ベイスターズ再建録―「継承と革新」その途上の10年―

中畑清「覇気がない。目が死んでます」 球団職員たちの意識を変えた監督就任

二宮寿朗
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2011年12月9日、横浜DeNAベイスターズの初代監督に就任した中畑清 【写真は共同】

 空は青く、海は青く。

 2011年12月9日、横浜DeNAベイスターズの新監督に就任した中畑清は横浜の景色を一望できるランドマークタワー最上階の会見会場から出ると、汗でグショグショになっていることに気づいた。

 報道陣でぎっしり、しかも1時間超、喋りっぱなし。笑いあり、いやいや笑いばかりの会見だった。記者から「コンディションはどうですか?」と振られると、ニヤリと笑う。

「それ、言わせたいんでしょ? ゼッコウチョーは選手のみんなが使ってくれればいいと思います。これからは“熱いぜ!”をキャッチフレーズにしたい。熱いぜ、ハマスタ! 熱いぜ、DeNA !」

 ちょっと熱くなりすぎた。いやあまりの急展開に熱い男のボルテージが上がるのは無理もなかった。

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 風雲急を告げるのは、この9日前のこと。

 DeNAによるベイスターズの株式取得とオーナー会社変更がプロ野球オーナー会議で承認されたというニュース番組を、中畑は東京・調布市にある自宅で見ていた。先月にTBSホールディングスから総額95億円で買収されるという発表もあった。新進気鋭のIT企業とは聞いていたが、何の事業をやっている会社なのかも分からない。IT関連では福岡ソフトバンクホークス、東北楽天ゴールデンイーグルスに続いて3社目。セ・リーグにも新しい風が吹いてきたなと漠然と感じるものはあった。

 その風が、まさか自分に向かっているとは思いもしなかった。

 数日後、読売ジャイアンツ時代の大先輩で近くに住む高田繁がママチャリでふらりとやってきた。東京ヤクルトスワローズの監督を退任して以降、プロ野球から距離を取っていただけにベイスターズのGMに就任したことは驚きだった。

〈まさか、だよな〉
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著者プロフィール

1972年、愛媛県生まれ。日本大学卒業後、スポーツニッポン新聞社に入社し、格闘技 、ラグビー、ボクシング、サッカーなどを担当。退社後、文藝春秋「Number」の編集者を経て独立。 様々な現場取材で培った観察眼と対象に迫る確かな筆致には定評がある。著書に「 松田直樹を忘れない」(三栄書房)、「中村俊輔 サッカー覚書」(文藝春秋、共著)「 鉄人の思考法〜1980年生まれ、戦い続けるアスリート」(集英社)など。スポーツサイト「SPOAL(スポール)」編集長。

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