巻誠一郎「マジか、また選ばれたって」 日本代表、ドイツW杯、オシムを振り返る
献身的に泥臭くプレーすることは特別に意識していたことではなく、サッカー人生を歩むなかで自然と確立されてきた 【Photo by AFLO SPORT】
「僕も深く考えたことはないんです。でも、小さい頃から器用な方ではなかったですし、ズバ抜けた身体能力があったわけでもない。そんななか高校生くらいの頃から、自分の価値をどうチームに活かして生きていくかと考えたときに、誰かのために動き、チームが助かるようなプレーをすべきだと行き着いた部分はあります」
それが自身の存在意義であり、その思考のもとでスタイルはいつしか体に染みついていった。巻曰く、献身的に泥臭くプレーすることは、特別に意識していたことではなく、サッカー人生を歩むなかで自然と確立されてきたという。
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実力以上の力は出ないと痛感したドイツW杯
しかし、大きな期待とともに迎えたW杯は1分2敗でグループリーグ敗退。巻は最終戦のブラジル戦に先発し、60分プレーしただけだった。W杯はどんな記憶として残っているのか。
「パッと選ばれて、パッと行って、パッと帰ってきたみたいで、あっという間でした。それまで代表でプレーしたのは国内組中心のときだけで、それこそヒデさん(中田英寿)やシュンさん(中村俊輔)ら海外組は“はじめまして”という感じで……。そんな状況もあって普段はコミュニケーションを取るのが苦手なのに、チームに溶け込もうと必死でした。いま思えば、何の遠慮もせずにガツガツいっていたから、ちょっと面倒くさいヤツだったと思います。
(近寄り難いと言われていた)ヒデさんの部屋にも普通に行ってアドバイスをもらったり、練習や試合前のアップも『一緒にやりませんか?』と自分から誘っていました。ヒデさんは普通に陽気だったのに、周りの選手からは『すげえぇな!』って言われましたけどね(笑)」
W杯に出場できたことは大きな財産となった。だが、自身の無力さも痛感した。
「(先発したブラジル戦は)先制しましたが、そのあとはボコボコにされて……。よく大舞台に立った人は持っている力の120%が出たとかって言いますよね。だから、自分もどこかでそんなことがあるのかもしれないと期待していたんです。でも、まったくなかった。チームも惨敗でしたが、僕自身もできないことばかりで、こんなもんかって(苦笑)。逆に普段のトレーニングや試合で自分をどれだけ高められるかが、いかに重要かということを思い知らされました」
史上最強メンバーが揃(そろ)ったと前評判は高ったが、大会後はチームに一体感がなかったなどと指摘する声も少なくなかった。
「それは少し感じました。トレーニングでも重たい空気があったというか。うまくいってるときはいいですが、そうじゃないときに心のよりどころみたいなのがあったら、少しは違っていたかもしれませんね」
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