長友佑都×國光宏尚 トークンを語ろう「応援するファンにも経済的メリットを」

西川結城

長友佑都(左)とフィナンシェのファウンダー國光宏尚氏(右)。「トークンはすごくワクワクするサービスだ」と長友は言う 【スポーツナビ】

 日本代表の長友佑都にはサッカー選手以外の顔がある。経営者や投資家としてのそれである。自ら会社を経営する一方で、スタートアップ企業への投資も行っている。なぜ、長友はデュアルキャリアに積極的なのか。長友がアドバイザーを務め、デジタル資産「トークン」を提供する株式会社フィナンシェのファウンダーである國光宏尚氏との対談で、長友のビジョンと「トークン」の可能性に迫る。

ビジネスをやっていなければ、今の長友はない

――長友選手は現在、デュアルキャリアを積極的に実行しています。2015年4月にサッカースクール『Yuto Nagatomo Football Academy』を手がける「INSIEME」を設立し、約1年後にはヘルスケアやアスリートサポートを中心としたビジネスを展開する「Cuore」を設立しました。どんな思いでビジネスを展開しているのでしょうか?

長友 まずはサッカーだけをやっていても自分の成長は少ないですし、人生全体を考えても面白くないと思いました。実際にビジネスをすることによって新たな知識や人脈が増えて、それがサッカーにも生きています。サッカースクールは自分の経験を子どもたちにどんどん伝えていて、ヘルスケアの会社に関しては、運動や食事といった生活面に大切な部分を僕自身がより深く理解しないといけないですし、その勉強の延長線上にビジネスも存在しています。

 多くの企業とわれわれがつながることでまた新たなサービスが構築できたり、そのサービスを自分の中に落とし込むことでサッカーに生かせたりしています。そのサイクルと効果を実感できています。ビジネスをやっていなければ、今の長友佑都はいないと確信しています。

――主にスタートアップ企業に投資をされることも多いですが、その理由は?

長友 やっぱり自分たちがゼロから力を合わせて作り上げていく、みんなで成功したものを分かち合う、という体験は何物にも替えられないものです。大きな企業である程度の仕組みもできていて、そこに自分がコミットするのはどこか面白くないなと感じます。スタートアップ企業で一緒に戦っていくというスタンスが僕は好きです。何よりサッカーでもずっとそのスタンスで僕はやってきたので、そのワクワク感を感じるためにもビジネスをやっています。

 それに、自分ひとりで、自分の会社だけでかなえられることは多くないですから。投資という活動を通して一緒に目標を追いかけたり、自社にプラスになるような戦略的な投資を心掛けています。

――今日は長友選手がアドバイザーとして関わっている、フィナンシェのファウンダー國光宏尚さんにも来ていただいています。

長友 フィナンシェさんの存在を知ったのが(本田)圭佑のTwitter投稿でした。それを見たときに、すごくワクワクするようなサービスだと感じて、すぐに圭佑に「フィナンシェに投資したい。ぜひ紹介してほしい」と伝えて、そこから関係性ができてきました。

目標は「株式会社個人」

ファンと組織や個人がどう関わっていくかが具体化され、金銭的なメリットも生まれてくる。この仕組みを長友は評価している 【スポーツナビ】

――フィナンシェさんがサービスとして提供するトークンは、いまや個人だけでなくクラブも発行していまして、Jリーグでは湘南ベルマーレがスポーツクラブとして初めてトークンを発行しました。國光さん、あらためましてファントークンの意義や魅力についてどう感じていますか?

國光 まず、フィナンシェが最終的な目標として描いているのは、「株式会社 個人」みたいなものがたくさんできあがっていくことです。会社が自分たちの株を発行して、賛同する人たちを集めて資金を調達したり、一緒に働いてくれる人にはストックオプションを渡したりする。このビジョンが実現すると、関わる全員が金銭的にもハッピーになるというイメージです。個人がそういうトライをするときに、例えば、長友さんがここから何か新しい挑戦をする際に、長友さん自体が自分のトークンを発行してファンを集めていろいろなことを実現していく、というようなものがわれわれの大きなビジョンです。

――最後は個人へのサービス訴求ということでしょうが、現状は湘南に代表されるようにクラブや団体組織での実動がメーンとなっているかと思います。

國光 個人に行く、そのひとつ前段階が現在です。チーム、グループがトークンを発行することに力を入れていまして、フィナンシェは「クラウドファンディング2.0」といった新しいクラファンということを提唱しています。クラブや球団が自分たちのやりたいことを実現するために資金を調達し、コミュニティを形成することをサポートするのが現状のフィナンシェの仕組みです。

 今は特に“ファンエコノミー”や“クリエイターエコノミー”がすごく注目されていますよね。僕はフィナンシェのクラブトークンが第3世代を担ってきていると思います。第1世代はマスで訴求するテレビが全盛だった時代。一方的にクリエイターやインフルエンサーが情報を発信し、ファンはただ受動的に見ていただけでした。その後インターネットが誕生して、ファンを巻き込んでSNSで拡散するような流れが第2世代。そして現在、第3世代として、応援するファンにも金銭的メリットが生まれる形になったわけです。つまり、ファンからサポーター、そしてパートナーへと進化していっているのです。

――ファンにも経済的メリットが生まれる、それを「インセンティブ革命」という言葉でも表されています。どんな業界もインタラクティブ(双方向)な関係性が重要視されるなかで、その極みのような仕組みに思えます。それは長友選手がフィナンシェさんのサービスを「ファンの“見える化”」と表現したこととも重なります。

長友 本当に聞いているだけでワクワクしますよね。ファンの方々が組織団体、または個人としっかりどう関わっていくかが具体化されることにもインセンティブが存在しますし、トークンが育っていけば、金銭的なメリットも出てくる。僕はこの仕組みは関わる皆さんにとっていいことしかないと思っています。

國光 スタートアップ企業と今までの大企業との違いとして、ストックオプションなど株の有無は大きいと思ってきました。これまでの企業は雇われて給料をもらうだけでしたが、スタートアップ企業は従業員も自社の株を持つことが多い。みんなで一生懸命頑張って上場すると、株のリターンで金銭的メリットも社員は受けることができます。株を持つことで雇われているのではなくて主体的に会社の成功にコミットしていくようになります。

 これはすごく革命的だと思います。みんな同じ仲間で、同じ目標に向かって走っていくチームのような形態です。ある意味、今回のフィナンシェのトークンは、ファンにストックオプション的なものを提供していくという考え方です。ファンとしてみれば、ただチームを応援するだけではなくて、一緒に夢や目標を実現させるために主体的にチームに関わってもらうということです。

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著者プロフィール

サッカー専門新聞『EL GOLAZO』を発行する(株)スクワッドの記者兼事業開発部統括マネージャー。名古屋グランパス担当時代は、本田圭佑や吉田麻也を若い時代から取材する機会に恵まれる。その後川崎フロンターレ、FC東京、日本代表担当を歴任。その他に『Number』や新聞各紙にも寄稿してきた。現在は『EL GOLAZO』の事業コンテンツ制作や営業施策に関わる。

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