長友佑都×國光宏尚 トークンを語ろう「応援するファンにも経済的メリットを」

西川結城

受動的に関わるのではなく、直接貢献する時代

5月には湘南ベルマーレが「トークンスペシャルデー」を開催。イベントを通してトークン保有者であるファンとクラブの距離が縮まった 【(C)J.LEAGUE】

――実際に5月には湘南がトークン所有者の特典として「トークンスペシャルデー」を開催しました。トークン所有者がいろんな案や企画を考え、マフラーのデザインを投票で決めたり、大型ビジョンに選手やチームへのメッセージと自分の名前が掲示されました。他にも多くの施策が行われましたが、いずれもファン・サポーターの「勝ってほしい、サポートしたい」という思いが形になりました。チームとの絆がより深まりそうですね。

國光 ファンはもう、テレビで試合を受動的に見るのではなく、自分もそこに直接参加したいと願う人が増えていると思います。ただ参加するのではなく、自分も直接チームに貢献したいという思いもあるでしょう。将来的にはトークンを持っているファンがチームの強化にも声を上げられるような時代が来る可能性だってあります。

「あの選手が欲しい、でもクラブの資金が足りない、じゃあ、みんなでお金を出し合って獲得しよう!」という流れにだってなるかもしれません(笑)。サッカーは特にファンとチームの距離が近いので、チーム運営や強化についても一定レベルまでは関われるようなことができるようになるかもしれないですね。

長友 ファンの熱狂ぶりということでは、サッカーはやっぱりすごいですからね。ヨーロッパでもバルセロナやユベントス、パリ・サンジェルマンなどはこのトークンをすでに取り入れていると聞きました。ただ一方で、ヨーロッパは練習がファンにほとんど公開されないので、ファンの方々がチームや選手と触接触れ合える機会は少ないんです。だからこそ、こういう施策が距離を縮める有効策になっていくのだと思います。

――一方で、距離があってもヨーロッパのファンのクラブに対する忠誠心は熱く、深いですよね。だからこそ、こうした施策はより現代的なファン心理の表現方法としてハマる部分があるのではないでしょうか?

長友 忠誠心はもうみんなハンパないですからね(笑)。そのチームが人生の一部だと思っている人が多い。チームから直接的な見返りは少ないですが、勝利のためだけに支える。そんな存在だと思います。ただ、現代にアジャストした形で、忠誠心のあるファンにクラブから明確なインセンティブを新たに提供するこのやり方は、サッカーとファンの関係性を次なるフェーズへと進ませる可能性があるものだと思います。ただでさえ、愛は深いわけです。そこに目に見えるインセンティブがあれば、人間の本能としてより愛情を注ぐようになるでしょう。こうしたところも、このフィナンシェのサービスはすごく面白いところを突いているなと感じました。

國光 最終的に買う人が増えてきたらトークンの価格が上がり、得をするかもしれない、という仕組みに惹かれる人はいるでしょう。ただ、それ以上に大きいのは「俺の意見が採用された!」とか「次のグッズのデザイン、みんなどうしようか?」というように、直接チームを支え、関われる部分により魅力を感じてもらえていると思います。金銭的メリットは副次的なものと捉えている人もいるでしょう。よりチームを強くして、良くしていくことに自分が関わっているという事実に、コアな方は特典の魅力を感じてもらえていると思います。

「長友佑都をみんなで作り上げる」プロジェクト

会社が株を発行し、賛同者する人を集めて資金を調達するように、個人がトークンを発行してファンや資金を集める時代になる、と國光氏は力説する 【スポーツナビ】

――ところで、「長友佑都個人」でトークンを発行した場合、特典はどうしましょうか?

長友 それは面白いですね! 特典、何にしましょうか……「トレーニングをサポートしてもらう」というのもいいでしょうし、「オフの期間に一緒にお酒を飲みに行ける」というのはどうでしょう。そこで赤ワインを飲みながら語り合い、「あのときのプレー、もっとこうした方がいいですよ!」みたいなことを僕に直接言えるという(笑)。どうせやるのならお互いに楽しいことがいいですよね。

 ただサイングッズを提供するのではなく、僕も楽しめることはなんだろうと考えると、オフに一緒に飲みに行くというのはいいですね。応援してくれているコアなファンって、本当に細かいプレーまで見てくれていますからね。また、そうした声に僕がさらに成長できるヒントが隠されているかもしれないじゃないですか。成長にもつながるし、お酒もおいしいし、楽しい。言うことないですね(笑)。

國光 長友さんは今回の前編のインタビューで宣言された通り、2026年の5度目のワールドカップに出てから引退されると宣言したじゃないですか(笑)。

長友 いやいや、いつの間にかそこを目指すことが既成事実になっているじゃないですか! まだわかりませんから(笑)。

國光 それは冗談として(笑)、長友さんが引退したあとにコミュニティの中で「ここから次、僕は何をするのが面白いでしょうか?」と投げかけて、トークンを持っている人たちがいろんな意見を言うのも面白いですよね。「監督目指してください」という人もいれば、「解説が聞きたい」とか「事業を起こすべきでしょ」と、いろんな意見を直接言えて、実際に事業を起こすことになったら「手助けしてくれている人いますか?」と募ることもできます。

 そこで新しいビジネスをみんなで作っていけるようになると思います。ネット業界では「現代は結果ではなく、そこまでの過程をあえて見せる“プロセスエコノミー”が主流になってきている」という声が多くなってきました。完成品を見るのではなく、それができる過程を見せて、またそこにみんなが関わっていく。文化祭みたいな形で事業を進めていく流れがありますから、そこは長友さんも興味持たれるところかもしれません。

長友 そうですね、オンラインサロンでそういうやり方をしている人はいるでしょうけど、トークンを活用したコミュニティだと、関わってくれた方々に金銭的なメリットも生まれる可能性があるので、コミット力や熱量がより上がっていきそうですよね。「長友佑都をみんなで作り上げていく」みたいなプロジェクトになれば、いろんなトレーナーや栄養士の方々が関わってくるかもしれない。そこによって人脈が広がり、新しいビジネスが生まれる。イメージが湧きますね。

 やっぱり僕自身も、会社だけでなく個人でも何か立ち上げられないかと考えています。そんなときに、フィナンシェさんと出会えたことも何かの縁かもしれないですね。若くてお金がなく、個人レベルで夢をあきらめないといけなかった人が、トークンを発行することでサポートを得られる可能性があって、夢を実現したときにはまたみんなでメリットを分かち合える。これを個人レベルでできることが何よりの魅力ですね。

――長友選手のようなトップレベルの選手がアドバイザーとしてフィナンシェに関わっていることの価値についてはいかがですか?

國光 心強いですよね。長友さんはファンビジネスの最前線でやってらっしゃる人ですし、長友さん自身が挑戦し続けている方なので、これだけのファンがいるのだと思います。もし、長友さんが若い頃からトークンを発行していたなら、初期の頃からサポートしていた人たちは今頃、すごく報われているでしょう。すでに有名な人ではなく、これから挑戦していくような若い人材をトークンで後押ししていけます。そうしたところは、長友さんがフィナンシェのポテンシャルに共感してくれた部分だと思います、

長友 明治大学時代に試合に出られず、スタンドで太鼓をたたいていたときに僕がトークンを発行していたらどうなっていたでしょうか(笑)。そのときから応援してくれている人がいたら、今ものすごい恩返しができそうですね。僕みたいな人間が出てくる可能性はどの世界にもあります。そういう人がトークンを発行し、周りに少額でも支えてくれる人がいたら、将来、大成功したときにみんながハッピーになるわけです。どんどんこういう形態の成功例が出てきてほしいですね。

【スポーツナビ】

長友佑都(ながとも・ゆうと)
1986年9月12日生まれ、愛媛県西条市出身。東福岡高校から明治大学に進学し、大学在籍時にFC東京とプロ契約を結ぶ。10年7月にはイタリアのチェゼーナに移籍。以降、インテル、ガラタサライ、マルセイユでプレーした。日本代表デビューは2008年5月のコートジボワール戦。2010年南アフリカ大会、14年ブラジル大会、18年ロシア大会と、3度のW杯に出場した日本代表不動の左サイドバックだ。

國光宏尚(くにみつ・ひろなお)
1974年生まれ。2004年、カリフォルニアのサンタモニカカレッジを卒業後、株式会社アットムービーへ入社し、同年取締役に就任。映画やドラマのプロデュースを手掛ける一方で、様々なインターネット関係の新規事業を立ち上げる。2007年、株式会社gumiを創業し、代表取締役に就任。2015年、VR/AR関連のスタートアップを支援する100%子会社Tokyo XR Startups株式会社を設立し、代表取締役に就任。2016年、主に北米のVR/AR企業への投資を目的としたVR FUND,L.P.のジェネラルパートナーとして運営に参画、また韓国にてSeoul XR Startups Co., Ltd.を設立し取締役に就任。2017年、北欧地域のVR/AR関連スタートアップを支援するNordic XR Startups Oy.を設立し、代表取締役に就任。2018年、gumi Cryptos匿名組合を組成し、ブロックチェーン事業に参入。2019年3月、ブロックチェーン技術を活用したドリーム・シェアリング・サービス「FiNANCiE」を手がける株式会社フィナンシェを創業した。

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著者プロフィール

サッカー専門新聞『EL GOLAZO』を発行する(株)スクワッドの記者兼事業開発部統括マネージャー。名古屋グランパス担当時代は、本田圭佑や吉田麻也を若い時代から取材する機会に恵まれる。その後川崎フロンターレ、FC東京、日本代表担当を歴任。その他に『Number』や新聞各紙にも寄稿してきた。現在は『EL GOLAZO』の事業コンテンツ制作や営業施策に関わる。

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