ファン・番記者が選ぶ「Jリーグ最強の補強・衝撃の移籍」

清水・大熊清GMが明かす補強の裏側 編成、監督招へい…強化の醍醐味とは?

飯尾篤史
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2019年12月に清水のGMに就任した大熊氏。今季はC大阪でともに仕事をしたロティーナ監督を招聘(しょうへい)し、上位進出を狙う 【飯尾篤史】

 20チームで争われ、4チームが降格する今季のJ1リーグにおいて、大型補強で話題となったのが清水エスパルスだ。日本代表GK権田修一を皮切りに各チームのレギュラークラスを獲得し、昨季16位からの巻き返しを狙う。この補強にあたったのが、GMを務める大熊清氏だ。セレッソ大阪で強化部長を務めて以来、強化の仕事にまい進する大熊氏に、ストーブリーグにおける狙いや、強化の仕事の醍醐味について聞いた。

交渉の席で「君にはこういう役割を……」

現役日本代表GKの権田に求められるのはセーブなどの守備面だけでなく、ビルドアップの起点となるプレーだ 【写真は共同】

――昨季はピーター・クラモフスキー監督を途中解任することになってしまいましたが、今シーズンはミゲル・アンヘル・ロティーナ監督を招へいし、選手も積極補強しました。サッカー王国復権への強い意気込みが感じられます。

 昨年もピーターさんのサッカーを見続けながら、内容がどう変わっていくのか、勝ち点を積み重ねていけるのか、ミニマムの目標を何回も見直しながら何度も話し合い、バックアップしてきたつもりです。結果、残念なことになりましたが、清水エスパルスという歴史あるクラブは、残留争いにいてはいけないわけで。やはりチーム力、競争力をもっとアップさせないといけない。

 昨年、うちは失点が多かったんですが(※70失点はリーグ最多)、守備の強化をするための選手をそろえたわけではなくて。例えば、GKの権田(修一)は攻撃の起点にもなれるし、センターバックの鈴木(義宜)もボールを持ち運べるし、パスもうまい。今の時代、守備の選手が攻撃を、攻撃の選手が守備をしないと攻守一体となったサッカーができないですからね。そうしたバランスも考えて補強しました。

――ロティーナ監督とは、大熊さんが強化部長を務めていたセレッソ大阪時代にも一緒に仕事をされていました。クラモフスキー監督の後任としてイメージしていたのでしょうか?

 いえ、そんなことはないです。セレッソであれだけの成績(昨季4位)を収めていたので、フリーになるとは想像していませんでした。事前に決めていたことはなかったです。もちろん、(途中就任した)平岡(宏章)に引き続き指揮を執ってもらう選択肢もありました。

――ロティーナ監督の就任が発表されたのが年末の12月24日でした。次のシーズンの補強を進めるうえで、監督が決まっていないと、選手を口説きにくいのではないかと思うのですが、それでも今オフ、選手も監督も意中の人物をしっかり射止めた印象があります。

 そこは本当に、清水エスパルスという歴史のあるクラブだからこそ、選手が来てくれた部分が大きいと思います。目の肥えたファン、サポーターの前でサッカーがしたい、日本平(IAIスタジアム日本平)でサッカーがしたいと選手が思ったのではないでしょうか。

 あと、言える範囲でチーム作りのビジョンなどは交渉の席で伝えました。例えば、こういうサッカーをしていきたいと思っていて、君にはこういう役割をやってほしいし、こことここのポジションを十分こなせると思うとか。ただ、やっぱり監督が決まってからのほうが選手の反応が良いのは事実だと思います。

――強化部とはかなり綿密にミーティングをされるんですか? それともある程度任せているのでしょうか?

 コロナ禍でオンライン会議が当たり前になって、ミーティングをしやすくなったので、回数はかなり多いと思います。『またやるのか』と思われているかもしれないですけれど(笑)。ほんと、なんでも話しますよ。『J2のあの選手はいいよね』とか、『昨年、俺たちはあまり評価しなかったけど、(J1に移籍して)あの選手がここまでやると思っていなかったな』とか。『組み合わせによっては、これだけやれるんだな』といったことも含め、選手の評価に対する意見交換やすり合わせは、かなりやっています。
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著者プロフィール

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

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