バイエルン、フリック監督退任表明の衝撃 ブンデス9連覇濃厚も“盟主”が迎えた岐路

2位のライプツィヒを突き放してリーガ9連覇へ突き進むバイエルンに暗雲が… 【Getty Images】

 昨夏、ドイツの最多タイトル記録を持つバイエルン・ミュンヘンは国内の二大タイトルであるブンデスリーガとDFBポカール(カップ戦)のほか、UEFAチャンピオンスリーグ(以下、CL)も制覇して文字通りの頂点に立っていた。しかし今、このバイエルンという名の理想郷に亀裂が入っている。チームを率いるハンジ・フリック監督(以下、フリック)が自ら今季限りでの辞任する意向を表明したのだ。これは、このクラブの内部抗争の末の帰結である。

ヘーネスとルンメニゲが築いた“王朝”

ヘーネス(右)とルンメニゲ(左)が果たした功績が今のバイエルンを支えている 【Getty Images】

 2012年の秋、バイエルンの指揮官からオランダ代表監督へと移り変わっていたルイ・ファン・ハールがドイツの記者たちと話をする機会があった。

 本来はその後に行われる予定だったオランダ代表対ドイツ代表のフレンドリーマッチについての話をするはずだった。両国は唯一無二のライバル関係にあるため、その対戦への注目度は高い。しかしファン・ハールは、その話よりも自身の個人的なライバル関係について話をしたがった。彼は「ドイツの新聞で風刺画を見たんだ」と切り出した。その風刺画ではタコの姿をしたウリ・ヘーネス(当時のバイエルン会長)がミュンヘンのアリアンツ・アレナの席に座っていて、足をニョキニョキ伸ばして他の首脳陣や監督、選手たちをがっしりつかんでいるのだという。ファン・ハールは「それは私が見てきた通りだ。とてもいい風刺画だよ」と言って笑っていた。

 実際、ヘーネスはバイエルンの歴史上で長期間、重要な人物だった。彼が現役サッカー選手時代の1970年代にはフランツ・ベッケンバウアーとゲルト・ミュラーとともにバイエルンの黄金時代を形成し、幾多のリーグ制覇だけでなくUEFAチャンピオンズカップ(CLの前身)3連覇にも寄与した。現在69歳のヘーネスは今日のバイエルンの栄華を築いた立役者なのだ。その後、現役引退した後のヘーネスは1979年から2008年までゼネラルマネジャー、その後は代表取締役社長代理、さらに会長と監査役会会長を務めた。彼はその間に脱税による刑罰で収監されているが、それでも彼のキャリアは終焉(しゅうえん)せず、彼自らバイエルンの重職を退いたのは2019年末になってからだった。今のヘーネスは監査役の一人でしかないとはいえ、彼が落とす影は色濃く、それは今でもくっきりと見える。ヘーネスは現在の最高経営責任者(CEO)で元ワールドクラスのFWだったカール=ハインツ・ルンメニゲとともにここ数十年のクラブの発展を形作ってきた。そのルンメニゲも65歳となる今年限りで退任する予定で、この二人のリーダーたちが去るとクラブに真空状態が生じる。
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