「必然」だったジャイアントキリング 森保ジャパンに慢心はなかったか?

宇都宮徹壱

敗れたのは10試合のうち1試合だが…

初めて関西で行われたアジア最終予選は思わぬ結果に。次戦はカタールでの中国戦 【宇都宮徹壱】

 再び、イバンコビッチ監督の試合後のコメントから引用する。

「日本については、もちろん綿密なスカウティングをしている。(親善試合の)韓国戦とセルビア戦、そして(アジア2次予選の)タジキスタン戦を見て、どういう試合をするのかを研究した。われわれが心掛けたのは、90分間を通してコンパクトにプレーすることと、ハイプレスをかけ続けること。日本もビックリしたと思うし、危険なシーンをいくつも作ることができた。それに対するソリューションを、日本は見いだせなかったと思う」

 オマーンの指揮官には申し訳ないが、相手がスカウティングしてくることは日本も十分に織り込み済みだったし、欧州でプレーしている選手はもっと激しく緻密なプレッシングの中でプレーしている。それでもオマーンが、日本に対して「危険なシーン」を多く作っていたのは事実。ポゼッションでは6:4で日本が上回っていたが、シュート数では10本:13本で相手が勝っていたことからも、この事実を謙虚に受け止めるほかないだろう。

 そしてもうひとつ、日本が謙虚に受け止めなければならないのが、冒頭で紹介したイバンコビッチ監督の「すべてにおいて心を込めて、誠心誠意を尽くして戦った」という言葉。果たして日本は、ここまで真摯(しんし)な気持ちでこの試合に臨んだと、胸を張って言えるだろうか? 過去の実績と相手との実力差から、どこかで「何とかなるのではないか」という慢心が、なかったと言い切れるだろうか? 上記した3つの要因以上に、最も追及されるべきは、むしろこの部分なのかもしれない。

 日本が敗れたのは、最終予選10試合のうち1試合。ゆえに「それほど悲観する必要はない」という意見もあるかもしれない。しかしながら、入念に準備してコレクティブなサッカーを展開すれば、日本にも勝てることをオマーンに証明された事実は、とてつもなく重い。次戦は9月7日、オーストラリアに0-3で敗れている中国が相手だ。ただし試合会場はカタールで、そこで初戦を終えている中国は、間違いなく日本よりコンディションはいい。

 かくなる上は、がむしゃらに勝利を目指すほかない。しかし一方で、JFAは「もしも」のケースに備えて、今から準備を進めておく必要がある。

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著者プロフィール

1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)など。『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。近著に『蹴日本紀行 47都道府県フットボールのある風景』(エクスナレッジ)

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