「世界No.1」「国民的スポーツに」 卓球協会が目指す、100年目への指針

小野寺俊明

トップを目指し、国内リーグの整備と国際連携の強化

『JTTA PROJECT100』を発表した日本卓球協会。左から宮崎常務理事、藤重会長、星野専務理事、加藤常務理事 【写真提供:日本卓球協会】

 日本卓球協会(JTTA)は9月24日、100周年を迎える2031年までの期間を対象にした15の具体的なアクションプラン、『JTTA PROJECT100』を発表した。記者会見の冒頭、藤重貞慶会長は「90周年を迎えるに当たり、歴史を積み上げてきた先人たちに感謝を示すとともに、未来のさらなる発展を目指し、日本卓球協会は中期事業計画を策定しました」と語ったあと、JTTAのミッション「日本卓球協会は、卓球を通して人々の健康と幸福(wellbeing life)に貢献し、人々の心をつなげ社会の調和を目指す」を紹介し、『JTTA PROJECT100』のスタートを宣言した。

 その『ミッション』の活動指針として6つの『ビジョン』が示され、それぞれのビジョンに対して、2〜3の『アクションプラン』が作成されている。

1 世界ナンバーワンになる
・1-1 トップ選手の強化
・1-2 全世代の一貫指導体制の構築

2 豊かな卓球人生をサポートする
・2-1 登録会員制度の拡充
・2-2 卓球人のキャリア開発支援

3 国民的スポーツに育てる
・3-1 草の根レベルでの環境整備
・3-2 大会を核とする顧客体験価値の創造
・3-3 象徴的な場(「聖地」)の創出

4 社会における事業価値を高める
・4-1 デジタルの最大活用
・4-2 スポンサーシップおよび放映権/配信権の最大化
・4-3 卓球の科学的探求の推進

5 全国の競技大会を統括管理する
・5-1 加盟団体の運営安定化支援
・5-2 持続可能な大会運営体制の確立

6. 進化する組織であり続ける
・6-1 組織再編とプロフェッショナル人材の登用
・6-2 事務局等業務の効率化
・6-3 社会へむけた情報発信の強化

水谷隼(写真左)/伊藤美誠ペアは東京五輪から種目となった混合で優勝を果たし、同競技で日本勢初の金メダルを獲得した 【Getty Images】

 まず、ビジョンの1番目に挙げられたのは『世界ナンバーワンになる』だった。東京五輪では、混合ダブルスで史上初の金メダルを獲得し、女子団体で銀、男子団体で銅、女子シングルスで銅とメダル4個。さらにパラリンピックでは女子シングルスで銅メダルと結果を残した。

 次の目標は、東京五輪でメダル7個を獲得した世界最強の中国とともに国際卓球界の双璧をなし、さらにはナンバーワンへと駆け上がることだ。そのために『トップ選手の強化』と『全世代の一貫指導体制の構築』をアクションプランに掲げた。

 3年後に迫ったパリ五輪に関しては、日本代表選手の選考方法を変更する。新型コロナウイルスの影響で国際大会の開催が不透明なことや、新しい国際大会が世界ランキング上位選手に出場機会が与えられるため、選手の出場機会が平等にならないなど、これまでの世界ランキングを中心とした選考はできないと判断。パリ五輪に向けては国内での選考会を新設するほか、Tリーグも選考の対象とする。

 これについては、「1995年に中国が『超級リーグ』を設立し、国内の選考会と併用することで、選手協会に成功した事例を参照している」と宮崎義仁強化本部長。さらに国内リーグに関してはリーグシステムを構築し、『Tプレミアリーグ』を頂点とし、『T1』『T2』『T3』とレベルごとの階層を拡大することで、裾野を広げていく。また、パリ五輪後にはアジアリーグを創設し、欧州チャンピオンとの対戦なども視野に入れた国際連携を目指すとした。

日本の卓球にとって極めて重要な次の10年

強化とともに「国民的スポーツに育てる」ことを目指す卓球界。聖地をつくっていきたい考えだ 【Getty Images】

 強化とともに「国民的スポーツに育てる」というビジョンを掲げ、普及にも力を入れる。アクションプランにある「草の根レベルでの環境整備」を目指す一環として、10年をかけて全国約2万の小学校に卓球台の寄贈することを目標としている。

 また、『象徴的な場(「聖地」)の創出』もアクションプランとして計画された。星野一朗専務理事は、「テニスのウィンブルドン、ゴルフのセント・アンドリュースのように、卓球人の誰もが目指すことができるような聖地を検討している」とした。具体的な候補地などはこれから検討することになる。

 これらの強化と普及を中心に、それを支える形で組織や大会の整備などが、ビジョンやアクションプランとして予定されているが、特に力を入れているのは『デジタルの最大活用』だ。公式サイトを中心に、デジタルの世界に『卓球ワールド』を構築。動画サイト、SNS、会員サイト、指導者サイトなどを展開し、「いつでも、どこでも、簡単に、誰もが卓球の情報に触れられる世界で卓球界全体を盛り上げる仕組み」を目指すとしている。

 近年、五輪などの国際大会で好成績を収めるだけでなく、日本国内での人気も上昇しているだけに、プロジェクトを担当する加藤憲二常務理事が語ったように、「卓球界にとって90周年から100周年に向かう10年間は極めて重要」になるだろう。

 この会見後に行われたオンラインイベントに出演した水谷隼(木下グループ)も、その中でこう発言した。

「これまで卓球を知らなかった人も、東京オリンピックで見て興味を持った人にも、もっともっと、卓球を知ってもらいたい」

 頂きは「世界のナンバーワン」、そして裾野では「国民的スポーツ」としての存在。卓球協会が100周年に向けた『JTTA PROJECT100』の結果は、そのまま日本卓球の未来を左右することになりそうだ。
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著者プロフィール

スポーツコンテンツクリエーター、スポーツPRコンサルタント。スポーツ団体や選手のサイト、テレビ局のスポーツサイトを数多く立ち上げたほか、スポーツ団体やチームの運営・広報、SNSやWeb戦略のアドバイザーを務める。2004〜16年はプロバスケットボール「bjリーグ」PRマネージャー、現在は卓球の「Tリーグ」でメディア・プロモーション部プロデューサー。また、2006年から11年まで中央大学商学部客員講師としてスポーツビジネスの教鞭をとった。著書は「BUZZER BEATER〜日本プロバスケットボール bjリーグ 11年の軌跡」「【FIFAワールドカップへ行こう!】現地観戦BOOK」など。

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