 小池裕太 ←C大阪(J1)
DF エドゥアルド ←鳥栖(J1)
DF 池田航 ←讃岐(J3)
DF 西田勇祐 ←横浜FMユース(新人)
GK オビ・パウエル・オビンナ ←栃木(J2)

【OUT】
FW 前田大然 →セルティック(スコットランド)
FW 杉本健勇 →磐田(J1)
MF 天野純 →蔚山現代(韓国)
MF 扇原貴宏 →神戸(J1)
MF 南拓都  →岩手(J2)
DF チアゴ・マルチンス →ニューヨーク・シティ(米国)
DF ティーラトン・ブンマタン →ブリーラム(タイ)
DF 和田拓也 →横浜FC(J2)
DF 平井駿助 →ラインメール青森(JFL)
GK 梶川裕嗣 →磐田(J1)
 

実力者の獲得に加えて主力も残留

15年以来、7年ぶりに湘南に復帰した永木。鹿島で学んだことを若いチームに伝えたい 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

〈湘南ベルマーレ〉
補強診断:B/戦力ランキング:70(13位)
昨シーズン:16位
監督:山口智(2年目)


 かつてのキャプテン・永木亮太が7年ぶりに復帰し、経験と実力を兼ね備えたボランチの米本拓司、攻撃のユーティリティである瀬川祐輔が加入。スイスのシオンで武者修行を積んだ若月大和が復帰するなど、今ストーブリーグでは積極性が光った。

 それ以上に大きいのが、主力選手の流出を抑えたことだ。これまでの湘南といえば、活躍した選手が他クラブに次々と引き抜かれてしまう傾向があった。しかし今オフは、田中聡、畑大雅、谷晃生(G大阪から期限付き移籍中)といったイキのいい若手や、山田直輝、石原広教、岡本拓也、大岩一貴といった中心選手が残留し、戦力の上積みを図ることができた。

 昨季は引き分けが16もあり、それが残留争いに巻き込まれた大きな要因だった。その引き分けを勝利へと変えるという意気込みが十分伝わってくるチーム編成となった。

【IN】
FW 若月大和 ←シオン(スイス)
FW 瀬川祐輔 ←柏(J1)
FW 鈴木章斗 ←阪南大高(新人)
FW 根本凌 ←鹿屋体育大(新人)
MF 永木亮太 ←鹿島(J1)
MF 米本拓司 ←名古屋(J1)
MF 原直生 ←湘南U-18(新人)
MF 鈴木淳之介 ←帝京大可児高(新人)
DF 福島隼斗 ←福島(J3)
DF 蓑田広大 ←法政大(新人)
DF 石井大生 ←湘南U-18(新人)
DF 松村晟怜 ←帝京長岡高(新人)

【OUT】
FW ウェリントン・ジュニオール →ポルティモネンセ(ポルトガル)
FW 石原直樹 →未定
MF 名古新太郎 →鹿島(J1)
MF 三幸秀稔 →大宮(J2)
MF 柴田壮介 →富山(J3)
DF 毛利駿也 →金沢(J2)
〈清水エスパルス〉
補強診断:D/戦力ランキング:69(15位)
昨シーズン:14位
監督:平岡宏章(2年目)


 日本代表GK権田修一をはじめ大型補強を行なった昨季から一転、今オフは控えめな補強となった。目玉となるのは、鹿島、鳥栖を経て4年ぶりにオレンジのユニホームに袖を通す白崎凌兵だろう。ユーティリティ性により磨きをかけて、かつて10番まで背負った古巣に帰還した。

 柏から加入する神谷優太も前線、サイド、ときにはボランチもこなすポリバレントな能力の持ち主で、指揮官の采配の幅を広げる存在だ。おそらく、この「ユーティリティ性」「ポリバレントさ」が今オフの補強テーマと言えるだろう。

 とはいえ、クラブは現在、3シーズン続けて指揮官を途中交代させている。その要因が方向性の問題か、選手のクオリティか、監督の能力かはっきりとしない。「得失点差+10以上、タイトル、ACLの出場権獲得」を目標に掲げているが、簡単な道のりではないだろう。

【IN】
FW 栗原イブラヒムジュニア ←鈴鹿ポイントゲッターズ(JFL)
FW 加藤拓己 ←早稲田大(新人)
FW 千葉寛汰 ←清水ユース(新人)
MF 神谷優太 ←柏(J1)
MF 岸本武流 ←徳島(J1)
MF 白崎凌兵 ←鳥栖(J1)
MF 成岡輝瑠 ←相模原(J2)
MF 高橋大悟 ←北九州(J2)
MF 川谷凪 ←静岡学園高(新人)
DF 山原怜音 ←筑波大(新人)
DF 菊地脩太 ←清水ユース(新人)

【OUT】
FW 指宿洋史 →アデレード・ユナイテッド(オーストラリア)
FW 藤本憲明 →神戸(J1)
MF 中村慶太 →柏(J1)
MF 河井陽介 →岡山(J2)
DF 奥井諒 →長崎(J2)
DF エウシーニョ →未定
DF ノリエガ・エリック →未定

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