主将の心得とは?石川雄洋から佐野恵太へ 横浜DeNA「新旧キャプテン」特別対談
オンラインで実現した対談で、初代キャプテンの石川さん(写真右)は自身の経験を語りながら佐野選手(写真左)へ激励の言葉を送った 【スリーライト】
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「キャプテン向きなんですかね!?」(佐野)
石川 25歳の春のキャンプ中に森本稀哲さん、渡辺直人さん、新沼慎二さん(現バッテリーコーチ)ら先輩たちに呼ばれて、「キャプテンをやれ」と。でも、断ったんです。
――それはどうして?
石川 僕なんかより適任がいるでしょうって。僕、キャプテンタイプに見えます?
佐野 (笑)
石川 周りから、「お前がしっかりして、チームを引っ張っていけよ」ってことでやることになっただけで、佐野みたいに、監督に打診されて、なるっていうのとは理由が違いますね(笑)。
――佐野選手は石川さんがおっしゃる通り、2020年、前キャプテンの筒香嘉智選手が渡米するにあたって、ラミレス前監督からのご指名でのキャプテン就任でしたね。
佐野 僕も、まさか自分がキャプテンをやるなんて思ってなかったですよ。人生の中でキャプテンをやってこなかったので(筆者注:少年野球のときのみ経験)、キャプテンってどうなんだろう、大変なんだろうなって。
――実際、キャプテンになっていかがでしたか?
佐野 右も左もわからなくて……(昨年は)自分のことだけで精いっぱいでした。
石川 佐野はキャプテンに指名されて、外国人選手もいる中で4番も任されて……プレッシャーがものすごかったと思うんです。でも、その中で首位打者という結果を出した。それってすごいことですよ。あのハンパないストレスの中で自分の成績が残せるメンタルを持っているんだから、佐野はキャプテン向きです。
佐野 キャプテン向きなんですかね!?
石川 うん(笑)。
「死球でもいい…という気持ちで」(石川)
昨年、キャプテン就任初年度で首位打者を獲得した佐野選手は「自分のことだけで精一杯だった」と振り返ったが、石川さんはその活躍に太鼓判を押した 【(C)YDB】
石川 苦しかったですよ。この3、4月のベイスターズと一緒です。
佐野 今、なかなか勝てないですし、何をどうしたらいいだろうって毎日考えながら日々過ごしています。
――今年の話はもう少し後にお聞きするとして、実際、お二人はどんなタイプのキャプテンなのでしょう? 言葉で引っ張る、雰囲気作りをする、それともプレーで引っ張る?
石川 プレーで……だな。口下手なもので(笑)。佐野はみんなに好かれていて愛嬌(あいきょう)もある。ムードメーカー的なところがある。俺、あぁいうのはできないもん。
佐野 口(言葉)で引っ張るのが一番いいかもしれないですけど、僕もプレーで引っ張りたいです。
石川 お前、引っ張ってるやん。
佐野 全然ですよ。
石川 佐野は一発で決める力を持ってるからいいよ。俺は一発で決められるタイプのバッターじゃないから、塁に出たり、エンドラン、バント、盗塁をしたりっていうタイプだし。
――キャプテンをやるにあたって心がけていた(いる)ことはありますか?
石川 野球の中の“チームプレー”なんていうのは、練習していけばできることなんです。でも、チームのみんなが同じ方向を向くって意味の“チームプレー”というものが一番難しい。プロ野球では特に。それなら、どうやってまとめていくか。僕も結構ミーティングをやりましたが、言葉で伝えるには限度があるんですよね。それなら、ホームランを打ったりヒットを打ったり、いいプレーでカッコ良く引っ張るっていうのが一番理想ですけど、僕は佐野みたいにホームランは打てない。そうしたらもう、気持ちで見せるしかないです。どういう準備をして試合に臨んで、どういう姿でプレーしているか、それを周りや後輩たちはすごく見ているから、そこをしっかりやる。「デッドボールでもいいから、何が何でも塁に出る!」。それぐらいの強い気持ちを持ってやっていけば、チームは自然と同じ方向を向いてくれる……そう思ってやっていましたね。
佐野 僕も、自分ができることは限られていますし、自分ができることをしっかりできるように……そこは心がけていますね。