連載:プロ野球・好きな球場ランキング

テレビ朝日・清水俊輔アナウンサーが選ぶ好きな球場ランキングと実況席の裏話

大利実
 プロ野球中継の楽しみのひとつは「実況」という人も多いはず。各局それぞれに個性のあるアナウンサーが、白熱した試合を盛り上げてくれます。テレビ朝日の清水俊輔アナウンサーもその一人。12球団すべての本拠地で実況をしたことのある清水アナに、好きな球場や実況の悲喜こもごもなどを伺いました。

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雰囲気が最高のベルーナドーム

2003年7月13日の西武対福岡ダイエー。初めて地上波の実況を担当した試合だった。先発は松坂大輔投手と新垣渚投手 【写真は共同】

――12球団すべての本拠地で実況をした経験を持つ清水アナウンサーに、好きな球場ベスト5を決めていただく企画になります。早速ですが、1位はどこでしょうか。

 思い出も含めて、ベルーナドーム(*昨年までメットライフドーム)ですね。初めてプロ野球を実況した球場で、実況の数がもっとも多い球場でもあるんです。

――テレビ朝日さんは、西武戦の放送が多い印象があります。

 土日のデーゲームは、夕方になるとレフトスタンドと天井の間から夕陽が差し込んでくる。あの雰囲気がすごく好きですね。春先は、ライトスタンドの向こう側に桜が見えることもあります。天井がありながらも、外の風景と一体化している雰囲気は、ベルーナドームならではですね。

――実況席からの見やすさはいかがでしょうか。

 慣れていることもありますが、高さも角度もちょうどいい。高すぎず、低すぎず、喋りやすい球場です。

――思い出の試合はありますか。

 忘れもしない入社2年目、2003年の7月13日。日付まで覚えています。初めて地上波の実況を担当した試合で、西武対福岡ダイエー、先発は松坂大輔投手と新垣渚投手でした。

――ワクワクする先発ですね!

 先輩から、「いい試合に当たったな!」と言ってもらっていたのですが、松坂投手が右ヒジに違和感を覚えて、初回7失点で降板。想定外の展開になり大パニックに陥りました。

――どう対応していったのですか。

 CMに入ったときに、解説の東尾修さんから「もう、用意していたことは何も使えねぇな」といたずらっぽく言われました(笑)。そう言いながら、東尾さんにはものすごく助けていただいて、そのおかげで何とかやりきれた思い出があります。今なら引き出しは持っていますが、当時は空っぽ。大差が付いた試合ほど、実況の力量が問われます。それがいきなり来たので、本当にパニックでした。

――ベルーナドームは、10月11月のナイターはかなり冷え込むと思います。

 放送席がガラス張りではなく、オープンになっているので、球場の寒さをダイレクトに感じます。ぼくはオープンの実況席が大好きで、球場の雰囲気や音を肌で感じることができる。これもまた、好きな理由のひとつです。

――「ベルーナドーム」のように、近年はネーミングライツによって球場名が変わることが増えています。アナウンサーとして気を遣うのではないでしょうか。

 絶対に間違ってはいけないところです。放送で間違えると一大事ですから。でも、つい出てしまうこともあるので……、「ベルーナドーム」と今から頭に叩きこんでいます。

実況練習を重ねた思い出の神宮球場

――続いて、第2位の球場をお願いします。

 明治神宮球場ですね。子どもの頃から、一番行っている球場ということに加えて、実況がしやすい。1階スタンド席の一番上に実況席があり、高さ、角度ともに最高です。

――お客さんが目の前に見える場所ですね。

 スタンド席の一番後ろのお客さんが、目の前に座っています。若い頃、とんでもないミスをして、パッと振り返られたことが何度かありました。結構、プレッシャーというか緊張感がありますね。

――球場の雰囲気はいかがですか。

 夏のナイターは最高です。一番印象に残っている実況が、神宮球場でのオールスター(2013年)。夏のナイターが好きなうえに、オールスターのお祭りが重なり、最高の雰囲気でした。ぼくも、野球好きの少年に戻った気持ちで放送席に座っていました。

――大学生のときに、実況の練習で神宮球場に通った経験もあるのでしょうか。

 入社してからですね。六大学野球と東都大学野球を実況するために、週4日通っていました。2階席で1日2試合の実況を週4日。苦い思い出しかありません。

――結構、スタンドにも響きますよね。

 とんでもない間違いをしたときには、スタンドにいる野球好きのお父さんから、優しくご指導していただくこともありました(笑)。「きみ、今のプレーは違うよ」と。でも、迷惑がっている感じではなくて、みなさん温かい方ばかりでした。

――今、神宮球場に行くと、当時のほろ苦い記憶がよみがえることもありますか。

 放送席から階段を上がると、すぐに2階席に行けるので、試合前に上がることがあります。「ここでよく練習したなぁ」と今でも思います。そこから球場全体を俯瞰して、放送席に戻るようにしています。

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著者プロフィール

1977年生まれ、横浜市出身。大学卒業後、スポーツライター事務所を経て独立。中学軟式野球、高校野球を中心に取材・執筆。著書に『高校野球界の監督がここまで明かす! 走塁技術の極意』『中学野球部の教科書』(カンゼン)、構成本に『仙台育英 日本一からの招待』(須江航著/カンゼン)などがある。現在ベースボール専門メディアFull-Count(https://full-count.jp/)で、神奈川の高校野球にまつわるコラムを随時執筆中。

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