テレビ朝日・清水俊輔アナウンサーが選ぶ好きな球場ランキングと実況席の裏話
高校野球はフルネームを心掛ける
阪神甲子園球場です。毎年夏、テレビ朝日系列のABCテレビで、高校野球の中継をやっています。ぼくはテレビ朝日のアナウンサーとして、実況の機会をいただいています。入社した当時はこの制度がなくて、実況ができなかったのです。今でも甲子園での実況は特別で、ありがたさを感じています。
――実況のしやすさはいかがですか。
最高ですね。放送席の高さや角度は、神宮球場に近いと思います。球場の雰囲気を直に感じながら実況ができますし、銀傘の下に放送席があるので、真夏でも気持ちのいい風が抜けていきます。
――思い出の試合をひとつ挙げていただくとしたら、どの試合になりますか。
今治西と文星芸大付の試合でしょうか(2007年3回戦)。今治西の熊代聖人選手(西武)と文星芸大付の佐藤祥万選手(元広島など)が投げ合った試合です。熊代選手が終盤にホームランを打って勝ったのですが、「熊代選手がホームランを打って試合を決める」という直感がありました。打席に入ってから、ホームランを打つまでの間、一言も喋っていないと思います。ホームランを打つ気がしたので、黙っていようと思ったのです。
――すごい直感ですね。
そこまでの試合の流れや雰囲気を見て、直感が働きました。エースに打席が回ってきて、一発で勝負が決まるんじゃないか。もちろん、外れることもたくさんあります。
――ABCといえば『熱闘甲子園』がありますが、どこまで意識して喋っていますか。
意識をするとかっこつけてしまうので、気にしないようにしています。試合前に、誰をクローズアップするのか分かるのですが、あえて頭に入れません。あくまでも、試合の中継を第一に考えるようにしています。
――プロ野球と高校野球の実況で、何か変えていることはありますか。
高校野球は可能な限り、フルネームで紹介するようにしています。選手のことを小さい頃から知っているご家族やお友達、また近所の人たちがたくさん見てくれていると思います。たとえば、我々からしたら「三番センター・清水くん」ですけど、近所の人からすれば「三番センター・俊輔くん」ですよね。そういう想いも感じながら、フルネームで喋ることを心掛けています。
――めちゃくちゃいい話ですね。
初の日本一実況を経験した札幌ドーム
初めて日本シリーズを実況したのは2006年の日本ハム対中日。日本一が決まる試合だった 【写真は共同】
札幌ドームですね。個人的な思い入れが強い球場で、日本シリーズを初めて実況したのが2006年の日本ハム対中日で、この試合で日本一が決まりました。初の日本シリーズで、日本一が決まる実況を担当することになったので、印象深いですね。
――実況席は高いところにありますよね。
高いですが、記者席と並んだオープンな場所に放送席が設置されています。スタンドの雰囲気を感じながら実況できるのも、好きなところです。
――日本一決定試合といえば、2013年の楽天対巨人の第7戦も清水さんでした。
はい、札幌ドームと楽天生命パーク宮城のどちらを4位にするか迷っていました。
――第7戦の9回表、田中将大投手がマウンドに上がるときはどんな想いで実況していましたか。
登場曲の『あとひとつ』が流れて、サビを迎える直前に、「これは喋ったらダメだ!」と思ったことを覚えています。そこまでは何かを喋っているんですけど、「邪魔しちゃいけない!」と。あの瞬間は今でも覚えています。
――プロ野球史に残る登板シーンになっていますね。
言葉は要らないシーンですね。
――あの時期の仙台は、所沢以上に寒いと思います。アナウンサーも大変ではないでしょうか。
それが、楽天生命パークの放送席はガラス張りなので暖かいんです。あのガラスが一部でもいいので開いてくれると、球場の雰囲気を感じやすくなるのですが。