北京五輪へ「1.5倍速」で突っ走る坂本花織 決して惑わず、自分の道を切り開く

沢田聡子

過去の自分を上回るため、難しいプログラムに挑戦

高難易度のプログラムに悩む坂本を支えたのが、共に4年間を歩んできた中野コーチ(左)だった 【写真:坂本清】

 ブノワ・リショーの振り付けによる坂本の今季フリー『No More Fight Left In Me/Tris』は、女性の力強さを表現するプログラムだ。リショーらしく難解で個性的な振り付けに、当初坂本は苦しんでいた。8月のげんさんサマーカップでは、18−19シーズンに滑った『ピアノレッスン』に戻す決断をしている。しかし、この試合を終えた坂本は、新しいプログラムに取り組む決意を固めた。

「げんさんで『ピアノレッスン』をしたことによって140点台が出たのですが、『去年より上回ろうと思ったら、これ以上のものをしないといけない』と思って、げんさんが終わってから覚悟を決めて、新しいプログラムにしました」

 10月、全日本と同じ会場で行われたジャパンオープンでは新しいプログラムを滑った坂本だが、その時点でまだ自信はなかったという。

「ジャパンオープンの際、ここで滑った時は『本当にこのままやっていても大丈夫かな』という思いがあった。でも、いろいろ意見をもらって『やっぱり上を目指すには、この曲でやるしかない』と。(プログラムを)戻すと、どうしても前のイメージがあって『前の方が良かったね』と言われそうだったので。『このフリーにする』と覚悟を決めたので、多分そんな覚悟がなかったら、ここまでこられてなかったなと思っています」

 新しいフリーに悩む坂本の背中を押したのは、中野コーチだった。

「そのことでは、ずいぶん一緒に戦って意見も交わしてきましたが、最終的には『決めたのなら、それで思い切りやっていこう』ということです。『ピアノレッスン』に戻すという考え方もあったのですが、本人が『(ショート・フリーの合計点が)210点台では嫌だ、もっと上を狙いたい』と言うので。このプログラムは、思ったより体力がいる。真ん中で休んでいるように見えるのですが、休むことによってまた次に切り替えて滑ることに体力がいるので、大変なんです。でも、やっぱりそれをやるために走り続けてきましたから、それでここまで来られたのだと思います」(中野コーチ)

 17歳だった4年前、フリー『アメリ』でリショー氏によるパントマイム風の振り付けを懸命にこなして不思議な少女を演じた坂本。21歳で迎えた今大会では、この4年で身に着けた確かなスケーティング技術を土台に、成熟した女性の強さを表現しきるまでに成長した。

ロシア勢が何をしようと「やるべきことは変わらない」

高難度のジャンプを組み込むロシア勢。それでも、坂本は惑わずに自分の道を切り開いていく 【写真:坂本清】

 中野コーチは「練習量はかなりぎりぎりまで増やしてきた」と坂本をねぎらいながらも、「でも、まだ少しスピードがなかったかなと思います」と注文をつけている。それを報道陣から聞かされた坂本は、「そこまで出したら、多分すっ飛ぶんじゃないですか」と笑いながらも、現状の「1.5倍」のスピードを出すことを誓ってみせた。

「そうなると、やっぱり大きいジャンプも跳べると思うので、練習あるのみだと思います」(坂本)

 高難度ジャンプを組み込むロシア勢の演技を見ると、時には「心が折れそうになります」という坂本だが、自分の進む道に迷いはない。

「ロシアの選手はみんな4回転やトリプルアクセルを跳びますが、自分は(高難度ジャンプが)ない分“ノーミスでいかにパーフェクトにするか”というのが本当に大事だと思っている。相手が何をしようと自分のやるべきことは変わらないので、どの試合でも自分のベストが出せるようにしたいなと思っています」

 自身の伸びしろについて問われた坂本は、さらにスケーティングスキルを磨く意欲を示した。

「スケーティングスキルをしっかりこの4年間やってきたので、その成果が出てきた。そこの点数はまだ上げられると思うので、年明けも頑張りたいです」

 北京五輪では、「リンクをすっ飛ぶ」勢いで滑る坂本花織が見られそうだ。

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著者プロフィール

沢田聡子

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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